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某人の趣味丸出し日記

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尾裂狐と俺と陰陽師  第参話 

安定の遅刻ですね……。
まぁ、もういつものことなのでいいとしましょう。←

さてさて、さっそく本編行きます。

感想、アドバイス、誤字報告などの反応をいただけるとすごくうれしいです!

(コメント返信は次で行います!)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うう……さみぃ……」
四月も後半といえど夜風が体にしみる。黒の学ランを突き抜けるような冷たい風を感じ俺は学校指定の地味な鞄を肩にかけ直す。
「綺麗だな……」
ふと見上げた夜の空を闊歩する半分の仮面をかぶった月は冷たく俺を見下ろし、あたりをさびしく照らしていた。
けして田舎と言うわけではないのだが、都会とは言えないこの町では街灯が少ない。俺があるいているあぜ道のように所々真っ暗な場所がある。
しかし、子供からここに住みそのまま家業を継いだりする町民にはそんなことは慣れっこで暗闇でもある程度目が利く。
それに街灯がなくとも夜空にちりばめられた星や月は意外とあたりを照らしてくれるものだった。
源じいの話し相手もといアルバイトを終えた俺は本来家がある方向とは反対側の駅の方へとあぜ道を歩いていた。理由は簡単コンビニへ向かっているのだ。
この町で唯一のコンビニ、午後9時には閉まってしまうので急いでいかなければならない。今日は俺のお気に入りの月刊ミリタリー雑誌の発売日なのだ。
駅に向かうほど田んぼばかりで田舎っぽくなっていくというこの町の作りはよく考えれば少し不思議な気もするがどうなのだろうか。
きっと、町の方に隣町へとつながる大きな道路があるためそっちの交通機関の方が主流だからなのだろうが、まぁ実際のところそんなことはどうでもいい。
とにかく今はコンビニへ向かわなければならない。
インターネットが普及した今いちいちコンビニまで出かけて買いに行かなくとも取り寄せなどはいくらでもできるのだが。
俺は何となくこの月一の散歩が好きだった。季節によっては町を町を取り囲む小山の紅葉が見れたり、その小山が雪化粧をしていたり、夏は田んぼで蛙たちが大合唱を楽しんでいたりする。
月一この日が来るごとに新しい発見があるのだ。
(……ん?)
そして、発見は今日もあった。
それはコンビニまであと数十メートル、小山のわき道を歩いているときだった。
「……なんだこれ?」
小山の間にに獣道がある。幅1mほどの小さな道で脇から草木整備されていない草木が生い茂り狭い道をさらに圧迫している。大人が一人通れるかどうか微妙な道だ。
よく見ると石でできた階段があり獣道という表現は正しくはないのだろう。
しかし……
(先月までこんなものはなかった気がするが……)
俺が気がついていなかっただけなのだろうか。
まぁ普通に考えてそれしかあり得ないが、まさか突如現れた異界に続く道ではあるまい。
「………………」
ふと、興味がわいた。
この道はいったいどこへつながっているのだろうか。石でできた階段があるからにはこの先には間違えなく人工物があるのだと思う。
しかし、十数年この町に住みそんなに大きくないこの町のことなら大体知っている俺でもこの小山にそんな人工物があると言う話は聞いたことがない。
(……行ってみるか)
コンビニ閉店まであと30分ほどある。この先を確認して戻ってきてからコンビニへ向かっても十分な時間だ。
もし間に合わないのだったら、それはそれで途中で引き返してまた別の日にでもここに来ればいい。
そう思った俺は小山の小道へと入っていくことにした。
小道は思ったよりも進みやすくスイスイと先へ進めた。まるで何かの力に引っ張られるように奥へ奥へと進む俺。
「……ふぅ……」
数分ぐらい登っていただろうか。少し汗ばみ学ランでも脱ごうかと考え始めた時だった。
「……お?」
突如道が開けた。階段はまだ続いているが道は左右5mぐらいに開けしっかりと整備されていた。
「……すげぇ」
しかし、すでに俺の頭はそんなことを考えておらず目の前の光景に目と心を奪われてしまっていた。。
そびえたつ巨大で真っ赤な鳥居、そして奥に続く桜道。舞い散る夜桜の花弁はまるで一枚一枚が妖精であるかのように自ら光り踊りだす。
一瞬、絶景という言葉が思い浮かんだが少し違う。なんというか怪しい魅力がある光景だった。
ミリタリー雑誌のことなどすっかり忘れその魅力に魅了されてしまった俺はおぼつかない足取りで先へと進む。
そして、鳥居をくぐり階段を上りきる。その先にはさらに圧倒される光景があった。
『桜の海』とボキャブラリーの少ない俺ではこれ位しか表現する言葉が思いつかないのだがどうか許してほしい。
しかし、そう言っても過言ではない。むしろそれでは表現しきれないほどの光景だった。
奥に小さな神社(かむやしろ)があるのが見える。階段の延長線上に石でできた道が神社まで続いていた。
「こんなところにこんなもんがあったのか……」
神社の境内がしっかりと整備されているところをみると誰かが管理しているのだろう。
「……ん?」
その道の途中にちょうど階段から神社のちょうど中間地点の辺り。
「こいつは……」
一匹の狐が力なく横たわっていた。
(……なんでこんなところに?)
この山に住む狐なのだろうか。
真っ白で綺麗な毛並みを持った狐はこの幻想的な空間にしくふさわしい非常に絵になる。
俺はその狐に近づこうとして……。
「……なんじゃ? なぜここに人がおる」
「だ、誰だ!」
突如若い女の声が聞こえてきた。俺は思わず身構える。
しかしあたりを見回しても誰もいない。桜が美しく散っているだけだ。
つまり、ここにいるのは俺と……。
「人間よ……今すぐに帰るがよい。ここは危険じゃ……お主も滅せられ……てしまうぞ?」
「ま、まさかお前が……?」
体から血の気が引いていく、狐は確かに俺の目を見て口を動かしていた。
「迷い込んだのか……」
狐は同情するような目でつぶやいた。
しかし、俺にそんなことに気がつく余裕はない、喋ろうにも声が出ない。恐怖で委縮してしまった体は動く様子はなく完全にビビってしまっていた。
自分より遥か上位の天敵に出会ってしまったような感覚。簡単に言うとカエルが蛇に睨まれた状態だった。
狐は構わず続ける。
「『奴ら』はいずれ……ここにワシを殺しにやってくる。が……今ならまだ間に合うさっさと山を……降りるのじゃ」
「や、奴ら?」
ようやく絞り出した声は震えて情けないく裏返る。
「……そうすれば今宵のことはお主の……夢となる。今後お主は普通の……生活を送れる」
狐の声はだんだんと弱々しくなっていく。
「ど、どういう意味だよ!」
「……わかる……必要はない。今は……ともかく急いで……山を降りる……のじゃ……」
「お、おい!」
狐はそれっきり喋らなくなった。目を閉じピクリとも動かない。
俺は数分立ち尽くしていた。いや、もっと時間がたっていたのかも知れない。
「……はっはっ……」
あまりの桜景色に俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。
そうだ、そうに違いない。だから狐が喋るなんてあり得ないまぼろしなんて見てしまったのだろう。こういうのを白昼夢とでも言うのだろうか。
俺は息をつき心を落ち着かせる。今更ながらに汗をビッショリとかいてしまっていたことに気がついた。かなり寒い。
携帯の時計で時間を確認するとすでにコンビニが閉まってしまっている時間だった。
「………………」
俺は横たわっていた狐を抱きかかえる。ほのかに温かみがあり死んではいないようだ。
先ほどまでは恐怖の対象だった狐をなんなく抱きかかえたのは、自分に対する強がりだと思う。
(……さて、どうしたもんかな)
この場合どこに連絡すればいいんだろう。警察? ……は何か違う気がするし市役所はすでに受付時間外だ。
それ以前にまずこの狐は一体どこから来たのだろう。野生なのだろうか、だとしたらこのままここに置いていくのが普通なのかも知れない。
しかし、不思議とそうする気にはなれなかった。
「……まぁ、とりあえず。連れて帰るか」
とりあえずこの狐を温めてご飯をやらなければ死ぬだろうということだけは予想がついた。
細かいことは家に帰ってからゆっくりと考えなおせばいい。俺はそんな気楽な気持ちでいた。
しかし、今起こってしまっているいる状態というのはそんな簡単なことではなかった。
俺は鞄を背負い直し狐を連れて戻ろうとした時だった。
「待て!」
振り返った先には5人の男が立ちふさがっていた。
「あ、あんたたち……」
全く気がつかなかった。
見た目は20代から40代のおじさんに見える人まで年齢層はバラバラ。
異様なのはその五人の服装だった。まるで神社の神主が着るような白と黒を基調とした着物、黒の袴、そして鳥帽子。
真ん中に立っていた若い男はさらに異様だった。
一人だけ鳥帽子をかぶっておらず金髪をワックスか何かでツンツンに固め、左耳には派手な赤色のピアスをしている。服と中身が見事にアンバランスな男だ。
ここの神主なんだろうか……。
「よう」
金髪の男が俺に話しかけてくる。
「お前、なんでここにいる? どうやってここに入った?」
「どうやって……って普通にその先から入ってきたよ」
俺は男たちの後ろを指差す。すると明らかに金髪以外の男たちの顔つきが険しいものになった。
『どういうことだ! 人払いの結界はきちんと発動しているはずだぞ……』
『すでに取りつかれてるんじゃないのか?』
『じゃあ、もうこの人間は『喰われた』のか?』
『くそッ!』
金髪以外の男たちがわけのわからないことを話したかと思うと、男たちは俺をまるで親の仇をみるような目で睨みつけ始めた。
「な、なんなんだよ……いったい……」
この場所は立ち入り禁止の場所だったのだろうか。しかし、立ち入り禁止などという看板は見た記憶がない。
「お前、その狐が何かわかってんのか?」
「いや、しらないけど……?」
『しらばっくれんじゃねぇ!! 女狐が!』
金髪の男の質問正直に答える。五人の中で一番若い、大学生くらいのが俺にいきり立った。
「女狐って? 何のことだよ?」
こいつらが腹を立てている理由がいまいちよくわからない。
(俺がここに入ってしまったから怒っているんじゃないのか?)
俺は手に抱えた狐を見下ろす。
「まぁ、落ち着けっての。まだ喰われって決まったわけじゃねぇよ。そろそろ人払いの結界も弱ってた頃だし本当に迷い込んだだけかもしれねぇだろ? あの狐だってもう人を食うほどの余裕もなかったはずだぞ?」
『て、哲也(てつや)さん……』
金髪の男が若い男をたしなめた。どうやら、彼の名前は哲也(てつや)と言うようだ。
「んで、少年。今までのまどろっこしい質問はなしだ」
金髪は俺に向き直った。
「単刀直入に言おう。その狐をこちらに渡してくれないか?」
「は?」
「それとお前の記憶の一部を封印させてもらう」
「………………」
いったい、何が言いたいんだこいつは……。
新手の厨二病コミュニティーのオフ会レクリエーションにでも巻き込まれてしまったのだろうか。
神主の設定でこの山を徘徊しようみたいな。
(さすがにそれはないか……)
こんな辺境の町にそんな痛々しい集まりはないだろうし、都会からここまで来たとも考えにくい。
それに何となくそんな雰囲気ではなかった。明らかに『お遊び』な空気ではない。
(……じゃあ、こいつらは何者なんだ?)
『哲也さん……そんなことをする必要はありませんよ! この人間はもう喰われてます! 狐の演技に違いありません。さっさと殺し……』
「黙ってろ」
金髪の有無を言わせない一言。若い男は金髪の威圧感にやられて続きの言葉が出なくなってしまっていた。
『……すいません』
しばらくたってから若い男は少し不貞腐れたように謝った。
「じゃあ、一緒に来てくれるか? 」
「ちょ! ちょっと待てよ! さっきから意味がわからねぇ!」
金髪のセリフに後ずさってしまう俺。
「わかる必要はない、と本来はそういうのだが……巻き込んでしまったのは謝る、悪かったな……。最終的に記憶は封印してしまうが、お前が協力してくれるためならある程度の質問にも答えよう。万が一記憶の封印が解ける場合があるから全てを話せるわけではないがな」
そう言いながら金髪はタバコを一本取り出した。その一本を口にくわえてライターで火をつける。
どうやら俺は質問を許されたらしい。
「記憶の封印ってなんだよ?」
「……ふぅ……そのままの意味だ。今日の夜にあったことは全て忘れてもらう」
「どうやって?」
「話したところでお前には理解できない」
「……お前たちはいったい何者なんだ?」
「それは言えない」
「じゃあ、この狐は? どうしてこの狐を欲しがる?」
「その狐はうちの畑を荒らした悪狐でな……少し懲らしめてやらないといけない」
「………………」
明らかな嘘、それか要領を得ない回答ばかりだ。どうやら初めから何も教えてくれる気はないらしい。こいつらは信用できない。
「もういいか?」
金髪は煙を吐き捨てるように言った。
「いいわけねぇだろ!」
俺は逃げる決心を固めた。とにかく町の方まで行けばなんとかなる。
俺は頭を巡らせる。ここから逃げるにはどうしたらいい? 森に逃げ込めばなんとかなるか……。
「やめとけ」
「……ッ!」
「これは『お願い』じゃない。お前が抵抗するなら、少し痛い目にあってもらうだけだ」
金髪のタイミングのいい一言に俺の脳内はフリーズさせられた。俺の考えは読まれてしまっているようだ。
『哲也さん……一応逃げられないように人間に感知する結界を張っておきます。それぐらいはいいでしょう?』
「……ああ」
金髪に了解を取った30代ぐらいの男は懐から何か取り出した。
 (あれは……お札?)
『……ぬん!』
「なッ!」
30代の男が気を込めるとお札が白く光りだす。
(て、手品か……?)
そういえばこないだテレビでmr、マリなんとかがこんなマジックをしていた気がする。
『な……なんだこいつ……結界に反応しない?』
なんて暢気なことを考えていると突然30代ぐらいの男が騒ぎ出した。
『どうした?』
『こいつ……霊力がまるでない』
『どういうことだ? じゃ、じゃあやっぱりもう喰われていたのか……?』
『わからん……』
などと話し合っている。
『ちッ! 今度こそ言い逃れはできねぇぞ!』
若い男が今度こそと俺に掴みかからん勢いで俺を睨みつける。
「言い逃れ? さっきから『喰われる』だのなんだのって……いったい何なんだよ!」
『うるせぇ!』
「おい馬鹿! やめろッ!!」
金髪の制止を聞かず若い男が懐からお札を取り出した。
直後、お札が茶色く光りだす。
(……まずいッ!)
本能的にそう感じた。全身から鳥肌と脂汗が噴き出し、体の細胞の一つ一つが『逃げろ!』と警告音を鳴らしている。
しかし、当の体は言うことを聞かず動かそうにも動けない、金縛りにあってしまっていた。
『死ねぇ!』
そう言うと若い男はお札を地面に投げつけた、刹那。
「なッ! ……んなんだ……これは……ッ!」
若い男の真下の地面が石路ごとが盛り上がり3mほどの津波となって俺に襲いかかってきた。
なにが起こったかわからない。世界がスロー再生され巨大な土石流の壁が迫ってくる。しかし、それでも俺は動くことができなかった。
「う、うあぁあああああ!!」
津波に飲み込まれる瞬間恐怖の中で俺が唯一できたのはポケットの中のお守りを握りしめ目を閉じることだけ。
そうして俺は土の津波に飲みこまれ…………飲みこまれ…………。
(…………あれ?)
何時までたっても俺が津波に飲みこまれることはなかった。
俺はゆっくりと目を開く。
「……???」
声も出なかった。目を開いた俺が見たものは『白』。
先ほどまでの土石流どころか神主の五人も艶やかな桜も月も神社も何もない、だだ白の空間。
次から次えと……うわけがわからない。
(今日は厄日だな……)
変な神社に迷い込んだり、狐が喋る白昼夢をみたり、挙句の果てにはわけのわからない集団にわけもわからず襲われて、しかも地面が盛り上がって……。
「今度はなんだ? まさかここはあの世とかじゃないだろうな……」
こういう場合は全てが夢だったと、今も夢の中にいるのだと考えるのが普通なのだろうが。
立て続けに起こりづつけているあまりに『リアルすぎた非日常』に俺の頭はマヒしてそんなことさえ思いつかなかった。
「もうどうにでもなぁれ……」
などとそんな言葉で全てが片付いてしまえばどんなに楽だろう。
『……ろき……りなさい』
どこからか声が聞こえてくる。懐かしく包み込むような安心感がある声だ。
『……弘樹……走りなさい』
「母さん?」
と、思ったころには俺は走り出していた。
どこに向かってるかはわからない。ただ前へと走り出した。
「……え?」
気がついた俺は家の前にいた。
何事もなかったかの様に自宅であるアパートの前に立っていた。ただアルバイトから帰ってきたときのいつもの光景。周りには質素な住宅街が広がっている。
ただいつもと違うのは……

「………………」

俺の腕にはしっかりと狐が抱かれていた。


<<<< 第弐話


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やっとそれっぽくなってきました。

一応、和風ファンタジーのつもりなのですが……。

何となくお笑い要素を入れたくなってしまう(;一_一)

ここまで読んでくださった方がもしいらっしゃれば、

頑張って書きますのでこれからも読んでいただけたりすると嬉しいです!!

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category: 尾裂狐と俺と陰陽師

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尾裂狐と俺と陰陽師 序の弐 

遅刻してしまいましたぁああああ 三三m(_ _)m(ジャンピング土下座)
週末は少し予定が入ってしまいまして更新ができませんでした……。
言い訳ですねはい
まぁ、この小説を読んでいる人なんてかなり少数だから……
いや、この考えはよくないか
とりあえずすいませんでした!!

まだ序盤ですが、一応バトル物となる予定です。
もしよろしければ読んでやって感想などいただけると嬉しいです!! 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

大野骨董品店(おおのこっとうひんてん)、町はずれにある古びた骨董品屋。今にも崩れてしまいそうな外観の二階建ての一軒家である。
壁は茶色く濁りところどころひびが入っていて、正面に掛けられた看板は錆つき赤いペンキで書かれた『大野骨董品店』の文字は雨風にさらされ茶色に変色し少し禿げてしまっていた。
店主である源じいが30歳のころにこの店を始めたらしいので、かれこれ47年ほどの歴史を誇る。もうそろそろ半世紀の年齢になろうとせん佇まいだ。
しかしながら中に入るとその内装は意外と小奇麗であった。
狭いながらも整理された商品。大小さまざまな坪はピカピカと輝き自分を買ってくれと自己主張をしており、並べられた日本人形にも特有の不気味さはなくその表情は柔らかい。
その他の骨董品にも手入れは行き届き、なんというか全体的にい明るくあたたかいのだ。
まぁ、結局外見のせいかこの店に客が入ってることなんてほとんどなく、骨董品の手入れも俺が学校に行っている間に源じいが全てやってしまうので、この店のバイトである俺こと安部(あべ) 弘樹(ひろき)の業務と言えば……。
「……王手」
「ああ! ちょッ! 待った! 待っただ!」
「えー、まだですか?」
こうして店の奥で店主である大野(おおの) 源(げん)、通商、源じいの将棋の相手をすることである。
「婿殿! ちょっとは手加減せんか!」
「いやいや、手加減しらたいつも源じい怒るじゃないですか」
御年(おんとし)77歳のくせにかすれた大声張り上げて本当に元気なじいさんだ。
背筋もピンと伸びているし、分厚い老眼鏡の下の目はぎらぎらと輝いて生気を放っている。このじいさんは100歳過ぎてもピンピンしてそうだ。
「うるさい! 俺は婿殿の雇い主だぞ本気を出しながら俺に勝たせんか!!」
「無茶苦茶言わないでください……」
そんなこんなでいつものように将棋は俺が優勢で試合が運んでいるのだが。
こんなことで経営が成り立つのかといえば……一応は成り立っているようだ。でければ俺はここにアルバイトとして雇われることはない。
たまに、それこそ1、2ヶ月に一回、高級そうな車に乗った『いかにも』な雰囲気を漂わせた客がやくる。
その客の手には大概、どてかいアタッシュケースがにぎられており源じいは客を奥の部屋に招き入れる。
数分立って出てきたかと思うと、すでに客の手にアタッシュケースはなく坪やらの商品を持って帰るのだ。
怖いのでアタッシュケースの中身を聞いたことはない。
「にしたっておかしいだろ。俺だって弱くはない町内のジジイどもの中では最強といってもいいぐらいだぞ」
「……そうなんですか」
と、言われたところで俺は町内の将棋のレベルなど知らないのでどういう反応をしていいものか困るのだが。
「婿殿はこういう戦略ゲームになると『無駄』に強いな」
「無駄って言うな無駄って……」
確かに俺は戦略系のゲームは得意だった。小さい頃、よく親父に教えてもらってチェスだの将棋だの囲碁だのをしていた記憶がある。
自宅には碁盤、将棋盤、チェスボードなどがあり、今でもよく一人で詰将棋をしたりする。実はTVゲームなんかををするよりそっちの方が好きだった。
「金次郎とどちらが強いんじゃ?」
「将棋は137戦71勝ぐらいですかね。今のところ勝ち越してます」
「ほう、やるではないか」
「いや、単にあいつは教科書に忠実なんですよ。その分手が読みやすいだけです」
「それでもあの金次郎を負かすなんて大したものじゃよ」
「………………」
まぁ、そう言われればそうなのかもしてない。今までたいして意識していなかったが。
俺が唯一あいつに張り合えるとことと言えばそれぐらいしかないからな……情けない話。
奴は昔からなんでもできたからなぁ……。近くにいるとよく自分の無力さが思い知らされたもんだ。
「………………」
「……ふむ、まぁ、気にすることはない」
「え?」
「金次郎はいろいろと特別だ。それにあやつと婿殿を比べるのは間違えだよ」
「な、何かですか?」
「どうせ、また自分は他人に劣っておるとか考えていたのだろう?」
「そんなことは……」
「ごまかさんでいい」
源じいはが駒を打つ音が俺の言葉を詰まらせる。源じいは老眼鏡の奥からぎらぎらとした目で俺を見据えた。
「結局、人は自分の目に見える世界でしか生きられないんだ。金次郎には金次郎の見える世界があり、婿殿には婿殿の見える世界がある。その世界が広いか狭いかで人間の価値が決まるわけじゃない」
「………………」
「お前がお前の世界を壊されそうになった時、お前の世界の住人を傷つけられそうになった時、それを守れればお前は立派なヒーローだ。人間の価値なんぞそんなもんだよ」
この人にはなんというか有無を言わさない威厳がある。現に俺も言葉が詰まってしまっていた。
「おっと、これ以上は説教臭くなってしまう。悪いな、年をとるとこうなるのがけない。ほれ、次はお前の番だぞ」
悪い悪いと湯のみでお茶をすする源じい。
「あ……」
ぼんやりと源じいの話を聞いてしまっていた俺はあわてて次の手を考える。
「えっと……」
(やばいぞ、全く考えてなかった……)
軽いパニック状態に陥ってしまった俺は自分が優位に立っているの忘れて、鈍った頭を必死に回転させ始める。源じいの手は妙手でそれは俺をさらに混乱させた。
「くっくっくっ……どうした婿殿よ」
源じいは楽しそうに笑う。そんな時だった。
「ただいま!」
俺にとっては救世主ともいえるべきはつらつとした声が、店の入り口とは逆の裏口の方から飛んでくる。この声の主はたぶん優奈だ。
よかった、どうやら彼女のおかげで一呼吸置くことができそうだ。
リズムのいい足音からして優奈は自室のある二階には向かわずに直接店の方に出てきているのだろう。
「ちっ! 邪魔が入ったか」
源じいはつまらなそうに湯のみのお茶を飲み干した。その数秒後、優奈が奥の部屋から顔を出す。
「おう、おかえ……」
「やっぱりいた! 弘樹ッ!!」
と、俺の挨拶を遮ったこの無礼な少女は大野(おおの) 優奈(ゆな)、金次郎と俺のもう一人の幼馴染だ。
パッチリとした瞳が特徴的で、髪型は左右の髪で二本づつ合計4本の三つ網を作り髪全体をポニーテールでまとめていた。
優奈はこの大野骨董品店に源じいと二人で住んでいる。
彼女の両親は彼女が物心つくころにはすでに他界していたからだ。俺も優奈の両親の顔は写真でしか見た子どがない。
源じいの男手一つで育てられてきた優奈は、顔は結構可愛いのに発言や言動がボーイッシュで、悪く言えば女の子らしくなく良くいえば親しみやすい性格をしている。
セーラー服の紺のスカートを動きやすいようにと短く着こなし下にスパッツを着用しているのは彼女の活発さをよく表しているだろう。
運動神経のいい優奈はいろいろな部活を掛け持ちしており、俺が知っているだけでテニス部、料理手芸部、ソフトボール部、バレー部とたくさんある。
そのため優奈がこんな早い時間に帰ってくるのは珍しいことで、俺はその訳を聞きたかったところなのだが……。
「ど、どうしたんだ?」
優奈は俺の肩を掴んで前後にぐわんぐわん揺らしていた。脳みそがシェイクされる。
「どうしたんだ? じゃないよ! どうして今日、僕が昼休み迎えに行った時にいなかったのさ!」
「は? どうしてって……」
そういえば金次郎が何か言っていたな、優奈が探しているとか何とか……。
「なんだよ、何か用事でもあったのか?」
俺は優奈に尋ねる。俺としては約束などした記憶がなかったからだ。
「昨日メールしたでしょ?『料理部でマフィンを作るるんで、その味見をしてほしいから昼休み予定を空けておいて』って! 」
「は? いやそんなメールは着てなかったはず……」
俺は携帯を確認しようとポケットをまさぐる。
(……ん? あれ?)
しかし、俺のポケットから出てきたのは一つの古びたお守りのみだった。これは昔母さんが俺にくれていつも身につけているものだ。
そして、そのお守り以外俺のポケットに入っているものはない。俺の携帯はいったいどこへ……。
「ああ! そういや昨日充電が切れてそのまま充電機につなぎっぱなしだ……」
「なッ!」
優奈の一瞬表情が固まり、次の瞬間にはがっくしと力なく肩を落とした。
携帯をほとんどといっていいほど使わない俺はこうやって家に忘れてしまうことが結構あった。
それでも普段ならメールなんて来ないのでたいして影響はないが今回は少しタイミングが悪かったようだ。
「おうおうそれはなんというか、ご愁傷さまだな孫娘よ。あんなに朝早くから出掛けて行ったのにな」
「お、おじいちゃんは黙ってて!」
「くっくっくっ!」
なぜか顔を赤く染めた優奈を見て源じいはいやらしく笑っていた。
しかし、なんというか悪いことをしてしまった。普段からもう少し携帯を利用すべきだろうか。
いや、まぁ、利用したくても特にメールしたりする相手もいないんだけどね……。
「まぁ、何はともあれ悪かったな」
俺は優奈に素直に謝った。
「もういいよ……はい、これ」
「ん? もしかしてそれが……」
「うん、結構うまく焼けたから」
優奈からピンク色の包みを受け取る。その包みは頭はかわいらしい赤のリボンで縛られていた。
手のひらサイズのそれはほのかに甘い香りを漂わせている。
「そうか、ありがとう。じゃあ家で食べ……」
俺はもらったマフィンをかばんに直しておこうとして……。
「バッカモーン!!」
源じいがいきなり某魚介類一家の大黒柱のように俺を怒鳴りつけた。
「な、なんですかいきなり」
「婿殿は少しは そんな事だからクラスの女の子の中では陰で面白くない奴とか、影が薄いとか言われるんだぞ」
「え!? ちょっと待って! 初耳なんだけどそれ! てか、なんで源じいがそんなこと知ってるの!?」
「そんなことはどうでもいい」
「いやいや、俺にとっては結構重要なことですよ! 今後の俺の高校生活において!」
「なら少しは頭を使え! この頭は将棋をするためだけにあるんじゃないだろ?」
「って!」
源じいは人差指で俺の頭を小突いた。 
「こういうときはなその場で食べてあげて、そのばでおいしいねって言ってあげるのが男ってもんだ」
「そ、そうなのか……?」
「まったく、婿殿は女心ってもんをわかってない」
「………………」
確かに俺は女心なんてものはよくわからないので言い返すことができない。
「優奈もその方がいいんだろ?」
「うん。まぁ、今食べてもらって直接感想を言ってもらった方がうれしいね」
源じいの問いかけにうなずく優奈。目の前で優菜の瞳は期待するように輝いていた。
「そうか……」
うん、まぁよく考えれば今食べて感想を言った方が作った側としてもうれしいかもしれない。
そんなところに頭が回らないから俺はモテないのだろう。うん、そうだ! そうに違いない。
決して顔がさえてないだとか、頭もたいして良くないないだとか、身長も……これ以上はやめておこう。
「じゃあいただきます」
現実逃避もそこそこに俺は包みを開く。中には独特のカップの型にチョコマフィンが入っていた。
ココアでも使っているのだろうか、茶色いマフィンからチョコチップが頭を出しておりなんとも甘味なにおいを漂わせている。
まぁ、優奈は昔から大野家の料理や掃除、洗濯などを担当してきた分、家事スキルがが高い。なので味の心配はしていなかった。
俺は型を少し剥いでマフィンを一口食べる。
「……うん、うまい」
予想通り、優奈の作ったマフィンはうまかった。
見た目より甘さ控えめで生地がしっとりとしているチョコチップにはビターチョコを使っているのだろうか、俺の好みに合わせて作ってくれたんだろう。
「ほんと? よかったよ!」
どこか安心したように息をつく優奈。
俺はマフィンで乾いた口を湯のみのお茶でうるおしてから言った。
「ありがとうな」
「いえいえ、こっちが味見してほしかっただけだからね」
そう言って優奈は俺からいらなくなったピンクの包みを受け取り綺麗に折りたたんだ。こういうところは女の子だ。
俺はマフィンをもう一口頬張りながら将棋の駒を進めた。
あと2~3手で源じいは詰むだろう。そんな状況に嫌気がさしたのか、それとも考える時間が欲しかったのか、源じいは新たに話題を切り出した。
「そんなことより孫娘よ。あの話はもうしたのか?」
「え……」
「あの話?」
源じいのセリフに首をかしげる俺。
「なんだ……その様子だとまだ話していなかったのか?」
「う、うるさいなぁ! 今日話そうと思ってたんだよ!」
「……?」
いったい何の話だろう。なぜか優奈が少しそわそわしているようにも見える。
少しためらうような間をおいてから優奈は話し始めた。
「弘樹は、先月隣の町に遊園地ができたの知ってる?」
「ああ、なんかチラシが入ってたな」
確か、観光地がないこの一帯に名物を作ろうと県と企業が協力して建設していたかなりでかいものだったはずだ。世界最大級の観覧車が売りなのだとか。二年ほど前から建設が始まりつい先月の完成披露宴はニュースでも取り上げられていた。
確か、インパクトパークって名前だったような……。
「それでさ……僕、その遊園地の優待券もらったんだけど……それが最大5人まで入場できるんだよ……」
「へー、それはずいぶんとレアな物を手に入れたな」
インパクトパークは完成はしているがまだ一般開放はされておらず。今、入れるのは優待券を持った一部富裕層や抽選で選ばれたの幸運な人間だけ、一般公開は夏の始まりぐらいになるらしい。
実際に手に入れたのは俺だがなと源じいは次の手を打ちながらぼやいていた。
「うん……でさ……も、もしよかったら今度僕とその遊園地に……」
「おう! いいぞ!」
「え?」
「遊園地いくんだろ? 是非とも俺も連れてってくれ!」
「いいの!?」
「いいも何も……」
逆にこちらからお願いしたいぐらいだ。こう見えても俺はジェットコースターとかアトラクションが結構好きだったりする。
完成したばかりの遊園地のが無料、しかもほぼ待ち時間なしで体験できるなんてこんな機会めったにないだろう。
一般公開が始まってしまえば待ち時間だけで時間を取られてあまり遊園地を堪能でないだろうからな。
「でも久しぶりだな三人で遊園地なんて……」
「……え? 三人?」
「ああ、金次郎も行くんだろ? そういえば久しぶりだな三人で遊園地なんて行くの」
「あ、えっと……その……」
「……? どうしたんだ?」
もごもごと口ごもってしまう優奈。いつもはっきりと意見を言う優奈にするとなかなか珍しい光景だ。
「金次郎は……あれだよ! あいつ本読むので忙しいし……そうだよ! そろそろ模試があったでしょ? 勉強とかして断られるんるんじゃないかな?」
「うーん……誘えば来ると思うけど」
「いいや、来ないね! 絶対!」
「そ、そうか……?」
優奈のすごい剣幕に気押される俺。
確かに金次郎は騒がしいところは嫌いだし、模試とか近かったら遊びの誘いも断られることもあるが。
(まぁ、誘えば嫌とは言わないだろうし、無理に連れていくのもな……)
「じゃあ、二人で行くか。たまにはそういうのも悪くないな」 
「そ、そうだね! じゃあ、今週の週末なんかどうかな? 僕その日は部活も何もないんだ!」
「週末か……ああ、俺も特に予定はなかった」
まぁ、俺の休日の予定といえば、趣味のミリタリー系の雑誌を買いに行くか。優奈か金次郎、それか両方が遊びに来る、または遊びに行くぐらいしかないが。
「じゃあ決まりだね! ……やった」
妙にテンションが高い優奈。そんなに遊園地へ行きたかったのだろうか、俺に背中を向けて小さくにガッツポーズまでしている。
しかし、遊園地か……本当に久しぶりだ。最後に行ったのはいつだったかな。確か中学校ぐらいの時に姉さんと俺、金次郎、優奈で行ったっきりだったような気がする。
「……二人で……遊園地」
「孫娘よ……気持ちはわかるが一人でにやにやするのはさすがに気持ち悪いぞ……」
「にゃッ! にやにやなんかしてにゃい!」
「落ち着け……」
源じいは飽きれたため息をついている。
「……?」
思い出に浸っていたせいか、源じいと優奈が何か話していたようだがよく聞こえなかった。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもないよ! 僕、夕飯の買い出しに行ってくるね!」
「買い物って……これから行くのか?」
「うん、夕飯の材料の買い置きがなかったからね。買ってこなきゃ」
「なんで帰りに買ってこなかったんだよ?」
「そ、それは……」
「それは婿殿に早くマフィンを食べてほしかったから……」
「おじいちゃん!!」
「……はいはい、年寄りは黙るわい」
源じいは次の手を打った。
(え? 王をそこに動かしたら……)
俺は先ほど源じいから奪った金を王の前に置いた。
「じゃあ、行ってくるね!」
そそくさと店の入口の方から出て行ってしまった優奈。おかしな奴。
「……あやつもそろそろろ行動と起こさんといかん。いくら婿殿が金次郎に隠れて目立たんといっても、いずれ誰かは婿殿の魅力に気づくだう……」
「は? 何の話ですか?」
「と言っても、当人の婿殿がこれではな……」
「……?」
「なんでもない。さて、続きをしよう」
源じいはごまかすように次の手を打とうとするが。
「いや、もう詰めましたよ?」
「なぬ! 卑怯だぞ! 王手といっとらんぞ婿殿!」
「言いましたよ! 源じいが聞いてなかったんじゃないですか!」
「ぐぬぬ……! もう一戦! もう一戦だ!」
源じいは悔しそうに歯をかみしめていた。まぁ、いつものアルバイトの光景だった。



<<<< 第壱話   第参話 >>>>



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はい、まぁ例のごとくラブコメが大好きな某hです。

まだ序盤で日常ばかりでぐだってしまいそうですが今後もがんばって書いていきます。

あわよくば12月のMF文庫の締め切りに間に合えばいいなぁ……と思ってるんですが。

少し厳しいかもです。

別の通常更新でも書こうと思っているのですが、今年の年末はコミケに参加することになりまして(お客で)

まぁ、いろいろと予定がたまっている12月です。


彼女ができる気配は全くないがな!! 

category: 尾裂狐と俺と陰陽師

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尾裂狐と俺と陰陽師  序の壱 

ニコ生見てたりしてたりしたらこんな時間!!ビクゥッ∑(OωO )

ということで急いでうpさせていただきました。

感想なんかいただけるとすごくうれしいです!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



皆さんは【尾裂狐(おさき)】っと言うものをご存じだろうか?
キツネの姿をした妖怪(あやかし)で尾が九本存在する。九尾の妖狐といったほうが一般的かも知れない。
厳密にいえば、尾裂狐(おさき)というのは尾を数本持つキツネの総称であり九尾のキツネ=尾先っという認識は間違っているのかもしれないが今はいいとしよう。
九尾、白面で金の毛並みと九本の尾、そして圧倒的な力を持つ大妖。
万単位の年月を生きた古狐が化生したものだともいわれ、赤子のような声で鳴き人を喰らう。
絶世の美女に化けるのも有名で、日本だけではなく世界各地で記録が残っている。中国で言う妲己(だっき)、日本で言えば玉藻前(たまものまえ)は知ってる人なら知っているかも知れない。
伝承や創作でも何かと悪しき霊的存在、憑き物として扱われることが多いが『事実は、すべての尾裂狐がそうと言うわけではない』っというのは、俺のバイトで先である骨董品屋のじいさんの受け売りだ。
このじいさんがやたらと伝説だの妖怪だのに詳しくて、俺がいま語っているうんちくはすべてそのじいさんから聞いた話だ。
まぁ、でも、俺はこの尾裂狐という存在は所詮おとぎ話の中の存在であり小説や漫画、じいさんの話の中でしか存在しないものだと思っていた……。

「………………」
「――ずずずずッ! うまい!」

しかし、現実はどうだろう。
目の前で、俺の晩飯である即席麺の赤いキツネうどんを景気のいい音ですする少女は確かに尾が二本と頭から狐の耳が生えていた。
見た目中学生くらいの発育途中な体つき、貸してやった俺の大きめのパーカーがぶかぶかでワンピースのように彼女の体を隠している。
流れるような神々しさを放つ金というよりは白に近い髪、黄金に輝く瞳、そしてまるで漫画やアニメで描かれる美しくもかわいらしい容姿は手にもたれた赤いカップ麺と顔に付いたうどんのネギによって台無しにされてしまっていた。
色気より食い気という言葉は、実は彼女のために作られた言葉ではなかろうか。
「……ぬ?」
彼女が俺の視線に気がついたようだ。
「どうしたのじゃ弘樹(ひろき)? そんなに見つめて……もしかしてわしの『カップうどん』が欲しいのか? ふむ、少しだけなら分けてやってもいいぞ」
「いや、それ俺の晩飯だから、『お前の』カップうどんじゃないからな?」
という俺の抗議は彼女にはすでに聞こえておらず、自称九尾の少女はてかてかと光り輝く油揚げにご執心のようだ。
くれる気ねぇじゃねぇかという俺のツッコミは何の意味もなさないので口には出さない。
「はぐはぐはぐッ!」
黄金色の目をらんらんと輝かせ油揚げにむしゃぶりつく少女。
「うまいのぉ……カップ麺とやらは初めて食べるのじゃがお湯を入れるだけでこんなにうまいものができるとは……。人間の進化も捨てたものではないの」
少女は耳と尻尾をパタパタとご機嫌に揺らす。
「さいですか……」
俺の憂鬱なため息はうどんの湯気とともに六畳間の俺の部屋に消えていった。
そろそろうどんを食べ終わろうとせん彼女を眺めながら、どうしてこうなったのだろうかと俺はそんなことを思い出していた。




校舎の屋上は、今日は暖かかった。
屋上に設置された青いベンチに腰をかけながら空を見上げる。空は青く澄み、綿菓子のような雲は自由に泳ぎ回っていた。
一通り空を眺めてから俺は視線を下す、山の中腹あたりに建てられたこの校舎の屋上からは自分の住む町が一望することができる。
この高校に入学して一年と少し、この人の寄り付かない穴場を見つけてちょうど一年ぐらいがたっただろうか、この景色も見慣れたものだ。
「………………」
俺はここでこうしてぼんやりしてるのが大好きだった。まわりは静かで遠くからはかすかに思い思いの昼休みを楽しむ生徒たちの声がする。
ベンチが設置されてるのだから別に禁止されているわけではないのだろうが、この屋上には不思議と人が集まらない。というか全く来ない。
俺がここで新しい人に出会ったのは俺が最初にここに訪れた時の一回のみだ。
「……ん?」
俺はふと足にもぞもぞとした違和感を感じ視線をさらに下に向ける。すると俺の足元で黒い毛の塊がうごめいていた。
「……にゃあ」
「おお、みょうたらか」
俺は俺の足にすり寄ってきていた猫をベンチの上に乗せてやる。すると猫は俺の膝に飛び乗り毛づくろいを始めた。
こいつの名前はみょうたらこの屋上の数少ない住人の一匹、この屋上に住み着く黒猫だ。
いったいなぜ校舎屋上に猫がいるのか、どこから迷い込んだのか、それはわからない。ただみょうたらはずいぶんと前からこの屋上にいるようで俺がここを見つけた時にはすでにここいた。
ここに人が集まらないのはこの猫にとってもよい方向に働き、教師やほかの生徒にはばれていないようだ。
「にゃあ」
一通り毛づくろいを終えたみょうたらが何かを期待するように俺を見上げる。俺はこの猫が言わんとしていることをわかっていた。
「もうちょっと待ってろ。もすくぐ来るだろうから。今日の当番は俺じゃないんだよ」
「……にゃぁご……」
俺の言っていることを理解したのだろうか、お前はようなしだとでも言わんばかりにみょうたらは俺の膝の上でまるまって居眠りを始めた。
この猫は時たまこうやってまるで人の言葉がわかるかのような行動をとる。まったく、不思議な猫だ。
「………………」
みょうらたを見ていたら俺も眠たくなってきた。まだ、寒さが残る季節ではあるが太陽は朝方の布団のように暖かかった。
(……さて、どうしたもんかな)
昼休みは短い、今寝てしまえば確実に次の授業までにおきることができないだろう。それは避けないといけないのだが……。
(……次は美術だったか? まぁ、一時間ぐらいサボっても大丈夫かな)
最近の若者は精神が軟弱なのだ。
よし、寝よう!っと俺がそんな情けない決心を固めて目を閉じた。

「………………」

それから数分、風が演奏する木々のざわめきを聞きながら俺がみょうたらと一緒にうとうとと船をこぎ始めた時だった。
「……おきて」
突如、俺と太陽を遮る影が現れた。急に太陽の暖かさを失った俺は布団を取り上げられたように身震いする。
「うぅ……葵(あおい)か?」
顔を確認するまでもなく俺は彼女の名前を呼んだ。この屋上に来る人物は限られているからだ。
かすんだ目をこすり、視界をはっきりさせると時代錯誤で地味なセーラー服を着た女子生徒が立っていた。
彼女の名前は土御門(つちみかど) 葵(あおい)俺とクラスは違うが俺と同じ二年生だ。
邪魔だからという理由だけで、ミディアムショートに切られた髪型。その割に肩までかかるぐらい長いもみあげを、何やら高級そうな赤いリボンの髪飾りでまとめている。
体の線が細く、身長は女子にしては平均ぐらいなのだろうか、そこらへんの基準はよくわからんが。
しかし、特筆すべきは彼女の持つ特殊な雰囲気だろう。威圧感とは少し違うのかもしれないが彼女には誰も寄せ付けない、いや、近づいてはいけないようなそんな空気を放っている。
彼女自身もあまり他人にかかわろうとせず、整ったその綺麗な顔は異常ほどに表情変化が少ない。一見何を考えているのかわからず、つかみどころのない少女だ。
しかし、一年も彼女との付き合いがあればもう慣れてしまった。それに彼女は少ないながらもしっかりと表情を持っており、最近ではその微妙な変化もわかるようになってきている。
たとえば今、葵はどこか卑下するような目で俺を見下していた。…………ってあれ? どして?
「………………」
「ど、どうしたんだ?」
何も言わず、視線だけで俺を非難する彼女に真意を訪ねる。なんというかすごく居心地が悪い。
たっぷりと10秒ほど間をあけてから、彼女はゆっくりと口を開いた。
「……午後の授業……サボるの?」
「ッ! そ、そ、そんなわけないだろ? な、なんで?」
「……今、寝てた」
「え? あ、いや、そんなつもりは……」
葵には意外と真面目な一面がある。こうやって俺が授業をサボろうとしたり、ずぼらをしようとするとすぐに目から冷凍ビームを放つのだ。俺はこの目が苦手である。
以前、俺があまり成績がよろしくないという話をしたときなんて昼休みと放課後の時間を使って屋上で無理やり勉強をさせられたことがあった。
まぁ、結果的に彼女の教え方は非常に分かりやすく、そのおかげで成績は幾分か伸びたわけだが。
授業をさぼったりなんかしたらまた強制勉強会に参加されられるかも知れない。そんなわけで、俺は必至で体裁を取り繕う。
別にサボろうとした証拠があるわけじゃないんだ、なんとかごまかせるかもしれない。
「これはだな、ちょっとうとうとしてただけであって……」

「………………」

「チャイムがなったらきちんと教室に戻るつもりだったし……」

「………………」

「……あ……うん……なんというかその……」

「………………」

「すいませんでした」
頼むから、そんな冷たい目で俺を見ないでくれ。彼女には全くかなう気がしなかった。
よく考えれば、俺も葵が来ることがわかっていたのになぜサボって居眠りしようなどと考えたのだろうか。
「なぁご……」
俺を見上げるみょうたらは情けないとでも言いたいのだろうか。うるせぇよ畜生。
猫とにらみ合いををしていた俺だが、先にみょうたらの方が俺から興味が失せたようだ。みょうたらは俺の隣に座った葵の膝の上に飛び移る。
葵はビニール袋を取り出していた。中には大量の煮干が入っているようだった。今日は彼女がみょうたらの食事当番なのだ。
「なんだ、結局お前は飯か……現金な奴だなぁ……」
「……にぁあ」
なんとでも言えと言いたいようにみょうたらは葵の手から小ぶりな魚の煮干をくわえるとむしゃぶり始めた。
猫に相手にされない人間。なんかすごく屈辱だ。しかし、ここでこれ以上むきになるのも馬鹿らしい。
どうすることもできないモヤモヤ感をため息で吐き出してから、俺はしばらく葵とみょうたらを静観していた。
みょうたらが煮干をたべきるごとに、一本、一本手渡しで餌をやる葵、なんというかすごく楽しそうだ。
いや、まぁ例のごとくほぼ無表情ではあるのだが。しかしよく見ると、目と口元がほんの少しだけ緩んでいる。
そういえば、彼女と初めて会った日も彼女はこんな表情でみょうたらに餌をあげていた気がする。
(よく考えれば、もう一年も前の話なのか……)
あの時、俺はまだ葵のことをよく知らず、なぜそんなにおもしろくなさそうなのかと思っていた。
「………………」
「……そろそろ」
「ん?」
ふと、鈴がみょうたらを膝から下す。

「どうしたんだ?」
「……予鈴が鳴る」
彼女は屋上に設置された時計を指差す。確かに、あと少しで予鈴が鳴るだろう。
「じゃあ、もどるか……」
葵は無言でうなずき立ちあがった。
葵に続いて俺も重い腰を上げる、本音を言うと授業終了までここでとどまっていたいがそれは葵が許してくれないだろう。
「じゃあな」

「にゃぁ……」
みょうたらは少しさびしそうにそしてどこかつまらなそうに鳴いていた。



「おう、お帰り」
俺がクラスの席に戻ると、俺の前の席に座るイケメン眼鏡が俺を出迎えてくれた。
「金次郎(きんじろう)か……」
あまり交友の広くない俺を出迎えてくれる奴など決まり切っており、こいつはその数少ない友人の一人、仁部(にべ)金次郎(きんじろう)だ。
俺の小学生の時からの竹馬の友である。
「どうでもいいが金次郎、出迎えの時ぐらい本から目を離したらどうだ?」
「ちょっとまて、今いいところなんだ」
そう言って、金次郎はさらにページをめくった。そんな金次郎を横目に俺は自分の席に座る。
ふと、俺はいくつかの視線がこちらに向いているのに気がついた。しかし、これは俺に向けられたものではないと俺は知っている。
この視線は金次郎に向けられた物、正確には金次郎に向けられた女子からのあこがれの視線だ。
逆に俺には『邪魔なんだよ』という殺気が向けられている……なんだよこの差は……。
いや、まあ単純にスペックの違いなんだろうけどね。
全国模試で常に上から10本の指には入り、運動神経抜群、おまけに、まさにアイドル顔負けというべき容姿なのだから世界は何かが間違っている。
しかし、金次郎はこのように非の打ちどころがない奴ではあるのだが、こいつにも一つだけ欠点がある。それは他人に対してあまり興味がないということだ。
俺のような昔からなじみのある奴とは普通に接してくれるのだが、全く興味がない奴に対しては反応すらしない。そのせいで泣いた女の子も数知れずいるようだ。
「ふぅ……すまなかったな」
金次郎は本にしおりをはさんでたたむと机に置いた。中指で眼鏡のずれを直す姿は無駄にさわやかで殺意がわく。
なんというか、こいつからは常にイケメンオーラが出ていた。彼が本を読むさまは言うまでもなくイケメンで爆発してほしいし、運動をしている時もほとんど彼の独壇場で爆発してほしい、こないだなんてテストでオール満点を取りさらに女子からの注目度が上がっていた、ほんとに爆発して欲しい。
……はい、ひがみですがなにか?
「で、今日は何の本を読んでたんだ?」
俺はこれ以上俺の醜い心が露呈(ろてい)しないようにするため金次郎に話題を振ってみることにした。
「『で』っていうのはよくわからんが。犯罪心理学の本だ」
金次郎は高級感があふれるハードカバーの本を俺に手渡す。
本を受け取りずっしりとした感触を確かめた。本の側面には『犯罪心理学の全て』と題がうたれており、ページをパラパラとめくってみるとびっしりと圧縮された文字が俺の視界を埋め尽くしていた。
「なんというか……またすごい本をよんでるな。いつものことだが……」
「……? 面白いぞ? 興味があれば貸してやろうか?」
「いや、遠慮しとく」
こんな本を読み始めたら、のびたくんよりも早く眠りにつける自信がある。俺は本をさっさと金次郎に返した。
「そうか……」
この本の共感者でも欲しかったのだろうか、金次郎は少しだけ残念そうにしている。
それならもっとほかの奴とも関わればいいのに、そうすれば一人ぐらいはお前が読むような本の共感者が…………現れるとは思えないが。
高校生で犯罪心理学の本読んでる奴なんかそうそう居ないだろ……。
「そういえば、優奈(ゆな)がお前のこと探してたぞ」
金次郎は本を机の中に直すと次の美術の教科書を出しながらそんなことを言った。
「優奈が?」
優奈とは俺のもう一人の幼馴染の名前だ、クラスは違うが同じ学園に通っている。
「ああ、昼休みに来てな。なにか約束でもしてたのか?」
「いや……そんな記憶はないが……」
そういえば今日はまだ優奈に会っていない気がする。いつもなら朝うちのクラスに来て俺と金次郎と談笑しているのだが今日はいなかった。
「メールでも打っておいた方がいいんじゃないか?」
「いや、いい。どうせ今日バイトだし後であうだろ」
それこそ、急ぎの用なら向こうからメールなり電話なりしてくるだろうしな。
「バイトって源じいさんのところか」
「ああ」
「ご苦労だな」
「それほどのもんじゃないよ。どうせあっこはほとんど客来ないし、源じいの話し相手になってやるのが主な仕事だからな」
「そうなのか……」
「お前はバイトとしないのか?」
「まぁな、本を買う金が欲しいが……それで本が読む時間がなくなれば本末転倒だ。それに中央図書館に行けば大体の本は揃ってる」
「……本のことばっかだな」
「俺は本の虫だからな」
「自分で言うか……」
「まぁ、ある程度自分のことは理解してるつもりだ」
金次郎は肩をすくめた。
「そんなことより、お前は準備しなくていいのか?」
「はぁ?」
「いや、次の時間美術だぞ。移動教室だろ」
「あ!」
教室の時計を見ると後3分ほどで本鈴が鳴ろうとせん時間だった。教室にはすでに誰もおらず、俺と金次郎が取り残されていた。
「待っててやるからさっさと準備しろ」
「お、おう!」

結局、俺たちはギリギリ本鈴が鳴り終わるまでに美術室に到着することができた。

美術の時間は退屈で、やっぱり屋上で昼寝していた方が有意義な気がした。



第弐話 >>>>


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少し中と半端になってしまいましたが序章part1となります。

今後、もう少しだけキャラクターが出てきてそのあと本編に入っていく感じになりますね。

前回の学園を制し者に比べてかなり落ち着いた感じにしてみたつもりなのですがどうだったでしょうか?

私的には何となく投げやりが感じになってしまった気がするので後々修正を入れようと思っているのですが。


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学園を制し者 第十五話 最終回(仮) 

長かったこの話も今回で最終回です( ・´◞౪◟・`)

まぁ、たらたら書いてたので遅くなったのですが

本来なら一ヵ月ちょいぐらいでかける量だと思います。

私じゃなかったらもうちょっと早いかもですね⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡

され、プロットもなく書き始めてもう……確か3月ぐらいからだったから半年近くですねww

どんだけ時間をかけてんだって話です♪~ (゜ε゜( )ピーピープー

多分、MF文庫の単行本一冊ぐらいはあると思いますが

うーん、どうせだったら九月三十一日のやつに応募してみようかなぁ……

まぁ、その話はいいとして

では、あんまし長くなるのもあれなのでもしよかったら、

ラストも読んで感想やアドバイスなどいただけるとすごく嬉しいです(^^ゞ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うぁ……さびぃ……」
健太は部室に入るなりそう言ってエアコンの電源を入れた。
10月もすでに後半、昨日の作ったばかりのまだ熱をもつ顔の傷が秋風に沁みる。

――明日、学園祭の反省会を行う。AM.10:00、部室に来られたし

狭山からこんなメールが届いていたのは昨日の晩だ。
しかし、疲労で爆睡していた俺がこのメールを見たのは翌日の8時、つまり、つい2時間ほど前のことである。
健太からの『学園へ一緒に行こう』という誘いのメールが無ければ、今も家で爆睡していたところだろう。
ちなみに狭山からのメールには、昨日の『生徒会長誘拐事件』のまで簡略化して書かれていた。
生徒会長誘拐事件の『真相』を知った生徒会は風見山を中心として、ただちに自体を収集。
そのおかげか、生徒たちまでにこの誘拐事件が知れ渡ることはなかった。
ビックスクリーンで映された映像は 俺達『生徒学園ライフ支援同好会』の作品ということで処理されるらしい。
つまり、今回島崎が起こした一連の事件はすべて『なかったこと』になるのだ。
きっと、問題が公になるのを恐れた学園長の指示なのだろう。
それにこの対応はもっと『たくさんの人にとって』ベストなものなのだった。
しかし、さすがに島崎自信はおとがめなしと言うわけにもいかずしばらくは停学処分となるようだ。
風紀委員会も解体、その一部は生徒会に吸収されるらしい。
「…………意外と集まってるもんなんだなぁ。片付けとか嫌いそうな奴らばっかなのに」
ぼんやりとそう呟いた健太は、文化部部室棟二階にある『生徒学園ライフ支援同好会』の窓からグラウンドを見下ろした。
本来は学園祭後日で休暇となっているはずの今日。
しかし、グラウンドには祭りの残骸を片付けるため、多くの融資である生徒達が集まって来ていたのだ。
「そういや、あの後どうなったんだ?」
ふと、健太は振り返る。
「……? 何が?」
「何がって……島崎の野郎を殴り飛ばしたんだろ? その後だよ」
「ああ……あの後か……」
よく考えれば、昨日あんなことがあったと言うのに健太とそのことについて全く話してなかった。
学園に向かう途中もたわいのない話しで暇を潰していたし。
「で?」
健太は部室内にあるソファーに体を投げ出すようにして座る。
狭山あたりから多少の話は聞いていたのだろうか、それとも直接スクリーンを見ていたのかもしれない。
「………………」
つい昨日起こったことを思い出すだけであるのに、まるで誰にでもあるような中学時代の黒歴史を思い出すかのような気分にとらわれ、この苦い記憶を何と説明したものかと口の中で転がした。
正直、今回の結末は本当になんの面白みもない、しごくしようもない物なのだ。
そのくせ、説明するとなると、なかなかどうして面倒くさい。
「それより、お前は昨日どうしてたんだ?」
俺は頭の中を再び整理する時間稼ぎと、単純な好奇心で健太に尋ねた。
「あん? 俺か? 俺はだな……」
きっと、俺と俺の姉のために散々走り回ってくれたであろう。
迷惑をかけたんだし、ジュースでも奢って……
「ナンパしてた!」
「………………」
「いやー! なんか、追手が少なくなったと思ったら、急に誰も追ってこなくなってさぁ……ビックスクリーンの方で何かあったらしくてそっちへ行ったみたいなんだけど、いちいち近づいてまた追われるのも嫌だったしとぼとぼとグラウンド避けながら歩いてたんだ。 すると、目の前に他校の制服を着た可愛い娘が歩いててな! これはもう喋りかけるしかねぇじゃん! そしたら、演劇見ましたよ!ってやたらとマスクに反応して……」
「………………」
今だ興奮気味に話す健太を横目に俺は心の中の財布のひもを強く結び直す。
「メールアドレスまで交換してくれたぜ! 後でレッドの人のアドレスを教えてくれって言われたけどお前の知り合いだったの……………………てっ! 俺のことはどうでもいいんだよ!」 
ようやく、俺の冷たい目線に気づいたのだろう。取り繕うようにして健太は話を元に戻す。
まぁ、俺としてもこいつの自慢話など聞いていてもつまらないだけなので余計な口ははさまない。
「まさか、生徒会長がマジでお嫁に行くとかじゃないだろうな!!」
健太が鼻息荒く対面に座っていた俺に詰め寄ってきた。
「あー、うざい! うざい!」
鬱陶しいので手で軽く払って座り直させる。
「結論から言うとだな、みー姉がお嫁に行くこともないし、学園を止めることもない」
「本当か!!」
「ああ、嘘じゃない」
「良かった! 本当に、良かった!」
しばらく、興奮気味にガツポーズしていた健太だが、その動きがピタリと止まった。
「……しかし、意外だよな」
「意外?」
「だってさぁ……あの、浦島だっけ?」
「島崎だ」
いい加減名前ぐらい覚えてやれよ。
「そうそう、それ。 ちょっと話しただけだけどさ、雰囲気的に約束を守る奴だと思えねぇんだよ」
らしくもなく腕を組んで考えこみ始める。
どうやら健太は島崎が約束を守ってみー姉から手を引いたのだと思っているようだが
「あー……そうじゃないんだなぁ……これが」
「どういう意味だよ?」
「実際、俺も島崎が素直に約束を守ると思ってなかったよ。だから、親父の目を覚まさすために、昨日、島崎をぶっ飛ばしたその足で親父の会社に殴りこんだんだ」
「へー、それで? どうなったんだ?」
「何の事だか分からん、とかぬかしやがった親父と血みどろの殴り合いになったよ」
ヒーローマスクを着けていたのに顔に傷があるのはそのせいである。
「そしたら、会社に島崎の親父とやらから直接電話があったんだよ。『バカな息子が先走って、申し訳ない。責任はきっちり息子に取らせるから経営統合の話はなしにしないでくれ』って謝罪の電話がな」
「はぁ? 何で? なしにしないでくれってのはおかしくないか? 島崎の親の方が立場が上なんじゃねぇの?」
「それが……」
「つまりはすべて『勘違い』だったと言うわけだよ!」
俺の言葉を奪い取るようにそう言ったのは……
「ふっはっはぁ! 待たせたかな」
「……狭山……お前は普通に登場が出来ないのか」
こいつ窓から入ってきやがった……
「細かいことは気にするな!!」
細かいことなのだろうか。
確か、健太が窓の外を見ていた時はカギが閉まっていた気がするし、それ以前にここは二階である。
(どうやってよじ登ってきたんだよ。普通に階段使った方が楽だろうに……)
しかし、狭山は俺の心の中のツッコミなどお構いなしに狭山は話を進める。
「すべては島崎の勘違い。この喜劇はそこから始まった……」
無駄に演技っぽいのはこいつのデフォな喋り方だ。
「勘違いってどういうことだよ?」
健太は首をかしげる。
「端的に言えば、今回の経営統合、最初に話を持ちかけたのはTONYの方からだった、親会社はTONYではなく新井コーポレーションの方で、しかも、婚約の話も島崎家側からの提案だったらしい。家族間の関係をより強い物にしておくためだとか……まぁ、本音は、『新井 美羽』を自分の娘とすることで少しだけでも自分の立場をよくしようとしただけなのだろうがな」
「じゃあ……」
「そう、それを勘違いして全く逆の立場だと思い込んだ島崎は今回のような行動に出た。基本的に人を下に見るような奴だからな。この機会にこの学園のトップである生徒会長になりたかったのだろう」
後で親父に聞いたところ、もちろん婚約の話は鼻で笑い飛ばしたそうだ。
「……って、ことは……」
ようやく物語の真相にたどりついたのであろう、健太はわなわなと体を震わせる。
「そう、昨日我々が必死で勝ちとった勝利や行動は最初からすべてが無意味。つまり『喜劇』だったと言うわけだ」
「うがぁあああ!!!」
健太はソファーに突っ伏した。
「……おい、いかにも残念そうにしてるが、お前ナンパしてたんだろ?」
「うっ!……」
ソファーでのどの奥に魚の骨が刺さったかのようにうめき声を上げた健太。
(……ったく、こいつは……)
調子のいい奴である。
「でもよぉ……結局そんなしょうもない落ちかよ……」
「まぁ、そんなものだ。おとぎ話のように楽しい終わり方なんてものは、世の中に早々出回ってない。結局のところそのしょうものない終わりの積み重ねが、人生なんだよ」
「つか、どうでもいいが狭山。何でそんなこと知ってんだよ……」
本来、経営統合自体、世間ではまだ知られていない極秘的な情報なのだ。
「最初から何かおかしいと思ってたのだ。経営状況が悪かったのはどうみてもTONYの方だったからな……しかし、TONYは新井コーポーレーションが手につけていなかった事業をいくつか持っていた。事業を拡大したかった新井コーポレーションにとってTONYは多少のリスクあるにしても優良物件だったわけだ」
お互いの利害が一致したわけだな、と一人納得するようにうなずく狭山。
「……いやだから、何でそんなこと知ってんだよ」
「ひぃみぃつ!❤」
「きめぇよ!! 低い声でハートマークとか付けんじゃねぇ!!」
胃の奥からこみ上げてくる吐き気を何とか飲み込む。
「ふっはっはっは!! そんなに嫌がれると、傷つくではないか!!」
「嘘つけ!」
こいつの精神はダイヤモンドカッターで削ったって傷つかない、そう確信した俺であった。
「まぁ、俺の情報ソースについては企業秘密だ」
「そう言うだろうと思ったけど……」
「なら、もうこの話はいいただろう。それよりも来客だ」
「来客?」
「うむ、お前の姉だよ」
狭山は俺を一瞥すると部室の扉に目を向けた。

――コンコン――

計ったかのようなタイミングでドアが控え目にノックされる。
「入るがいい!」
狭山のふんぞり返った態度を気にしないとでも言うように、丁寧にドアが開かれた。
「……失礼します」
鼻をくすぐるような甘い花の香りと、優しく包み込むような声。
「おはようございます、狭山君、六車君、そしてしんちゃん」
「……みー姉」
みー姉は俺に優しくほほ笑んだ。
雰囲気からして、『生徒会長モード』のみー姉だろう。
彼女は大きめの茶封筒を脇に抱えていた。
「しかし、これはこれは二年連続で生徒会長を務めるような才女が、こんな辛気臭い所になにかご用かな?」
いつかと同じような台詞でみー姉を迎え入れた狭山。
「ええ、用件が二つほどありまして……まぁでも、その前に……」
と、みー姉は俺達に向かって深々と頭を下げた。
「昨日は、助けていただきありがとうございました」
「昨日? いったい何の話をしているのだ?」
とぼけてみせる狭山。
「いえ、私はあなた達ヒーローに救われた。礼を言うぐらいはさせてください」
何を言っているのか分からんな、と呟きながらもやぶさかでもなさそうな狭山。
健太も照れたように頬を引っ掻いていた。
たっぷり、30秒ぐらいだったのだろうか、みー姉はゆっくりと頭を上げてこう続けた。
「だた……少し気になることっといいますか、今日は自分の推測が正しいかどうか確かめに来たのです」
「ふむ? 気になること」
「ええ、それが要件の一つめなのですが……」
「……?」
何だろう。
いつも笑みを絶やさない生徒会長であるみー姉は、すごく真剣な表情だ。
「もう一度言っておきましょう。これは私の推測です。そして、あなた達を『学園征服部』だと仮定してお話しましょう」
みー姉はそう言って一呼吸置く。
そして……
「今回の一通りの事件、すべての黒幕は学園ヒーローブラック、いえ、狭山君あなたですね?」
みー姉は核心めいたようにそう言った。
その二つの瞳はしっかりを狭山をとらえている。
「……ほう」
対する狭山は心底楽しそうに頬を歪めるだけ。余裕そうな態度だ。
「く、黒幕って……?」
一番混乱していたのはソファーからずり落ちそうになった健太だった。
「………………」
(狭山が……黒幕……?)
かくいう俺も内心では結構動揺していた。
「そう思った根拠は?」
「……状況証拠です」
みー姉は茶封筒を腰で抱えるようにして体の前で手を組んだ。。
「まずは、今回の事件を自分でよくよく考えてみたんです。そして、思いました……なぜ、二人ものスパイを風紀委員に配置しておきながらもブラックは島崎君の作戦に気が付けなかったのか?」
「………………」
(確かにそうだ……)
しかも、風紀委員の一人は副委員長だったのだと言うのだから島崎の動きを掴んでいない方が逆に不思議でさえある。
「それだけではありません。今回、最終的に利益を得たのも学園ヒーロー側でした」
「どういうことだ?」
俺はみー姉に問いかける。
「しんちゃんは風紀委員が解体されたことは知っていますね?」
「ああ」
「では、解体された風紀委員の一部生徒会に吸収されたことも?」
「知ってる」
全部、狭山からのメールに書いてあったことだ。
「生徒会に吸収された風紀委員は約半数。風紀委員がなくなった時点ですでに学園ヒーローにとっての利益がありますが……では、もう、半分。残りの風紀委員はどうなったと思いますか?」
「…………さぁ?」
そこまでは、さすがの狭山のメールにも書かれていなかった。
何気なく書いてあったことだし意識すらしていなかった。
「それがどうかしたのか?」
「………………」
みー姉の瞳は再び狭山に向けられていた。
「全員、『生徒学園ライフ支援同好会』に入部したのですよ。そして、このたび定員を満たした『生徒学園ライフ支援同好会』は本日付で『生徒学園ライフ支援部』へと名前を変えたのです」
「「はぁ!?」」
ほとんど同時に素っ頓狂な声を上げたのは健太と俺だった。
当然だ、狭山からそんな話は一言も聞いていなかったからだ。
抗議の目線は狭山へと向かう。
「……む? 言ってなかったか?」
「初耳だ!」
「ふっはっはっは! すまんな、部員が増えたのが昨日、新期部活動立ち上げの書類を提出したのも昨日なのだ! 少々連絡が遅れてしまった」
「昨日って……ずいぶんと急だな……」
狭山は少しも悪びれず俺達を笑い飛ばしやがった。
頼むから俺達に関わることは一言ぐらい相談してくれよ……
「というか、部活動って……顧問の先生とか必要ないのか?」
健太が珍しくもっともらしい質問をした。
「もちろん必要なのです」
「てことは、何か? もしかして顧問も決まったのか?」
「いや、そうではない」
狭山は腕を組む。
「どういう意味だよ?」
「『生徒学園ライフ支援部』のような文化部で専門の知識が必要なさそうな部活の場合は二年国語教諭の山西先生が兼任することになっているんです」
みー姉は、まぁ、吹奏楽部のような部活にはきちんとした顧問が付いていますが、と付け足す。
「で、もしかしてその袋は昨日俺が提出したものかな?」
狭山はみー姉の茶封筒を顎でしゃくった。
「……はい」
みー姉はほんの少しだけ茶封筒を抱える手に力を込める。
「これを提出されたときにも聞きましたが。本当に貴方が手八丁口八丁で騙して、無理やり入部させたわけではないのですね?」
「人聞きの悪いことを言うな! 俺はただ入部したい、という彼らの意思を組んだだけだよ」
「…………まぁ、いいでしょう。これが生徒会で判を押した入部届けと、部活動の許可証です」
みー姉は狭山に茶封筒を手渡した。
「ふ、確かに。しかし、流石は才色兼備で有名な生徒会長様。昨日はあんなことがあったと言うのにお仕事が速い」
みー姉から茶封筒を受け取った島崎は一度中身を確認してから懐にしまった。
茶封筒が折れ曲がりもせずに、吸い込まれるように懐に入って行ったのには絶対にツッコマない。
ツッコマないんだからね!!
「さて、要件のもう一つが終わったところで話を戻しましょう」
「うむ、名推理の途中だったな」
「はい、ここで一つ確認というか質問なのですが……」
狭山が茶化しをいれるが、みー姉は特に気にした様子を見せない。
「狭山君、昨日、7時15分、貴方はどこで何をしていましたか?」
「7時15分?」
「はい」
「ふむ……」
狭山は考えこむように顎に手をやる。
7時15分と言えば、 朝の『アラームニュースTV』の今日のぬいぐるみのコーナーが始まる時間。
つまり、みー姉が誘拐された時間である。
「…………ん?」
(7時15分……?)
俺はこの7時15分という数字に妙な違和感を感じた。
何か異物がのどの奥にとどまっている、飲み込めそうで飲み込めない、そんな感覚だ。
「さぁてな、部室にいた気がするが。そこまで詳しくは覚えていない」
「アリバイ証明はできますか? しんちゃん達と一緒にいたとか」
「出来ん。なぜそんなことを聞くのだ? 何のかまかけは知らんが……」
「もしかしたら、貴方は私の誘拐された現場を見ていたかもしれないと思ったんです」
「そんなわけがなかろう」
「私が知っているかぎり、貴方は学園内の生徒の中で最も疑り深い人です。もし、あなたが黒幕だったら、本当にきちんと私が誘拐されたかどうか確認するでしょう?」
「……さぁな、俺は黒幕ではないから分からんよ」
狭山はちょっと肩をすくませてそう答えた。
その表情からは真実はどうなのか読み取ることはできない。
(でも……)
確かに、本当にこいつが黒幕だったとしたら、たぶんみー姉が誘拐されるところをしっかりと確認していただろ……
「…………あ」
喉でつっかえていた違和感が溶けだし、跡形もなく消え去った。
なぜなら、俺はここでようやっとこの違和感の正体に気が付いたのだ。
(……思い出した)
そう、俺は思い出していた。狭山の過去に言っていた言葉を……

『生徒会長が誘拐されたのは、今から1時間前以内、それまでは俺が学校に登校してきたところから彼女の行動を監視していたからな……』

これは、みー姉の誘拐が発覚して狭山が情報を整理していた時の発言だ。
確か、この時は文化祭が始まる直前、9時ぐらいだったであろう。
みー姉が誘拐されたのが7時15分、しかし、狭山はみー姉が誘拐された所を見ていないと言う。
これは明らかにおかしい。
なぜならば、狭山がみー姉を監視していたのはみー姉が登校してから8時まで、
つまり、狭山が監視していたと言う8時には、すでに誘拐事件が起こっていたのである。
(……狭山はみー姉を誘拐してるとこを見てたのか?)
どうなのだろう、分からない。こいつは本当に色々と俺達に隠し事が多すぎる。
俺はそれとなく二人の様子をうかがう。
「………………」
「………………」
方や含みのある悪魔のような笑い顔で、方や天使のような慈愛に満ちた笑みで、その二つの笑顔はお互いの反応をうかがい心理戦をしているように見えた。
「……そうですか、分かりました。今日はこれで失礼します」
しばらくして先に口を開いたのはみー姉のほうだった。
「ん? もう帰るのか?」
「はい」
「しかし、まだ、推理の途中だが?」
「いえ、もういいんです」
「なぜ?」
「先ほども言いましたが私は自分の推測が正しいかどうか確かめに来ただけ、です。用を終え、これ以上はここにとどまる意味はありません」
「…………ほう、ではもうわかったと言うのか?」
「はい、しんちゃんが可愛らしい反応をしてくれたので」
「え……」
みー姉は俺に向かって優しくほほ笑んだ。
(ま、まさか、俺の反応まで見られてたのか……)
気恥しくなって目をそらしてしまう。
てっきり、狭山との心理戦に集中してる物だとばかり思っていた。
「しかし、真相にたどりついたところで決め手となる証拠がありません。それ以前に『何もおこっていない』のですから私にはどうすることもできませんよ」
みー姉はそう言い残して、部室から出て行ってしまった。
「………………」
「…………さて、次の作戦だが」
「おいこら。何事もなかったかのように俺達をまた巻き込もうとするのは止めろ。それにまず色々と説明してもらわなきゃいけないことがあると思うんだが?」
「何の事だかさっぱりだなぁ!!」
「こ、この野郎ぉ……」
頭に上る熱い血の流れを感じる。
「お前! 結局、全部知ってたのかよ!」
「ああ、知っていたが? もとよりすべて俺の作戦通りだったからな」
「……くっ! 開き直りやがった!」
「ふぁっはっはっは!!!」
「…………はぁ」
なんか、もう怒る気も失せた。
こいつに何を言ったところで無駄だ。
最終的にみー姉にも怪我はなかったし、いや、みー姉が無傷だったことも含めてこいつの作戦だったのだろう。
だとすると、今回はもう何も言わなくていいだろう。
「で、次の作戦を説明するからそこのバカをたたき起せ」
「あん?」
狭山に言われてソファに目を移すと、健太がよだれを垂らしながら眠りこけていた。
なんか静かだと思ったら、寝てやがったのか
「おい、こら起きろ……」
俺は健太の肩をゆする。
みー姉と一緒の部屋にいたら緊張するんじゃなかったのかよ。
こいつのバカ面の寝顔は緊張感のかけらも感じない。
大口開けて気持ちよさそうに寝やがって、長かったこの話もそろそろ終わりまで尺もねぇっての……
「むにゃむにゃ……俺達の旅はまだまだつづくじぇ……」
「このタイミングで予想以上にべたな落ちを無理やり詰め込んできやがった!!」
「ちなみに次の作戦で世界征服が完了するから楽しみにしていろ!」
「お前も最後だからって無茶苦茶なこと言ってんじゃねぇ!! ていうか、学園はどうした学園は!!」

――バタン!――

「ご主人さま。さぁ、約束の買い物へ行きましょう」
「は? 雪? お前、何でここに……」
「新井ぃ! 水無月にだけプレゼントするとはどう言うことだ!! わ、私にも……その……」
「もごもご、言ってたって分かりませんよ」
「うるさい!! 許嫁の私にも何かプレゼントするべきだろう!」
「ぎゃ! おいこら、風見山! 何の前触れもなく木刀を振り回すんじゃねぇ!!」
「新井君!! その話、私達にも聞かせてくれないかな! 真弥と言う名の将来のお嫁さんがいながら!!」
「ちょっと、朱里! もういいようぅ……恥ずかしいから止めて」
「わかった! わかったから!! さりげなく、二人して逃げ道をふさぐの止めて!!」
「しんちゃぁあああん!!! 私ったら全然人格入れ替わってくれないから!!」
「ちょッ! みー姉!! 今抱きつかれたら! 当たっちゃう! 木刀がクリーンヒットしちゃうよぉぉおお!!」
「………………なぁ、狭山……起きたらこの状況だったんだが……解説頼む」
「つまり、新井は学園の美少女を制したんだよ」
「ああ……なるほど。うまいな……」
「納得してないで助けてくれぇ!!」

「「断固拒否する!!!」」

「くそぉおお! 最後だけハモんじゃねぇええ!」




こうして、たのしいたのしい『学園制服部』の学園祭は幕を閉じた。






<<<<<< 第十四話
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ご愛読…………していただけたかどうかはわかりませんが長い間付き合ってくださった皆様。

そして、途中からでも最後までお付き合いくださった皆様。

もし、そういうみなみけの春香姉さまのようにやさしい方がいらっしゃったとしたらありがとうございます
(現在視聴中( ・´◞౪◟・`))

まぁ、受験が終わったら短編でも書いていこうかなぁと思っているのですが

とりあえずはしばらく小説更新をお休みさせていただきます。

普通にブログ更新はしていきますが

もし、よかったらコメントなどいただけるとすごくうれしいです(ノ・∀・)ノ =====┻━┻))゚Д゚)・∵.

category: 学園を制し者

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学園を制し者 第十四話 

結局二つに分けることにしました(´°△°`)

なんか、物語もそっちの方がまとまりそうだったので……

今回はかなりシリアス路線を突っ走りましたね

シリアスは……苦手だ……

感想&アドバイス&叱責、コメントしていただけると奇声をあげて町中を走り出すかもしれないぐらい喜びます。




前回の記事の米返は次にまとめさせていただきます<(;゚з゚)> ~♪


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「学園ヒーローレッド!! ただいま参上!!」


俺は今日始めて決めポーズを決めることができた。
うん、何と言うか……ちょっと快感。
「な、なぜだ! なぜ貴様がここに!! 捕まったんじゃなかったのか!?」
「あん?」
島崎はまるで死んだと思われた怪盗が目の前に現れたかのような表情で俺を指さした。
「……くっ! そうか! さっきの報告は……狭山の仕業か!!」
「何のことだよ?」
「貴様には関係のないことだ!」
下唇をかみしめ、それでも発散しきれない怒りを俺に向ける島崎。
「……委員長。落ち着いてください」
そんな島崎を淡々となだめたのは舞台の下でカメラを操作していた男子生徒、腕の腕章を見たところ、どうやら彼は風紀委員副会長のようだ。
「……そ、そうだな」
島崎は深呼吸を数回入れる。
「…………ふぅ……まぁ、いい。どうせ、ただのかく乱作戦だろう」
状況がいまいちつかめないが……
今はそんなことよりも大切なことがあった。
俺はとりあえず最優先事項である舞台上でイスに縛られているみー姉を確認する。
俺と目が合うとみー姉は、俺を心配させまいと思ったのかほほ笑みかけてくれる。
外傷など外見的に傷つけられてはいないようだが、笑顔の節々からは疲労が取って見えた。
さっさと助けてあげないとな……
「みー……じゃなくて、生徒会長を返してもらおうか!」
俺は島崎に向けて言い放った。
「ふ、いいだろう……」
島崎は余裕の笑みを浮かべた。
「ただし、僕に勝つことができたらだけどね!」

――パチン――

島崎が指を一つ鳴らす。
『『『………………』』』
「…………待ち伏せか」
すると、いったいどこに隠れてたのやら三人の男子生徒が現れ、俺の前に立ちふさがった。
三人とも風紀委員の腕章をつけている。
(まぁ、こんな事だろうと思ったがな……)
島崎が、はいどうぞ、と簡単にみー姉を返してくれるとは思っていなかった。
「風紀委員の中でも選りすぐりの人材だ! お前のために用意してやったぞ」
ぱっと見、右の男から身長、180中盤、170後半、170ぐらいであろうか。
三人の男は、体格サイズの比率が大中小と綺麗にそろっていた。
面倒くさいので、ここでは大男、中男、小男と呼ぶことにしよう。
「卑怯です! 正々堂々戦いなさい!!」
三対一と言う状況がみー姉は納得できないのだろう。
なんとか縄をほどこうとしているのか狭山を睨みつけながら身じろぎをしていた。
が、縄はゆるむ気配すら見せない。
そんな、みー姉を横目に島崎は俺に言う。
「では、俺を楽しませてくれよ? 新井弟!!」
――パチン――
島崎は再度、指をならした。
どうやらそれが合図だったようで、三人が俺に襲いかかってくる。
俺は迎え撃つために体制を整え、構えをとった。
一人目、先陣を切って俺に突っ込んできたのは大男だ。
『喰らえぇ!!』
大男のフォームがでたらめな空気を巻き取るような大振りのパンチ。
「……ッ!」
俺はそれを屈んで避け
「はぁ!!」
立ち上がりざまに相手の懐へもぐり込み鳩尾に肘を一撃叩きこむ。
『ぐほぉッ!』
俺の肘打ちが見事にクリーンヒットした大男は後ろに倒れ込んだ。
『う、うぎゃッ!』
倒れこむ大男に巻き込こまれ後ろから来ていた小男が下敷きになる。
狙ってたわけじゃないが一石二鳥だ。
『……く、くそがぁ!!』
そんな二人をみて焦ったのか、中男は体制の悪い状態で俺の頭部めがけて右ハイキックしようとする。
しかし、そんな力の乗っていないハイキックなど俺に通用するはずもない。
俺は左手で相手の足を受け止め、そのまま体を90度反転
『うぉああ!!』
相手の足を一本背負いする要領で投げ飛ばした。

――ドスーン――

『ッ……てて……ッ!』
「…………ふぅ……」
三人が周りで一時的に行動不能になっているのを確認した俺は、一息ついてから構えを解いた。
かれこれ2年ほど鍛錬をしてなかったのだが体は覚えているものだ。
と、俺は内心でそう感心する。
(今はそれよりも……)
俺は各箇所を抑えながらうずくまっている三人に再度目を向けた。
(……素人か?)
三人とも体捌きが悪すぎる。
どうみても場馴れしていない、戦い方の知らない者の動きだ。
パンチ、一つにしてもそうだが適当に振りまわしているだけじゃ力は乗らない。
いや、それ以前に……

――パチ、パチ、パチ――

「エクセレント!!」
俺の思考を中断させたのは、島崎のまるで道化師を小馬鹿にするような拍手だった。
余裕のつもりなのか舞台上から降りてくる。
「風見山流剣術……剣がなければ何もできないのかと思えば、なかなかやるねぇ」
「……そりゃどうも」
俺がやっていたのは【剣道】ではなく【剣術】だ。
柔術を基礎とした剣を失った時の型も存在する。
もちろん、多一で囲まれた時の対処法もだ。
「まぁ、君が強いのもあるだろうが……」
島崎は笑顔のままで、鳩尾をおさえ、うずくまってせき込んでる大男に近づく。
――ガツッ!――
「貴様らはなぜ本気で戦わんのだ?」
「なッ!」
何を思ったか、島崎はいきなり大男の顔面を蹴飛ばしたのだ。
『うげッ! ゴホッ! ゴホッ! ゴホッ!』
完全に不意打ちだったようで、島崎よりも二回りほど大きい大男は難なく蹴飛ばされる。
『……い、委員長!』
それを見た中男と小男が、とっさに島崎と大男の間に割って入った。
『いくらなんでも……やりすぎです!』
小男が大男を気遣い、中男は島崎に抗議しにかかる。
『我々は【風紀委員】ですよ! 多数で一人を攻めるなんて…………不正をただすのが我らの役目ではないのですか!』
どうやら、彼らに風紀委員も三対一である引け目はあったようだ。
もしかしたら、風紀委員の大半は島崎に無理やり従わされてるだけなのかもしれない。
「………………」
しかし、島崎はそんな三人を冷たく見下した。
「だから何だと言うんだ?」
『は?』
「ずるい? 酷い? 卑しい? 卑怯? くっく……そんな物は生きて行くうちで何の意味も持たない言葉だよ」
『………………』
「それらは、敗者が勝者を妬む言葉。力ない者が力ある者を妬む言葉。まぁ、ようは勝てばいいのだよ、勝てば。結局、一番利益を受けようと思うなら勝利するしかないのだからね」
『し、しかし……』
「確か……君たち三人の親は全員TONYで働いてたよね?」
『はい? え、ええ……まぁ……』
唐突な島崎の質問で、戸惑い気味に首肯する中男。
「例えば、僕がお父さんに頼めば、君たち三人の親は即刻クビだろうねぇ。くっく……」
『そ、そんな……』
「お前ッ!!」
「なんだ? 新井弟? 君には関係のない話だろ」
お前にいったい何ができる? そう、問いかけるような島崎の目。
「ちっ!……」
無力な自分が口惜しい。
そんな俺を見て満足したのか島崎は話を続けた。
「いいんだよ? 僕としては、君たち三人の親が無職になっても」
島崎は、三人にあくどく歪んだ笑みで試すように問いかける。
「さぁ! どうするんだ? ここで、新井弟を叩きつぶすか。 それとも家族全員で路頭に迷うか……選びたまえ!!」
『『『………………』』』
選べと言われたとことで、最初から選択肢など一つしかない。
そんなことは誰もがわかる。
俺は、三人を迎え撃つために再び構えをとった。
『………………う、うぁぁあああ!!!』
真っ先に動いたのは大男だ。
続くように、残り二人も俺に向かってくる。       
「……くっ!」
しゃにむに迫ってくる三人。
先ほどよりも、もっとでたらめで無駄に力のこもった猛攻だ。
「……くっそ……」
パンチを防いだかと思えばキックが飛んでくる、キックを処理すれば今度は掴みかかってる、掴みかかってくる手を弾いたら……と続いていき終わりが見えない。
反撃しようにも、ガードで精一杯だ。
「………………」
(このままじゃ……じり貧だ……)
体力勝負で三対一、俺の敗北は目に見えている。
さらに、防御でマヒした腕の痛みと一緒に、思考力まで落ちてきているのがわかった。
(一か八か……勝負に出るか……?)
防御を一次的に放棄して、三人の間を無理やり突破し。
そして、島崎に特攻をかけ、全力の一撃をたたき込む。
(……いけるか?)
少々無茶なやりな作戦だが、周りが見えていない三人の隙をつけば何とかなるかもしれない。
いや、迷っている暇はないだろう。
(やるしかない!)
俺は弱気な自分を振り払う。
俺は、三人の包囲網を突破するため体制を低くしようとして……

「しんちゃん!! 危ない!!」

みー姉の声が届いたときはすでに遅かった。

――バチィッ!――

「ガッ!?!?」
背筋を走る電撃のような嫌な予感。
(……四…にん……め……か……!?)

無様に、地面に叩きつけられた俺の視界はゆっくりと暗くなっていった。




●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●



「しんちゃん!! 危ない!!」

――バチィッ!――

私が注意した時にはすでに遅かった。
――ドシャッ!――
「きゃ!」
弟が地面にたたきつけられるのに、思わず目をそらしてしまう。
ゆっくりと開いた私の目に映ったのはうつ伏せになって倒れている弟の姿だった。
「くっはっはっは! はぁっはっはっはっ!!」
「しんちゃん……」
島崎の笑いは雨のようにその場にいる全員の気分を盛り下げて行く。
「市販のスタンガンだ。少々、型番は古い物だが……3時間はまともに動けないだろうね」
しんちゃんに使ったのと同じ機種の物なのだろうか。
島崎君は懐からスタンガンを取り出して手でもてあそんでいた。
「君はよく、楽しませてくれたよ、新井弟。でも、ゲームオーバー……僕の勝ちだ」
すでに、しんちゃんには島崎君の声は聞こえていないのだろう。
ピクリとも動く気配がない。
しかし、そんなしんちゃんに対して島崎は、
「起きられると困るからね。念には念を入れて……」
「なッ! 止めなさい!」
――バチィッ!――
さらにスタンガンを押し付けたのだ。
「止めて! しんちゃんはもう無抵抗です! これ以上傷つけないでください!」
――バチィッ! バチィッ! バチィッ!――
「止めなさい! 止めなさい!」
私は縄が食い込み体が痛むのを無視して必死にもがく。
しかし、私の力では縄を少し軋ますのがやっとだった。
島崎君は数回スタンガンを押し付けたあと、
「うーん……飽きたな……趣向を変えよう」
そうぼやいてから、今度はしんちゃんを蹴り倒し始めた。
――ガスッ! ガスッ!――
まるでおもちゃで遊ぶ子供のように島崎君はしんちゃんを踏みつけ、蹴り上げる。
実際、しんちゃんを傷つけることで、私の反応を見て楽しんでいるのだろう。
それがわかっていても私には叫ばずには居られなかった。
私が捕まってしまったばっかりに、痛めつけられる弟のために。
「くっくっはぁっはっはっはぁ!!」
「止めて……止めて……」
やがて、声すらも出てこなくなる。
必死に声を振り絞ろうとするが、胸の奥からこみ上げてくる涙がそれを邪魔するのだ。
「止め……なさい……」
「何だい? そんなに命令されるともっと弟を傷つけたくなってくるよ」
「……止めてください……お願いします」
「それだけかい? 」
わかっているのだろう?と私をあおる。
「…………わかりました。生徒会長の権限を譲りましょう」
そんな物はしんちゃんに比べたら無価値に等しい。
「で? まだ肝心な言葉を聞いていないと思うんだが?」
「………………」
嫌だ! 絶対に嫌だ!と、吐き気とめまいで、私の体が島崎君を拒絶しているのがわかる。
しかし、
「…………分かりました…………貴方と……婚約します」
私はこれ以上弟が傷つく姿を見ていたくはなかった。
「ふ、それでいい」
私の答えを聞いて満足したのか、島崎はようやくしんちゃんから足をどけた。
「では、さっそく。生徒たちへの報告をしようではないか!」
そう言って、舞台上まで上がってきた島崎君は私のイスの縄をほどいた。
完全にはほどく気はないらしく、手はカメラから見えないであろう後ろで縛られたままだ。
「可愛いよ、美羽」
「…………くっ!」
「くっく……いい顔だ」
一瞬、噛みついてやろうかとも思ったが、止めた。
そんなことをすれば、島崎は更にしんちゃんを傷つけるだろう。
「副委員長! カメラの準備はできているのか?」
「はい。すべてセットし終わってます」
「ライトのセットは……これでOKだな……」
上機嫌に準備に取り掛かる島崎君。
どうやら、副委員長があらかたの準備を整えていたようだ。
特に問題のないことを舞台上から目で確認した島崎君は、満足そうにうなずいた。
「では、始めようではないか」
そして、島崎君が両手を広げた……
その時だった。

――『はて? いったい何を始める気なのだ?』――

「なッ!」
体育館のスピーカーから明らかにここにいない者、島崎君の味方でないものの声がした。
『どうしたのだ島崎? そんなに驚いた顔をして』
声の主は楽しげに鼻を鳴らす。
「だ、誰だ……!!」
『俺が誰か、だって?』
いちいち、もったいぶるような喋り、私はこの声に聞き覚えがあった。
「さ……やま君?」
『ふぁっはっはっはっは! 我が名は学園ヒーローブラック! いずれ、学園を制す者だ!!』
体育館に悪魔の笑いがこだました。
「今更、出てきて何だと言うんだ! すでに放送の準備は整っている。チェックメイトなんだよ!」
『チェックメイト? ああ、確かにチェックメイトだな……ただし! こちら側の勝利でね』
「くっく……強がりはよせ」
見苦しいぞ、と島崎君は付け加える。
確かに、しんちゃんは動けないし、狭山君も彼自身がここにいないのであれば何もできない。
状況だけみれば完全にしんちゃん達の負けだ。
しかし、狭山君は引き下がらなかった。
『…………まだ気づかないのか?』
「な、何がだ」
『カメラはずっとお前を捕らえ続けていたこと、そして、俺がいったいどこから喋っているのかを……だよ』 
「ど、どういうことだ!」
『はぁ……そこから説明してやらねばならんのか……』
狭山君はあきれた吐息をスピーカーから漏らす。
『校庭のビックスクリーンに放送を流すためには一度、放送室まで繋ぎ、そこからビックスクリーンへと経由させなければいけない。お前もそれを知っているから放送室に部下を配置していたのだろう? だから俺はここを制圧させてもらったのだ!!』
島崎君は、それにな……と話を続ける。
『すでに放送の準備は整っている、ではない! すでにヒーローショーは始まっていたのだ!!』
「ま、まさか……」
『ふ、そのまさかだよ。お前の行動は、最初からすべて校庭のビックスクリーンで流れていたのだ』
「どういうことだ! 副委員長!!」
島崎は副会長を睨みつける。
カメラを操作していたのは彼だ。
「それが狭山様からの命令でしたから」
島崎君の怒号も涼しげな顔で聞き流し、カメラを島崎に向け続ける副委員長。
彼の無愛想な顔がここで初めてゆるんだ。
「貴様! 裏切ったのかぁ!」
『裏切り? ノンノン……』
副委員長の代わりに答えたのは狭山君だ。
『彼は最初からお前の味方ではない! 俺が風紀委員に送った【二人目】のスパイだよ!』
「なん……だと……」
『一人捕まえたと思って安心し伏兵の可能性を考えない、そして、捕まえたスパイから喜々として情報を聞き出す。それが掴まされている情報とも知らずに……な。ふ、これだから無能は……』
「ぐぅ!」
島崎君の青筋は今にも血を噴き出しそうにピクピクと動いている。
『まぁ、生徒たちはこの映像を演劇部の何かと勘違いしているようだが、貴様のイメージダウンは避けられないだろうな。それに、生徒会長の座を狙っている奴もそれなりの数はいるだろう。俺の予想では貴様が就任したとしてもすぐに不信任案が出される』
感覚で生きる生徒が多いこの学校だ、悪いイメージの付いた生徒会長には容赦なく不信任の票を入れるだろう。
「く……くそぉ!」
島崎君はひざと拳を地面にたたきつける。
『島崎……お前の負けだ!』
「………………」
狭山君の勝利宣言を聞きながら、がっくしと力尽きてうなだれる島崎君。
私は肩口で涙をぬぐう。
今回ばかりは彼ら『学園征服部』に感謝しなければいけないかもしれない。
これですべて終わった、誰もがそう思っていた。
しかし、次の瞬間
「く……くっくっ……はぁっはっは!!」
『……何がおかしい?』
島崎君が気が狂ったように、不気味に笑い始めたのだ。
私はホントに気が狂ってしまったのではないかと少々心配になる。
「もう、いい……もう、なんでもいい!! 最初からこうすればよかったんだ!!」
――パチン――
島崎君が指を鳴らす。
すると、先ほどとはまた違った風紀委員の生徒が、計8人ほど体育館内に集まってきた。
そんな彼らに島崎君は命令を下す。
「お前ら! 新井弟を素っ裸にして校舎屋上からつりさげてこい!!」
「そんな! 貴方はもう負けたのです。そんなことをしていったい何の意味があると言うのですか!」
「うるさい! 僕はまだ負けていない!!」
「………………」
私は核心した。
気が動転して冷静な判断が出来なくなっている。
もう、彼はカメラがまわっていることですら忘れてしまっているのだろう。
風紀委員たちもどうしていいのかわからないのかお互いの顔を見合せていたが。
「さっさと動け!! お前らの親が全員TONYで働いているのは知っているのだ。そう言う風に風紀委員の中から選抜したのだ。逆らったらどうなるかわっているだろうな!!」
『『『……ッ!』』』
(……まずい!)
島崎君のこの一言で明らかに風紀委員たちの目の色が変わった。
(このままでは……しんちゃんが……)
「いい加減にしなさい!」
私も精一杯の抵抗を試みるが、
「黙れ!」
「きゃ!」
両手を縛られてしまっている私はあっけなく頬をはたき飛ばされた。
「お前も二、三発、ここで犯してやる! そうすれば少しは静かになるだろ!」
「私はどうなってもかまいません! だからしんちゃん……しんちゃんだけにはこれ以上手を出さないで……」
「知ったことか!」
しかし、そんな私の懇願は一蹴されてしまった。
「どうだ、狭山!! 放送室にいる貴様にはどうしようもないだろう? ああ、教師もあてにするなよ! この学園の理事は僕のお父さんなんだから! 誰も僕には逆らえない」
『………………』
「どうした! 声も出ないのか!」
狭山君は答えない。
もう、どうすることもできないのか、諦めるしかないのか。
私がそう思い始めた時、ようやく。
『島崎はヒーローの定義を知っているか?』
狭山君はそう切り出した。
「は? 何をわけのわからんことを……」
『正義を貫く者? 悪を滅ぼす者? ふん! そんな物はヒーローでも何でもない。現実世界で正義を語っている奴に限ってろくな奴がいないからな』
「時間稼ぎか……悪いがその手にはのら……」
『では、ヒーローとは何か?』
島崎は言葉を続けることができなかった。
それは、狭山君が彼の言葉を遮ったからではない。
狭山君以外全員、あり得ない光景にかたまってしまっているのだ。
その光景とは……

「ッ!……ってぇなぁ!」

ヒーローが動いたのだ。
『ヒーロー。それは、女の子のピンチに何度でも立ち上がるバカのことだよ!』
「そんな! あり得ない!」
膝に手をつき、よろめきながらもゆっくりと、しかしながら、しっかりと……
「ん? 今、喋ってんのは、狭山か? ちょうどいい。ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
ヒーローは立ち上る。

「なぁ、狭山……みー姉を泣かせたのはどいつだ?」

ヒーローは怒っていた。
声色だけなら冷静にすら聞こえるが、確実に重い怒気を放っていた。
「あり得ない……どうして動けるんだぁ!」
「……お前か? みー姉を傷つけたのは?」
ヒーローは壇上の悪役を睨みつける。
実際はマスクをかぶっているので睨みつけたように見えただけだ。
「ひっ!」
しかし、それだけで悪役は気押され数歩後ずさった。
「そうか、お前か……」
どうやらヒーローはそれを肯定と取ったようだ。
「……覚悟しろよ!」
ヒーローは悪役に向けて駆け始める。
「な、何をやっている! お前ら! さっさとそいつを取り押さえろ! そいつを取り押さえることができらたお前らの、親の出世をお父さんに進言してもいい!!」
『『『『う、うぉぉおおおお!!!』』』』
悪役の命令で、何としてでも止めようと三下達が群がった。
しかし、

――ドカッ!――
『ギャッ!』

――メキッ!――
『グゲッ!』

――ガッ!――
『アベシッ!』

「お……おい……おいおいおい!」


――べキッ!――
『アンッ!』

――グキッ!――
『グヘッ!』

「なんで! なんで! なんでだよぉ!!」

――ドスッ!――
『二ギェッ!』

「相手はたったの一人だろうがぁあ!!」
誰も怒ったヒーローを止めることができなかったのだ。
あるものは跳ね飛ばされ、あるものは殴り飛ばされ、あるものは蹴り飛ばされる。
マスクを激しくなびかせて、暴れ馬のような勢いで敵を蹴散らしてくる。
そして、ようやく……
――ザッ!――
「………………」
ヒーローは舞台上に立った。
その姿は堂々と凛々しく、まさにヒーローという名がふさわしい。
(ああ……しんちゃん……)
私はこれほどまでに弟を頼もしいと思ったこれは今までなかった。
「く、来るなぁ!!」
――バチィッ! バチィッ!――
悪役はとっさにスタンガンをちらつかせるが
「しゃらくせぇ!!」
そんな、おもちゃではヒーローひるませることすらかなわなかったのだ。
ヒーローは何の迷いもなく悪役と距離を詰めて行く。
「来るな! 来るなぁああああ!!」
そして、悪役の叫びも空しく……

「これで、終わりだぁぁああああ!!!!」

――バキッ!!!――

しんちゃんのパンチは正確に島崎君の顎を貫いた。




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シリアスは苦手です..._φ(゚∀゚ )アヒャ

………………なんか、テンポがつかめなくてうまくまとまらない。

これでもかなりまとめた方なんですが、私の実力ではこれが精一杯orz

それに、うまく盛り上がらない。

誰か!!  

血がたぎるような熱いストーリーの書き方を教えてください(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ

描写力も足りないなぁ……





次の話で最後になりますが……

この話で見捨てないで、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


あ、あと、島崎の証言にも若干矛盾がありますが……できればスルーしていただけると、一応予定通りなので……


category: 学園を制し者

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