Admin New entry Up load All archives

某人の趣味丸出し日記

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

CM: -- TB: --   

学園を制し者 第十五話 最終回(仮) 

長かったこの話も今回で最終回です( ・´◞౪◟・`)

まぁ、たらたら書いてたので遅くなったのですが

本来なら一ヵ月ちょいぐらいでかける量だと思います。

私じゃなかったらもうちょっと早いかもですね⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡

され、プロットもなく書き始めてもう……確か3月ぐらいからだったから半年近くですねww

どんだけ時間をかけてんだって話です♪~ (゜ε゜( )ピーピープー

多分、MF文庫の単行本一冊ぐらいはあると思いますが

うーん、どうせだったら九月三十一日のやつに応募してみようかなぁ……

まぁ、その話はいいとして

では、あんまし長くなるのもあれなのでもしよかったら、

ラストも読んで感想やアドバイスなどいただけるとすごく嬉しいです(^^ゞ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うぁ……さびぃ……」
健太は部室に入るなりそう言ってエアコンの電源を入れた。
10月もすでに後半、昨日の作ったばかりのまだ熱をもつ顔の傷が秋風に沁みる。

――明日、学園祭の反省会を行う。AM.10:00、部室に来られたし

狭山からこんなメールが届いていたのは昨日の晩だ。
しかし、疲労で爆睡していた俺がこのメールを見たのは翌日の8時、つまり、つい2時間ほど前のことである。
健太からの『学園へ一緒に行こう』という誘いのメールが無ければ、今も家で爆睡していたところだろう。
ちなみに狭山からのメールには、昨日の『生徒会長誘拐事件』のまで簡略化して書かれていた。
生徒会長誘拐事件の『真相』を知った生徒会は風見山を中心として、ただちに自体を収集。
そのおかげか、生徒たちまでにこの誘拐事件が知れ渡ることはなかった。
ビックスクリーンで映された映像は 俺達『生徒学園ライフ支援同好会』の作品ということで処理されるらしい。
つまり、今回島崎が起こした一連の事件はすべて『なかったこと』になるのだ。
きっと、問題が公になるのを恐れた学園長の指示なのだろう。
それにこの対応はもっと『たくさんの人にとって』ベストなものなのだった。
しかし、さすがに島崎自信はおとがめなしと言うわけにもいかずしばらくは停学処分となるようだ。
風紀委員会も解体、その一部は生徒会に吸収されるらしい。
「…………意外と集まってるもんなんだなぁ。片付けとか嫌いそうな奴らばっかなのに」
ぼんやりとそう呟いた健太は、文化部部室棟二階にある『生徒学園ライフ支援同好会』の窓からグラウンドを見下ろした。
本来は学園祭後日で休暇となっているはずの今日。
しかし、グラウンドには祭りの残骸を片付けるため、多くの融資である生徒達が集まって来ていたのだ。
「そういや、あの後どうなったんだ?」
ふと、健太は振り返る。
「……? 何が?」
「何がって……島崎の野郎を殴り飛ばしたんだろ? その後だよ」
「ああ……あの後か……」
よく考えれば、昨日あんなことがあったと言うのに健太とそのことについて全く話してなかった。
学園に向かう途中もたわいのない話しで暇を潰していたし。
「で?」
健太は部室内にあるソファーに体を投げ出すようにして座る。
狭山あたりから多少の話は聞いていたのだろうか、それとも直接スクリーンを見ていたのかもしれない。
「………………」
つい昨日起こったことを思い出すだけであるのに、まるで誰にでもあるような中学時代の黒歴史を思い出すかのような気分にとらわれ、この苦い記憶を何と説明したものかと口の中で転がした。
正直、今回の結末は本当になんの面白みもない、しごくしようもない物なのだ。
そのくせ、説明するとなると、なかなかどうして面倒くさい。
「それより、お前は昨日どうしてたんだ?」
俺は頭の中を再び整理する時間稼ぎと、単純な好奇心で健太に尋ねた。
「あん? 俺か? 俺はだな……」
きっと、俺と俺の姉のために散々走り回ってくれたであろう。
迷惑をかけたんだし、ジュースでも奢って……
「ナンパしてた!」
「………………」
「いやー! なんか、追手が少なくなったと思ったら、急に誰も追ってこなくなってさぁ……ビックスクリーンの方で何かあったらしくてそっちへ行ったみたいなんだけど、いちいち近づいてまた追われるのも嫌だったしとぼとぼとグラウンド避けながら歩いてたんだ。 すると、目の前に他校の制服を着た可愛い娘が歩いててな! これはもう喋りかけるしかねぇじゃん! そしたら、演劇見ましたよ!ってやたらとマスクに反応して……」
「………………」
今だ興奮気味に話す健太を横目に俺は心の中の財布のひもを強く結び直す。
「メールアドレスまで交換してくれたぜ! 後でレッドの人のアドレスを教えてくれって言われたけどお前の知り合いだったの……………………てっ! 俺のことはどうでもいいんだよ!」 
ようやく、俺の冷たい目線に気づいたのだろう。取り繕うようにして健太は話を元に戻す。
まぁ、俺としてもこいつの自慢話など聞いていてもつまらないだけなので余計な口ははさまない。
「まさか、生徒会長がマジでお嫁に行くとかじゃないだろうな!!」
健太が鼻息荒く対面に座っていた俺に詰め寄ってきた。
「あー、うざい! うざい!」
鬱陶しいので手で軽く払って座り直させる。
「結論から言うとだな、みー姉がお嫁に行くこともないし、学園を止めることもない」
「本当か!!」
「ああ、嘘じゃない」
「良かった! 本当に、良かった!」
しばらく、興奮気味にガツポーズしていた健太だが、その動きがピタリと止まった。
「……しかし、意外だよな」
「意外?」
「だってさぁ……あの、浦島だっけ?」
「島崎だ」
いい加減名前ぐらい覚えてやれよ。
「そうそう、それ。 ちょっと話しただけだけどさ、雰囲気的に約束を守る奴だと思えねぇんだよ」
らしくもなく腕を組んで考えこみ始める。
どうやら健太は島崎が約束を守ってみー姉から手を引いたのだと思っているようだが
「あー……そうじゃないんだなぁ……これが」
「どういう意味だよ?」
「実際、俺も島崎が素直に約束を守ると思ってなかったよ。だから、親父の目を覚まさすために、昨日、島崎をぶっ飛ばしたその足で親父の会社に殴りこんだんだ」
「へー、それで? どうなったんだ?」
「何の事だか分からん、とかぬかしやがった親父と血みどろの殴り合いになったよ」
ヒーローマスクを着けていたのに顔に傷があるのはそのせいである。
「そしたら、会社に島崎の親父とやらから直接電話があったんだよ。『バカな息子が先走って、申し訳ない。責任はきっちり息子に取らせるから経営統合の話はなしにしないでくれ』って謝罪の電話がな」
「はぁ? 何で? なしにしないでくれってのはおかしくないか? 島崎の親の方が立場が上なんじゃねぇの?」
「それが……」
「つまりはすべて『勘違い』だったと言うわけだよ!」
俺の言葉を奪い取るようにそう言ったのは……
「ふっはっはぁ! 待たせたかな」
「……狭山……お前は普通に登場が出来ないのか」
こいつ窓から入ってきやがった……
「細かいことは気にするな!!」
細かいことなのだろうか。
確か、健太が窓の外を見ていた時はカギが閉まっていた気がするし、それ以前にここは二階である。
(どうやってよじ登ってきたんだよ。普通に階段使った方が楽だろうに……)
しかし、狭山は俺の心の中のツッコミなどお構いなしに狭山は話を進める。
「すべては島崎の勘違い。この喜劇はそこから始まった……」
無駄に演技っぽいのはこいつのデフォな喋り方だ。
「勘違いってどういうことだよ?」
健太は首をかしげる。
「端的に言えば、今回の経営統合、最初に話を持ちかけたのはTONYの方からだった、親会社はTONYではなく新井コーポレーションの方で、しかも、婚約の話も島崎家側からの提案だったらしい。家族間の関係をより強い物にしておくためだとか……まぁ、本音は、『新井 美羽』を自分の娘とすることで少しだけでも自分の立場をよくしようとしただけなのだろうがな」
「じゃあ……」
「そう、それを勘違いして全く逆の立場だと思い込んだ島崎は今回のような行動に出た。基本的に人を下に見るような奴だからな。この機会にこの学園のトップである生徒会長になりたかったのだろう」
後で親父に聞いたところ、もちろん婚約の話は鼻で笑い飛ばしたそうだ。
「……って、ことは……」
ようやく物語の真相にたどりついたのであろう、健太はわなわなと体を震わせる。
「そう、昨日我々が必死で勝ちとった勝利や行動は最初からすべてが無意味。つまり『喜劇』だったと言うわけだ」
「うがぁあああ!!!」
健太はソファーに突っ伏した。
「……おい、いかにも残念そうにしてるが、お前ナンパしてたんだろ?」
「うっ!……」
ソファーでのどの奥に魚の骨が刺さったかのようにうめき声を上げた健太。
(……ったく、こいつは……)
調子のいい奴である。
「でもよぉ……結局そんなしょうもない落ちかよ……」
「まぁ、そんなものだ。おとぎ話のように楽しい終わり方なんてものは、世の中に早々出回ってない。結局のところそのしょうものない終わりの積み重ねが、人生なんだよ」
「つか、どうでもいいが狭山。何でそんなこと知ってんだよ……」
本来、経営統合自体、世間ではまだ知られていない極秘的な情報なのだ。
「最初から何かおかしいと思ってたのだ。経営状況が悪かったのはどうみてもTONYの方だったからな……しかし、TONYは新井コーポーレーションが手につけていなかった事業をいくつか持っていた。事業を拡大したかった新井コーポレーションにとってTONYは多少のリスクあるにしても優良物件だったわけだ」
お互いの利害が一致したわけだな、と一人納得するようにうなずく狭山。
「……いやだから、何でそんなこと知ってんだよ」
「ひぃみぃつ!❤」
「きめぇよ!! 低い声でハートマークとか付けんじゃねぇ!!」
胃の奥からこみ上げてくる吐き気を何とか飲み込む。
「ふっはっはっは!! そんなに嫌がれると、傷つくではないか!!」
「嘘つけ!」
こいつの精神はダイヤモンドカッターで削ったって傷つかない、そう確信した俺であった。
「まぁ、俺の情報ソースについては企業秘密だ」
「そう言うだろうと思ったけど……」
「なら、もうこの話はいいただろう。それよりも来客だ」
「来客?」
「うむ、お前の姉だよ」
狭山は俺を一瞥すると部室の扉に目を向けた。

――コンコン――

計ったかのようなタイミングでドアが控え目にノックされる。
「入るがいい!」
狭山のふんぞり返った態度を気にしないとでも言うように、丁寧にドアが開かれた。
「……失礼します」
鼻をくすぐるような甘い花の香りと、優しく包み込むような声。
「おはようございます、狭山君、六車君、そしてしんちゃん」
「……みー姉」
みー姉は俺に優しくほほ笑んだ。
雰囲気からして、『生徒会長モード』のみー姉だろう。
彼女は大きめの茶封筒を脇に抱えていた。
「しかし、これはこれは二年連続で生徒会長を務めるような才女が、こんな辛気臭い所になにかご用かな?」
いつかと同じような台詞でみー姉を迎え入れた狭山。
「ええ、用件が二つほどありまして……まぁでも、その前に……」
と、みー姉は俺達に向かって深々と頭を下げた。
「昨日は、助けていただきありがとうございました」
「昨日? いったい何の話をしているのだ?」
とぼけてみせる狭山。
「いえ、私はあなた達ヒーローに救われた。礼を言うぐらいはさせてください」
何を言っているのか分からんな、と呟きながらもやぶさかでもなさそうな狭山。
健太も照れたように頬を引っ掻いていた。
たっぷり、30秒ぐらいだったのだろうか、みー姉はゆっくりと頭を上げてこう続けた。
「だた……少し気になることっといいますか、今日は自分の推測が正しいかどうか確かめに来たのです」
「ふむ? 気になること」
「ええ、それが要件の一つめなのですが……」
「……?」
何だろう。
いつも笑みを絶やさない生徒会長であるみー姉は、すごく真剣な表情だ。
「もう一度言っておきましょう。これは私の推測です。そして、あなた達を『学園征服部』だと仮定してお話しましょう」
みー姉はそう言って一呼吸置く。
そして……
「今回の一通りの事件、すべての黒幕は学園ヒーローブラック、いえ、狭山君あなたですね?」
みー姉は核心めいたようにそう言った。
その二つの瞳はしっかりを狭山をとらえている。
「……ほう」
対する狭山は心底楽しそうに頬を歪めるだけ。余裕そうな態度だ。
「く、黒幕って……?」
一番混乱していたのはソファーからずり落ちそうになった健太だった。
「………………」
(狭山が……黒幕……?)
かくいう俺も内心では結構動揺していた。
「そう思った根拠は?」
「……状況証拠です」
みー姉は茶封筒を腰で抱えるようにして体の前で手を組んだ。。
「まずは、今回の事件を自分でよくよく考えてみたんです。そして、思いました……なぜ、二人ものスパイを風紀委員に配置しておきながらもブラックは島崎君の作戦に気が付けなかったのか?」
「………………」
(確かにそうだ……)
しかも、風紀委員の一人は副委員長だったのだと言うのだから島崎の動きを掴んでいない方が逆に不思議でさえある。
「それだけではありません。今回、最終的に利益を得たのも学園ヒーロー側でした」
「どういうことだ?」
俺はみー姉に問いかける。
「しんちゃんは風紀委員が解体されたことは知っていますね?」
「ああ」
「では、解体された風紀委員の一部生徒会に吸収されたことも?」
「知ってる」
全部、狭山からのメールに書いてあったことだ。
「生徒会に吸収された風紀委員は約半数。風紀委員がなくなった時点ですでに学園ヒーローにとっての利益がありますが……では、もう、半分。残りの風紀委員はどうなったと思いますか?」
「…………さぁ?」
そこまでは、さすがの狭山のメールにも書かれていなかった。
何気なく書いてあったことだし意識すらしていなかった。
「それがどうかしたのか?」
「………………」
みー姉の瞳は再び狭山に向けられていた。
「全員、『生徒学園ライフ支援同好会』に入部したのですよ。そして、このたび定員を満たした『生徒学園ライフ支援同好会』は本日付で『生徒学園ライフ支援部』へと名前を変えたのです」
「「はぁ!?」」
ほとんど同時に素っ頓狂な声を上げたのは健太と俺だった。
当然だ、狭山からそんな話は一言も聞いていなかったからだ。
抗議の目線は狭山へと向かう。
「……む? 言ってなかったか?」
「初耳だ!」
「ふっはっはっは! すまんな、部員が増えたのが昨日、新期部活動立ち上げの書類を提出したのも昨日なのだ! 少々連絡が遅れてしまった」
「昨日って……ずいぶんと急だな……」
狭山は少しも悪びれず俺達を笑い飛ばしやがった。
頼むから俺達に関わることは一言ぐらい相談してくれよ……
「というか、部活動って……顧問の先生とか必要ないのか?」
健太が珍しくもっともらしい質問をした。
「もちろん必要なのです」
「てことは、何か? もしかして顧問も決まったのか?」
「いや、そうではない」
狭山は腕を組む。
「どういう意味だよ?」
「『生徒学園ライフ支援部』のような文化部で専門の知識が必要なさそうな部活の場合は二年国語教諭の山西先生が兼任することになっているんです」
みー姉は、まぁ、吹奏楽部のような部活にはきちんとした顧問が付いていますが、と付け足す。
「で、もしかしてその袋は昨日俺が提出したものかな?」
狭山はみー姉の茶封筒を顎でしゃくった。
「……はい」
みー姉はほんの少しだけ茶封筒を抱える手に力を込める。
「これを提出されたときにも聞きましたが。本当に貴方が手八丁口八丁で騙して、無理やり入部させたわけではないのですね?」
「人聞きの悪いことを言うな! 俺はただ入部したい、という彼らの意思を組んだだけだよ」
「…………まぁ、いいでしょう。これが生徒会で判を押した入部届けと、部活動の許可証です」
みー姉は狭山に茶封筒を手渡した。
「ふ、確かに。しかし、流石は才色兼備で有名な生徒会長様。昨日はあんなことがあったと言うのにお仕事が速い」
みー姉から茶封筒を受け取った島崎は一度中身を確認してから懐にしまった。
茶封筒が折れ曲がりもせずに、吸い込まれるように懐に入って行ったのには絶対にツッコマない。
ツッコマないんだからね!!
「さて、要件のもう一つが終わったところで話を戻しましょう」
「うむ、名推理の途中だったな」
「はい、ここで一つ確認というか質問なのですが……」
狭山が茶化しをいれるが、みー姉は特に気にした様子を見せない。
「狭山君、昨日、7時15分、貴方はどこで何をしていましたか?」
「7時15分?」
「はい」
「ふむ……」
狭山は考えこむように顎に手をやる。
7時15分と言えば、 朝の『アラームニュースTV』の今日のぬいぐるみのコーナーが始まる時間。
つまり、みー姉が誘拐された時間である。
「…………ん?」
(7時15分……?)
俺はこの7時15分という数字に妙な違和感を感じた。
何か異物がのどの奥にとどまっている、飲み込めそうで飲み込めない、そんな感覚だ。
「さぁてな、部室にいた気がするが。そこまで詳しくは覚えていない」
「アリバイ証明はできますか? しんちゃん達と一緒にいたとか」
「出来ん。なぜそんなことを聞くのだ? 何のかまかけは知らんが……」
「もしかしたら、貴方は私の誘拐された現場を見ていたかもしれないと思ったんです」
「そんなわけがなかろう」
「私が知っているかぎり、貴方は学園内の生徒の中で最も疑り深い人です。もし、あなたが黒幕だったら、本当にきちんと私が誘拐されたかどうか確認するでしょう?」
「……さぁな、俺は黒幕ではないから分からんよ」
狭山はちょっと肩をすくませてそう答えた。
その表情からは真実はどうなのか読み取ることはできない。
(でも……)
確かに、本当にこいつが黒幕だったとしたら、たぶんみー姉が誘拐されるところをしっかりと確認していただろ……
「…………あ」
喉でつっかえていた違和感が溶けだし、跡形もなく消え去った。
なぜなら、俺はここでようやっとこの違和感の正体に気が付いたのだ。
(……思い出した)
そう、俺は思い出していた。狭山の過去に言っていた言葉を……

『生徒会長が誘拐されたのは、今から1時間前以内、それまでは俺が学校に登校してきたところから彼女の行動を監視していたからな……』

これは、みー姉の誘拐が発覚して狭山が情報を整理していた時の発言だ。
確か、この時は文化祭が始まる直前、9時ぐらいだったであろう。
みー姉が誘拐されたのが7時15分、しかし、狭山はみー姉が誘拐された所を見ていないと言う。
これは明らかにおかしい。
なぜならば、狭山がみー姉を監視していたのはみー姉が登校してから8時まで、
つまり、狭山が監視していたと言う8時には、すでに誘拐事件が起こっていたのである。
(……狭山はみー姉を誘拐してるとこを見てたのか?)
どうなのだろう、分からない。こいつは本当に色々と俺達に隠し事が多すぎる。
俺はそれとなく二人の様子をうかがう。
「………………」
「………………」
方や含みのある悪魔のような笑い顔で、方や天使のような慈愛に満ちた笑みで、その二つの笑顔はお互いの反応をうかがい心理戦をしているように見えた。
「……そうですか、分かりました。今日はこれで失礼します」
しばらくして先に口を開いたのはみー姉のほうだった。
「ん? もう帰るのか?」
「はい」
「しかし、まだ、推理の途中だが?」
「いえ、もういいんです」
「なぜ?」
「先ほども言いましたが私は自分の推測が正しいかどうか確かめに来ただけ、です。用を終え、これ以上はここにとどまる意味はありません」
「…………ほう、ではもうわかったと言うのか?」
「はい、しんちゃんが可愛らしい反応をしてくれたので」
「え……」
みー姉は俺に向かって優しくほほ笑んだ。
(ま、まさか、俺の反応まで見られてたのか……)
気恥しくなって目をそらしてしまう。
てっきり、狭山との心理戦に集中してる物だとばかり思っていた。
「しかし、真相にたどりついたところで決め手となる証拠がありません。それ以前に『何もおこっていない』のですから私にはどうすることもできませんよ」
みー姉はそう言い残して、部室から出て行ってしまった。
「………………」
「…………さて、次の作戦だが」
「おいこら。何事もなかったかのように俺達をまた巻き込もうとするのは止めろ。それにまず色々と説明してもらわなきゃいけないことがあると思うんだが?」
「何の事だかさっぱりだなぁ!!」
「こ、この野郎ぉ……」
頭に上る熱い血の流れを感じる。
「お前! 結局、全部知ってたのかよ!」
「ああ、知っていたが? もとよりすべて俺の作戦通りだったからな」
「……くっ! 開き直りやがった!」
「ふぁっはっはっは!!!」
「…………はぁ」
なんか、もう怒る気も失せた。
こいつに何を言ったところで無駄だ。
最終的にみー姉にも怪我はなかったし、いや、みー姉が無傷だったことも含めてこいつの作戦だったのだろう。
だとすると、今回はもう何も言わなくていいだろう。
「で、次の作戦を説明するからそこのバカをたたき起せ」
「あん?」
狭山に言われてソファに目を移すと、健太がよだれを垂らしながら眠りこけていた。
なんか静かだと思ったら、寝てやがったのか
「おい、こら起きろ……」
俺は健太の肩をゆする。
みー姉と一緒の部屋にいたら緊張するんじゃなかったのかよ。
こいつのバカ面の寝顔は緊張感のかけらも感じない。
大口開けて気持ちよさそうに寝やがって、長かったこの話もそろそろ終わりまで尺もねぇっての……
「むにゃむにゃ……俺達の旅はまだまだつづくじぇ……」
「このタイミングで予想以上にべたな落ちを無理やり詰め込んできやがった!!」
「ちなみに次の作戦で世界征服が完了するから楽しみにしていろ!」
「お前も最後だからって無茶苦茶なこと言ってんじゃねぇ!! ていうか、学園はどうした学園は!!」

――バタン!――

「ご主人さま。さぁ、約束の買い物へ行きましょう」
「は? 雪? お前、何でここに……」
「新井ぃ! 水無月にだけプレゼントするとはどう言うことだ!! わ、私にも……その……」
「もごもご、言ってたって分かりませんよ」
「うるさい!! 許嫁の私にも何かプレゼントするべきだろう!」
「ぎゃ! おいこら、風見山! 何の前触れもなく木刀を振り回すんじゃねぇ!!」
「新井君!! その話、私達にも聞かせてくれないかな! 真弥と言う名の将来のお嫁さんがいながら!!」
「ちょっと、朱里! もういいようぅ……恥ずかしいから止めて」
「わかった! わかったから!! さりげなく、二人して逃げ道をふさぐの止めて!!」
「しんちゃぁあああん!!! 私ったら全然人格入れ替わってくれないから!!」
「ちょッ! みー姉!! 今抱きつかれたら! 当たっちゃう! 木刀がクリーンヒットしちゃうよぉぉおお!!」
「………………なぁ、狭山……起きたらこの状況だったんだが……解説頼む」
「つまり、新井は学園の美少女を制したんだよ」
「ああ……なるほど。うまいな……」
「納得してないで助けてくれぇ!!」

「「断固拒否する!!!」」

「くそぉおお! 最後だけハモんじゃねぇええ!」




こうして、たのしいたのしい『学園制服部』の学園祭は幕を閉じた。






<<<<<< 第十四話
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ご愛読…………していただけたかどうかはわかりませんが長い間付き合ってくださった皆様。

そして、途中からでも最後までお付き合いくださった皆様。

もし、そういうみなみけの春香姉さまのようにやさしい方がいらっしゃったとしたらありがとうございます
(現在視聴中( ・´◞౪◟・`))

まぁ、受験が終わったら短編でも書いていこうかなぁと思っているのですが

とりあえずはしばらく小説更新をお休みさせていただきます。

普通にブログ更新はしていきますが

もし、よかったらコメントなどいただけるとすごくうれしいです(ノ・∀・)ノ =====┻━┻))゚Д゚)・∵.
スポンサーサイト

category: 学園を制し者

CM: 6 TB: 0   

学園を制し者 第十四話 

結局二つに分けることにしました(´°△°`)

なんか、物語もそっちの方がまとまりそうだったので……

今回はかなりシリアス路線を突っ走りましたね

シリアスは……苦手だ……

感想&アドバイス&叱責、コメントしていただけると奇声をあげて町中を走り出すかもしれないぐらい喜びます。




前回の記事の米返は次にまとめさせていただきます<(;゚з゚)> ~♪


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「学園ヒーローレッド!! ただいま参上!!」


俺は今日始めて決めポーズを決めることができた。
うん、何と言うか……ちょっと快感。
「な、なぜだ! なぜ貴様がここに!! 捕まったんじゃなかったのか!?」
「あん?」
島崎はまるで死んだと思われた怪盗が目の前に現れたかのような表情で俺を指さした。
「……くっ! そうか! さっきの報告は……狭山の仕業か!!」
「何のことだよ?」
「貴様には関係のないことだ!」
下唇をかみしめ、それでも発散しきれない怒りを俺に向ける島崎。
「……委員長。落ち着いてください」
そんな島崎を淡々となだめたのは舞台の下でカメラを操作していた男子生徒、腕の腕章を見たところ、どうやら彼は風紀委員副会長のようだ。
「……そ、そうだな」
島崎は深呼吸を数回入れる。
「…………ふぅ……まぁ、いい。どうせ、ただのかく乱作戦だろう」
状況がいまいちつかめないが……
今はそんなことよりも大切なことがあった。
俺はとりあえず最優先事項である舞台上でイスに縛られているみー姉を確認する。
俺と目が合うとみー姉は、俺を心配させまいと思ったのかほほ笑みかけてくれる。
外傷など外見的に傷つけられてはいないようだが、笑顔の節々からは疲労が取って見えた。
さっさと助けてあげないとな……
「みー……じゃなくて、生徒会長を返してもらおうか!」
俺は島崎に向けて言い放った。
「ふ、いいだろう……」
島崎は余裕の笑みを浮かべた。
「ただし、僕に勝つことができたらだけどね!」

――パチン――

島崎が指を一つ鳴らす。
『『『………………』』』
「…………待ち伏せか」
すると、いったいどこに隠れてたのやら三人の男子生徒が現れ、俺の前に立ちふさがった。
三人とも風紀委員の腕章をつけている。
(まぁ、こんな事だろうと思ったがな……)
島崎が、はいどうぞ、と簡単にみー姉を返してくれるとは思っていなかった。
「風紀委員の中でも選りすぐりの人材だ! お前のために用意してやったぞ」
ぱっと見、右の男から身長、180中盤、170後半、170ぐらいであろうか。
三人の男は、体格サイズの比率が大中小と綺麗にそろっていた。
面倒くさいので、ここでは大男、中男、小男と呼ぶことにしよう。
「卑怯です! 正々堂々戦いなさい!!」
三対一と言う状況がみー姉は納得できないのだろう。
なんとか縄をほどこうとしているのか狭山を睨みつけながら身じろぎをしていた。
が、縄はゆるむ気配すら見せない。
そんな、みー姉を横目に島崎は俺に言う。
「では、俺を楽しませてくれよ? 新井弟!!」
――パチン――
島崎は再度、指をならした。
どうやらそれが合図だったようで、三人が俺に襲いかかってくる。
俺は迎え撃つために体制を整え、構えをとった。
一人目、先陣を切って俺に突っ込んできたのは大男だ。
『喰らえぇ!!』
大男のフォームがでたらめな空気を巻き取るような大振りのパンチ。
「……ッ!」
俺はそれを屈んで避け
「はぁ!!」
立ち上がりざまに相手の懐へもぐり込み鳩尾に肘を一撃叩きこむ。
『ぐほぉッ!』
俺の肘打ちが見事にクリーンヒットした大男は後ろに倒れ込んだ。
『う、うぎゃッ!』
倒れこむ大男に巻き込こまれ後ろから来ていた小男が下敷きになる。
狙ってたわけじゃないが一石二鳥だ。
『……く、くそがぁ!!』
そんな二人をみて焦ったのか、中男は体制の悪い状態で俺の頭部めがけて右ハイキックしようとする。
しかし、そんな力の乗っていないハイキックなど俺に通用するはずもない。
俺は左手で相手の足を受け止め、そのまま体を90度反転
『うぉああ!!』
相手の足を一本背負いする要領で投げ飛ばした。

――ドスーン――

『ッ……てて……ッ!』
「…………ふぅ……」
三人が周りで一時的に行動不能になっているのを確認した俺は、一息ついてから構えを解いた。
かれこれ2年ほど鍛錬をしてなかったのだが体は覚えているものだ。
と、俺は内心でそう感心する。
(今はそれよりも……)
俺は各箇所を抑えながらうずくまっている三人に再度目を向けた。
(……素人か?)
三人とも体捌きが悪すぎる。
どうみても場馴れしていない、戦い方の知らない者の動きだ。
パンチ、一つにしてもそうだが適当に振りまわしているだけじゃ力は乗らない。
いや、それ以前に……

――パチ、パチ、パチ――

「エクセレント!!」
俺の思考を中断させたのは、島崎のまるで道化師を小馬鹿にするような拍手だった。
余裕のつもりなのか舞台上から降りてくる。
「風見山流剣術……剣がなければ何もできないのかと思えば、なかなかやるねぇ」
「……そりゃどうも」
俺がやっていたのは【剣道】ではなく【剣術】だ。
柔術を基礎とした剣を失った時の型も存在する。
もちろん、多一で囲まれた時の対処法もだ。
「まぁ、君が強いのもあるだろうが……」
島崎は笑顔のままで、鳩尾をおさえ、うずくまってせき込んでる大男に近づく。
――ガツッ!――
「貴様らはなぜ本気で戦わんのだ?」
「なッ!」
何を思ったか、島崎はいきなり大男の顔面を蹴飛ばしたのだ。
『うげッ! ゴホッ! ゴホッ! ゴホッ!』
完全に不意打ちだったようで、島崎よりも二回りほど大きい大男は難なく蹴飛ばされる。
『……い、委員長!』
それを見た中男と小男が、とっさに島崎と大男の間に割って入った。
『いくらなんでも……やりすぎです!』
小男が大男を気遣い、中男は島崎に抗議しにかかる。
『我々は【風紀委員】ですよ! 多数で一人を攻めるなんて…………不正をただすのが我らの役目ではないのですか!』
どうやら、彼らに風紀委員も三対一である引け目はあったようだ。
もしかしたら、風紀委員の大半は島崎に無理やり従わされてるだけなのかもしれない。
「………………」
しかし、島崎はそんな三人を冷たく見下した。
「だから何だと言うんだ?」
『は?』
「ずるい? 酷い? 卑しい? 卑怯? くっく……そんな物は生きて行くうちで何の意味も持たない言葉だよ」
『………………』
「それらは、敗者が勝者を妬む言葉。力ない者が力ある者を妬む言葉。まぁ、ようは勝てばいいのだよ、勝てば。結局、一番利益を受けようと思うなら勝利するしかないのだからね」
『し、しかし……』
「確か……君たち三人の親は全員TONYで働いてたよね?」
『はい? え、ええ……まぁ……』
唐突な島崎の質問で、戸惑い気味に首肯する中男。
「例えば、僕がお父さんに頼めば、君たち三人の親は即刻クビだろうねぇ。くっく……」
『そ、そんな……』
「お前ッ!!」
「なんだ? 新井弟? 君には関係のない話だろ」
お前にいったい何ができる? そう、問いかけるような島崎の目。
「ちっ!……」
無力な自分が口惜しい。
そんな俺を見て満足したのか島崎は話を続けた。
「いいんだよ? 僕としては、君たち三人の親が無職になっても」
島崎は、三人にあくどく歪んだ笑みで試すように問いかける。
「さぁ! どうするんだ? ここで、新井弟を叩きつぶすか。 それとも家族全員で路頭に迷うか……選びたまえ!!」
『『『………………』』』
選べと言われたとことで、最初から選択肢など一つしかない。
そんなことは誰もがわかる。
俺は、三人を迎え撃つために再び構えをとった。
『………………う、うぁぁあああ!!!』
真っ先に動いたのは大男だ。
続くように、残り二人も俺に向かってくる。       
「……くっ!」
しゃにむに迫ってくる三人。
先ほどよりも、もっとでたらめで無駄に力のこもった猛攻だ。
「……くっそ……」
パンチを防いだかと思えばキックが飛んでくる、キックを処理すれば今度は掴みかかってる、掴みかかってくる手を弾いたら……と続いていき終わりが見えない。
反撃しようにも、ガードで精一杯だ。
「………………」
(このままじゃ……じり貧だ……)
体力勝負で三対一、俺の敗北は目に見えている。
さらに、防御でマヒした腕の痛みと一緒に、思考力まで落ちてきているのがわかった。
(一か八か……勝負に出るか……?)
防御を一次的に放棄して、三人の間を無理やり突破し。
そして、島崎に特攻をかけ、全力の一撃をたたき込む。
(……いけるか?)
少々無茶なやりな作戦だが、周りが見えていない三人の隙をつけば何とかなるかもしれない。
いや、迷っている暇はないだろう。
(やるしかない!)
俺は弱気な自分を振り払う。
俺は、三人の包囲網を突破するため体制を低くしようとして……

「しんちゃん!! 危ない!!」

みー姉の声が届いたときはすでに遅かった。

――バチィッ!――

「ガッ!?!?」
背筋を走る電撃のような嫌な予感。
(……四…にん……め……か……!?)

無様に、地面に叩きつけられた俺の視界はゆっくりと暗くなっていった。




●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●



「しんちゃん!! 危ない!!」

――バチィッ!――

私が注意した時にはすでに遅かった。
――ドシャッ!――
「きゃ!」
弟が地面にたたきつけられるのに、思わず目をそらしてしまう。
ゆっくりと開いた私の目に映ったのはうつ伏せになって倒れている弟の姿だった。
「くっはっはっは! はぁっはっはっはっ!!」
「しんちゃん……」
島崎の笑いは雨のようにその場にいる全員の気分を盛り下げて行く。
「市販のスタンガンだ。少々、型番は古い物だが……3時間はまともに動けないだろうね」
しんちゃんに使ったのと同じ機種の物なのだろうか。
島崎君は懐からスタンガンを取り出して手でもてあそんでいた。
「君はよく、楽しませてくれたよ、新井弟。でも、ゲームオーバー……僕の勝ちだ」
すでに、しんちゃんには島崎君の声は聞こえていないのだろう。
ピクリとも動く気配がない。
しかし、そんなしんちゃんに対して島崎は、
「起きられると困るからね。念には念を入れて……」
「なッ! 止めなさい!」
――バチィッ!――
さらにスタンガンを押し付けたのだ。
「止めて! しんちゃんはもう無抵抗です! これ以上傷つけないでください!」
――バチィッ! バチィッ! バチィッ!――
「止めなさい! 止めなさい!」
私は縄が食い込み体が痛むのを無視して必死にもがく。
しかし、私の力では縄を少し軋ますのがやっとだった。
島崎君は数回スタンガンを押し付けたあと、
「うーん……飽きたな……趣向を変えよう」
そうぼやいてから、今度はしんちゃんを蹴り倒し始めた。
――ガスッ! ガスッ!――
まるでおもちゃで遊ぶ子供のように島崎君はしんちゃんを踏みつけ、蹴り上げる。
実際、しんちゃんを傷つけることで、私の反応を見て楽しんでいるのだろう。
それがわかっていても私には叫ばずには居られなかった。
私が捕まってしまったばっかりに、痛めつけられる弟のために。
「くっくっはぁっはっはっはぁ!!」
「止めて……止めて……」
やがて、声すらも出てこなくなる。
必死に声を振り絞ろうとするが、胸の奥からこみ上げてくる涙がそれを邪魔するのだ。
「止め……なさい……」
「何だい? そんなに命令されるともっと弟を傷つけたくなってくるよ」
「……止めてください……お願いします」
「それだけかい? 」
わかっているのだろう?と私をあおる。
「…………わかりました。生徒会長の権限を譲りましょう」
そんな物はしんちゃんに比べたら無価値に等しい。
「で? まだ肝心な言葉を聞いていないと思うんだが?」
「………………」
嫌だ! 絶対に嫌だ!と、吐き気とめまいで、私の体が島崎君を拒絶しているのがわかる。
しかし、
「…………分かりました…………貴方と……婚約します」
私はこれ以上弟が傷つく姿を見ていたくはなかった。
「ふ、それでいい」
私の答えを聞いて満足したのか、島崎はようやくしんちゃんから足をどけた。
「では、さっそく。生徒たちへの報告をしようではないか!」
そう言って、舞台上まで上がってきた島崎君は私のイスの縄をほどいた。
完全にはほどく気はないらしく、手はカメラから見えないであろう後ろで縛られたままだ。
「可愛いよ、美羽」
「…………くっ!」
「くっく……いい顔だ」
一瞬、噛みついてやろうかとも思ったが、止めた。
そんなことをすれば、島崎は更にしんちゃんを傷つけるだろう。
「副委員長! カメラの準備はできているのか?」
「はい。すべてセットし終わってます」
「ライトのセットは……これでOKだな……」
上機嫌に準備に取り掛かる島崎君。
どうやら、副委員長があらかたの準備を整えていたようだ。
特に問題のないことを舞台上から目で確認した島崎君は、満足そうにうなずいた。
「では、始めようではないか」
そして、島崎君が両手を広げた……
その時だった。

――『はて? いったい何を始める気なのだ?』――

「なッ!」
体育館のスピーカーから明らかにここにいない者、島崎君の味方でないものの声がした。
『どうしたのだ島崎? そんなに驚いた顔をして』
声の主は楽しげに鼻を鳴らす。
「だ、誰だ……!!」
『俺が誰か、だって?』
いちいち、もったいぶるような喋り、私はこの声に聞き覚えがあった。
「さ……やま君?」
『ふぁっはっはっはっは! 我が名は学園ヒーローブラック! いずれ、学園を制す者だ!!』
体育館に悪魔の笑いがこだました。
「今更、出てきて何だと言うんだ! すでに放送の準備は整っている。チェックメイトなんだよ!」
『チェックメイト? ああ、確かにチェックメイトだな……ただし! こちら側の勝利でね』
「くっく……強がりはよせ」
見苦しいぞ、と島崎君は付け加える。
確かに、しんちゃんは動けないし、狭山君も彼自身がここにいないのであれば何もできない。
状況だけみれば完全にしんちゃん達の負けだ。
しかし、狭山君は引き下がらなかった。
『…………まだ気づかないのか?』
「な、何がだ」
『カメラはずっとお前を捕らえ続けていたこと、そして、俺がいったいどこから喋っているのかを……だよ』 
「ど、どういうことだ!」
『はぁ……そこから説明してやらねばならんのか……』
狭山君はあきれた吐息をスピーカーから漏らす。
『校庭のビックスクリーンに放送を流すためには一度、放送室まで繋ぎ、そこからビックスクリーンへと経由させなければいけない。お前もそれを知っているから放送室に部下を配置していたのだろう? だから俺はここを制圧させてもらったのだ!!』
島崎君は、それにな……と話を続ける。
『すでに放送の準備は整っている、ではない! すでにヒーローショーは始まっていたのだ!!』
「ま、まさか……」
『ふ、そのまさかだよ。お前の行動は、最初からすべて校庭のビックスクリーンで流れていたのだ』
「どういうことだ! 副委員長!!」
島崎は副会長を睨みつける。
カメラを操作していたのは彼だ。
「それが狭山様からの命令でしたから」
島崎君の怒号も涼しげな顔で聞き流し、カメラを島崎に向け続ける副委員長。
彼の無愛想な顔がここで初めてゆるんだ。
「貴様! 裏切ったのかぁ!」
『裏切り? ノンノン……』
副委員長の代わりに答えたのは狭山君だ。
『彼は最初からお前の味方ではない! 俺が風紀委員に送った【二人目】のスパイだよ!』
「なん……だと……」
『一人捕まえたと思って安心し伏兵の可能性を考えない、そして、捕まえたスパイから喜々として情報を聞き出す。それが掴まされている情報とも知らずに……な。ふ、これだから無能は……』
「ぐぅ!」
島崎君の青筋は今にも血を噴き出しそうにピクピクと動いている。
『まぁ、生徒たちはこの映像を演劇部の何かと勘違いしているようだが、貴様のイメージダウンは避けられないだろうな。それに、生徒会長の座を狙っている奴もそれなりの数はいるだろう。俺の予想では貴様が就任したとしてもすぐに不信任案が出される』
感覚で生きる生徒が多いこの学校だ、悪いイメージの付いた生徒会長には容赦なく不信任の票を入れるだろう。
「く……くそぉ!」
島崎君はひざと拳を地面にたたきつける。
『島崎……お前の負けだ!』
「………………」
狭山君の勝利宣言を聞きながら、がっくしと力尽きてうなだれる島崎君。
私は肩口で涙をぬぐう。
今回ばかりは彼ら『学園征服部』に感謝しなければいけないかもしれない。
これですべて終わった、誰もがそう思っていた。
しかし、次の瞬間
「く……くっくっ……はぁっはっは!!」
『……何がおかしい?』
島崎君が気が狂ったように、不気味に笑い始めたのだ。
私はホントに気が狂ってしまったのではないかと少々心配になる。
「もう、いい……もう、なんでもいい!! 最初からこうすればよかったんだ!!」
――パチン――
島崎君が指を鳴らす。
すると、先ほどとはまた違った風紀委員の生徒が、計8人ほど体育館内に集まってきた。
そんな彼らに島崎君は命令を下す。
「お前ら! 新井弟を素っ裸にして校舎屋上からつりさげてこい!!」
「そんな! 貴方はもう負けたのです。そんなことをしていったい何の意味があると言うのですか!」
「うるさい! 僕はまだ負けていない!!」
「………………」
私は核心した。
気が動転して冷静な判断が出来なくなっている。
もう、彼はカメラがまわっていることですら忘れてしまっているのだろう。
風紀委員たちもどうしていいのかわからないのかお互いの顔を見合せていたが。
「さっさと動け!! お前らの親が全員TONYで働いているのは知っているのだ。そう言う風に風紀委員の中から選抜したのだ。逆らったらどうなるかわっているだろうな!!」
『『『……ッ!』』』
(……まずい!)
島崎君のこの一言で明らかに風紀委員たちの目の色が変わった。
(このままでは……しんちゃんが……)
「いい加減にしなさい!」
私も精一杯の抵抗を試みるが、
「黙れ!」
「きゃ!」
両手を縛られてしまっている私はあっけなく頬をはたき飛ばされた。
「お前も二、三発、ここで犯してやる! そうすれば少しは静かになるだろ!」
「私はどうなってもかまいません! だからしんちゃん……しんちゃんだけにはこれ以上手を出さないで……」
「知ったことか!」
しかし、そんな私の懇願は一蹴されてしまった。
「どうだ、狭山!! 放送室にいる貴様にはどうしようもないだろう? ああ、教師もあてにするなよ! この学園の理事は僕のお父さんなんだから! 誰も僕には逆らえない」
『………………』
「どうした! 声も出ないのか!」
狭山君は答えない。
もう、どうすることもできないのか、諦めるしかないのか。
私がそう思い始めた時、ようやく。
『島崎はヒーローの定義を知っているか?』
狭山君はそう切り出した。
「は? 何をわけのわからんことを……」
『正義を貫く者? 悪を滅ぼす者? ふん! そんな物はヒーローでも何でもない。現実世界で正義を語っている奴に限ってろくな奴がいないからな』
「時間稼ぎか……悪いがその手にはのら……」
『では、ヒーローとは何か?』
島崎は言葉を続けることができなかった。
それは、狭山君が彼の言葉を遮ったからではない。
狭山君以外全員、あり得ない光景にかたまってしまっているのだ。
その光景とは……

「ッ!……ってぇなぁ!」

ヒーローが動いたのだ。
『ヒーロー。それは、女の子のピンチに何度でも立ち上がるバカのことだよ!』
「そんな! あり得ない!」
膝に手をつき、よろめきながらもゆっくりと、しかしながら、しっかりと……
「ん? 今、喋ってんのは、狭山か? ちょうどいい。ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
ヒーローは立ち上る。

「なぁ、狭山……みー姉を泣かせたのはどいつだ?」

ヒーローは怒っていた。
声色だけなら冷静にすら聞こえるが、確実に重い怒気を放っていた。
「あり得ない……どうして動けるんだぁ!」
「……お前か? みー姉を傷つけたのは?」
ヒーローは壇上の悪役を睨みつける。
実際はマスクをかぶっているので睨みつけたように見えただけだ。
「ひっ!」
しかし、それだけで悪役は気押され数歩後ずさった。
「そうか、お前か……」
どうやらヒーローはそれを肯定と取ったようだ。
「……覚悟しろよ!」
ヒーローは悪役に向けて駆け始める。
「な、何をやっている! お前ら! さっさとそいつを取り押さえろ! そいつを取り押さえることができらたお前らの、親の出世をお父さんに進言してもいい!!」
『『『『う、うぉぉおおおお!!!』』』』
悪役の命令で、何としてでも止めようと三下達が群がった。
しかし、

――ドカッ!――
『ギャッ!』

――メキッ!――
『グゲッ!』

――ガッ!――
『アベシッ!』

「お……おい……おいおいおい!」


――べキッ!――
『アンッ!』

――グキッ!――
『グヘッ!』

「なんで! なんで! なんでだよぉ!!」

――ドスッ!――
『二ギェッ!』

「相手はたったの一人だろうがぁあ!!」
誰も怒ったヒーローを止めることができなかったのだ。
あるものは跳ね飛ばされ、あるものは殴り飛ばされ、あるものは蹴り飛ばされる。
マスクを激しくなびかせて、暴れ馬のような勢いで敵を蹴散らしてくる。
そして、ようやく……
――ザッ!――
「………………」
ヒーローは舞台上に立った。
その姿は堂々と凛々しく、まさにヒーローという名がふさわしい。
(ああ……しんちゃん……)
私はこれほどまでに弟を頼もしいと思ったこれは今までなかった。
「く、来るなぁ!!」
――バチィッ! バチィッ!――
悪役はとっさにスタンガンをちらつかせるが
「しゃらくせぇ!!」
そんな、おもちゃではヒーローひるませることすらかなわなかったのだ。
ヒーローは何の迷いもなく悪役と距離を詰めて行く。
「来るな! 来るなぁああああ!!」
そして、悪役の叫びも空しく……

「これで、終わりだぁぁああああ!!!!」

――バキッ!!!――

しんちゃんのパンチは正確に島崎君の顎を貫いた。




<<<<<< 第十三話     第十五話 >>>>>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




シリアスは苦手です..._φ(゚∀゚ )アヒャ

………………なんか、テンポがつかめなくてうまくまとまらない。

これでもかなりまとめた方なんですが、私の実力ではこれが精一杯orz

それに、うまく盛り上がらない。

誰か!!  

血がたぎるような熱いストーリーの書き方を教えてください(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ

描写力も足りないなぁ……





次の話で最後になりますが……

この話で見捨てないで、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


あ、あと、島崎の証言にも若干矛盾がありますが……できればスルーしていただけると、一応予定通りなので……


category: 学園を制し者

CM: 4 TB: 0   

学園を制し者 第十一話 

どうも、おはようございます

もう少し早く起きる予定が目覚ましをセットし忘れるといったポカをやらかしましたorz

最近は夕方寝て夜に活動するという行動パターンがふえてます。

いつもはニコ生を聞きながら執筆したりしてるのですが

最近どうも私のところだけニコ生が重くて(`Д´) ムキー

まぁ、私のところだけじゃないんでしょうが、ほかの方は普通に見れてるみたいなんですよね……

私のPCが悪いのでしょうか?

プレミヤムにでもなればまともに見れるのかな

あ、でもネット友さんはプレミヤムでもまともに見れないって言ってたしな……

誰か改善策を知っている方がいましたら是非教えてください<(_ _)>
(一応、最適化はしてます)

それでは、第十一話を読んでいっていただけると(/_;)



今回もコメントは大歓迎です!!
感想、アドバイス、叱責、何か一言でもいいので是非よろしくお願いします<(_ _)>
そうすれば管理者のやる気が上がって執筆速度が上がるかも……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




『生徒会長、『新井 美羽』は預かった。返してほしくば、僕のいるところまでたどりついてみろ』


「なん……だと……」
『おっと、安心したまえ。今、美羽はすやすやと寝ているよ。『まだ』手出しはしていない。
島崎は『まだ』を強調する。
「可愛いらしい寝顔だ。このまま接吻でもしてやろうか?』
「お前ッ!……」
思わず怒鳴ろうとした俺を狭山が手で制す。
「何が目的だ?」
『ふむ、目的か?……そうだな……』
島崎は考えるような間を持たせた。
『あえて言うならゲームだよ、ゲーム』
「ゲーム?」
『そうさ、本来はこんなことをする必要もない。僕のただの暇つぶし』
「どういう意味だ?」
狭山が冷静に島崎に質問を並べて行く。
ここは狭山に任せておこう。
さっきもそうだったが、俺が出ると感情的になってしまうのが目に見えている。
『言葉どうりのいみさ、RPGでいうと僕は姫を守る騎士、君たちはさしずめ盗賊ってところかな? ふ、下賤な君たちにはぴったりじゃないか』
島崎は俺達にむけ侮蔑を二乗したような笑いを放つ。
『僕の勝利条件は『プラン』の成功。君たちの勝利条件はそれの阻止』
「プラン?」
『本来ここまで教えてやる必要もなかったんだけどね……あまり一方的でも面白くない。ゲームは適度な難易度が無いと』
「………………」
こいつも狭山と一緒でいちいちまわりくどい奴だ。
(……しん)
俺がイライラしているのに気づいたのか健太は落ち着けとジェスチャーでなだめてくる。
『僕の目的は現生徒会長から会長権限をもらうことだよ』
「はぁ? そんなことできるのか?」
真っ先に反応する健太。
『ふぅ……そんなことも知らないのかい? 校則、第六章、6項目、生徒会長について。生徒会長が何らかのやむおえない理由で任期中に役職を離れる場合、再生徒会選挙もしくは生徒会長一人の指名により生徒会長の役職を委任する。 生徒手帳をよく読むことだね』
(……そんな校則があったのか)
生徒がやりたい放題自由にやってるこんな高校にも校風である我校にもしっかりと校則はあったようだ。
しかし、だからと言って……
「それがいったい何だと言うのだ?」
狭山の言うとおりある。
現生徒会長であるみー姉が役職を離れる理由がない。
誰がどうわめこうが島崎が生徒会長になるのは不可能である。
『くっくっく……あるんだよ。美羽には生徒会をやめる理由が……いや、この学校をやめてもらう理由がね』
「学校を止めるだと?」

『ああ、美羽は島崎家に嫁ぐことになったんだよ』

「…………はぁ?」
『ん? 君の低能な頭では一回で理解することは不可能だったかな? 新井弟』
「………………」
いったい何を言ってるんだこいつは……
『君の姉、新井 美羽は僕と結婚することになったんだ。当然この学校はやめて島崎家に入り花嫁修業をしてもらう』
「何だよそれ! ふざけるのも大概にしろよ! 何でみー姉がお前みたいな奴と……!」
ついに耐えきれなくなった俺は島崎を怒鳴り散らす。
『話は最後までよく聞くことだ。これは馬鹿が天才の足元にしがみつく数少ない方法の一つだよ』
しかし、あらかじめ予測でもいていたのか島崎は動揺する気配を見せない。
『これはまだ極秘情報だが、このたび『新井コーポレーション』は『TONY』と吸収合併することになった。むろん、『TONY』が親会社でね』
「……なッ!」
「つまりは政略結婚か?」
『ふ、さすがは狭山。馬鹿の割には理解が速くて助かるよ』
「………………」
(……せ、政略結婚?)
俺に狭山の言葉が入ってきたのは数秒間のラグをおいてからだった。
(どういうことだ……親父はそんなこと一言も……)
『美羽は君たちと違って才能も容姿も本当に人並みならない物を持っているよ。僕と釣り合うぐらいにね……』
「ふっはっはっ! 生徒会長が貴様がと釣り合う? それは何かのとんちか?」
『くっく……そうだったね。いくら美羽でも僕と釣り合うと言うのは少し評価が過ぎたかもしれない』
「………………いやはや、ここまで行くと救いようがないな」
すでに狭山と島崎の会話は頭に入ってこない。
(俺が家にいなかったからか? だとしても雪から一言あったっていいはず……)
『それで、さっきから新井弟は黙っているが、大好きなおねぇちゃんが結婚すると言う現実を受け入れられないか?』
「……ッ!」
『くっく……図星のようだね』
島崎の声あざわらうかのような声は俺のこころをえぐり取るように響く。
『でも、あきらめることはないよ。だから言ってるじゃないか『ゲームをしよう』って』
俺の心境を完全に無視して島崎はつらつらと説明を始めた。
『僕が今いる場所は体育館。今から65分、学園祭が開始してからちょうど1時間後。グランドに設置された巨大モニターで結婚報告を含めた会長権限の授与式をここで行う。これが僕の『プラン』』
島崎は自分に陶酔したような口調で続ける。
『もし君たちに僕の計画を止めることができたら美羽との結婚は破棄しよう。さすがに合併吸収の方は僕一人でどうにかできるものではないけど、なるべく『新井コーポレーション』に有利な契約になるように父さんに取り次いでやってもいい』
「それがこちら側の勝利条件か?」
『ああ…………まぁ、君たちが怒り狂う生徒会役員と僕の部下である風紀委員たちから逃げ切り体育館で待つ僕を倒せたらの話だけどね』
「………………」
明らかに、こちらが不利な条件だ。
生徒会と風紀委員は合わせてざっと40人近くいる。
巨大なこの学園をまとめあげるには妥当な人数だが3対40では勝ち目がほぼない。
『しかし、このままじゃまだ面白くないね……うーん、そうだなぁ、最後で最大のハンディとして体育館の周りには警備はおかないでおいてあげよう』
そんなハンディは焼け石に水である。
島崎の小馬鹿にするような声色からしてわかっていてわざと言っているのだろう。
『ああ、そう言えば、狭山よ』
「何だ?」
『貴様が風紀委員内にもぐり込ませていたスパイの一人は本当に役に立ったよ。金を渡せばすぐに二重スパイと働いてくれたからね。おかげでこっちには君たちの情報が筒抜けだった』
「………………」
『何だ? まさか、自分の部下に裏切られているとは思いもよらず声も出ないのかい?』
部下の扱いがなってないねぇ、と吐露する。
「いや、役に立てならよかった」
しかし、狭山は心底楽しそうに島崎の悪態を笑い飛ばした。
『ふん、強がりをいうね』
ここで初めて島崎は面白くなさそうに鼻を鳴らす。
きっと、狭山の心中を読みかねているのだろう。
『まぁいい……それでは、お互い正々堂々とゲームを楽しもうじゃないか!』
「何が正々堂々だ!!」
『おっと、そんなに大きな声で、いいのかい? 新井弟』
「何がだよ?」

『おい! いま、こっちで何か声がしなかったか?』
『何? よし、行ってみよう』

「……!」
(……風紀委員!?)
俺達からの距離で約30メートルほど校舎側から裏山に続く道を5人ほどの風紀委員がこちらに向かって歩いて来ていた。
しかし、まだこちらにハッキリと気づいている様子はなく、このままいけばやり過ごせるかもしれない。
『だから言っているだろう? 君たちの情報は筒抜けだったんだ。今、君たちがいるであろう場所ぐらい割り出せる』
「……くっ!」
『それでは、最初から捕まって僕をがっかりさせないでくれよ? くっくっ……くはっはっは!!!』
島崎の高笑いは通信が切れてからもうざったく耳に残った。
「みー姉……」
(何で……こんなことに……)
「しん?」
あの親父が娘を売るようなことをするとは思えない。
しかし、島崎がまるっきり嘘を言ってるようにも聞こえなかった。
「おい、しん」
(みー姉の意思はどうなるってんだ……)
みー姉が島崎を好いているならまだしも、政略結婚なんてあんまりだ。
「しん!!」
「……あ?」
ここで俺はようやく健太に肩を掴まれてたことに気づいた。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……」
どうやら俺は自分で思っている以上にまいってしまっているようだ。
「………………」
「な、なんだよ?」
健太の馬鹿だからこそ純粋で心を見通すような視線から思わず逃げてしまう。
「しん、よく聞け」
「………………」
「俺には難しいことはわからん、馬鹿だからな!」
まるで馬鹿はステータスだとでも言うように健太は胸をはった。
「そして、しん! 今のお前も馬鹿だ。やらなきゃいけないことはわかっているのにこんな所でほおけてる。だから、同じ馬鹿として俺がいつも使ってる問題解決法を教えてやる」
そして、健太は息をおおきく吸い込み叫んだ。
「全部は動いてから考えろ! どうせ馬鹿な俺達には考えるのに時間がいるんだ。なら、先に動いちまえ!!」

『やはり、声が聞こえたぞ! こっちだ!!』

風紀委員が健太の声に気づいたようだが健太は気にすることなく続ける。
「お前が今やることはなんだ?」
「…………島崎の計画止めること……か?」
「違う! 島崎をぶん殴ってやることだ! 計画が止まったかどうかはぶん殴ってから確認すればいい」
そう言ってから、健太は狭山に向き直る。
「おい、前に使った煙玉はあるか?」
「……もちろん」
狭山は懐から直径5㎝ほどの球体を3つ取り出た。
「一個使うぞ!」
奪い取るかのように煙玉の一つを受け取った健太はその勢いで
「お、おい!」
「うぉぉぉおおお!!!」
俺が止める間もなく草の陰から飛び出し、風紀委員五人に向かって突っ込んでいった。
『なッ! 正面から突っ込んできやがった……』
『こいつ、馬鹿なのか?』
「ああ! 俺は馬鹿だよ!」
健太は風紀委員五人に向けて煙玉を投げ放つ。
 
――ボフン――

『げッほ! ゴホッ! 何だこれ!? くそ、煙玉!?』
『こ、これじゃあ視界が……』
『落ち着け! 陣を組むだ! 道はそう広くない、壁を作って取り押さえろ!』
『『『『はい!』』』』
一瞬、混乱に陥った風紀委員たちにリーダーらしき人物が的確な指示を飛ばす。
よくできたチームワークだ。
あっと言う間に健太を捕まえんとする網が出来上がった。
「しゃらくせぇ!!」
しかし、けんたはスピードを緩めない。
むしろ裏山がわからの勾配を利用して速度を上げていく。
そして健太は

「らぁよっと!!」

地面を蹴りつけ、空に舞いあがった……

「なッ!」
自らの肩を踏み台にされ驚愕する風紀委員。
「はっ! そんなちんけな壁で俺の走りを止めるなんざ、不可能なんだよ!!」
健太はそのまま走り去ろうとする。
『……ちッ! 追ぇ! 追うんだ! なんとしても捕まえろ!』
『はい!』
そのまま風紀委員たちもあとを追って行ってしまった。
「………………」
「ふっはっはっはっは!」
狭山の笑い声が風でゆられる木のさざめきと交ざりあう。
「……なんて奴だ」
「む? そう、驚くことはないぞ。もともと奴の身体能力は非常に高いからな。それに緩やかであったにしろ勾配が利いたのだろう」
狭山は『しかし、作戦を聞かずに行動されるのは少々こまりものだな』とぼやく。
(…………ぷっ!)
「はっはっはっはぁ!」
俺は思わず噴き出してしまった。
ここまで心の底から笑ったのは久しぶりだったかもしれない。
(まさか、あんな馬鹿に教えられるとは……)
確かに健太の言うとおり、今考えたところで何も解決しない。
考えるのは島崎をぶん殴ってからだ。
そしてもし島崎の言うことが、政略結婚が本当だったとしたら今度は親父をぶん殴ってやればいい。
「うむ、ようやく使い物になりそうな顔になったな」
狭山は黒いマスクをもう一度かぶり直す。
「では、我らも動こうか?」
「そうだな」
こうして学園征服部は宿敵を助けるために動き出した。





『…………以上が作戦だ。理解したか?』
「ああ、俺はとにかくこのまま体育館に向かえばいいんだな?」
『それで問題ない』
通信の向こうにいる狭山は満足したのか『うむ』とうなずいた。
あの後、狭山と俺は別行動をとることになった。
今は作戦を考えるとかで『裏山』に残った狭山からの通信を受け取り、旧校舎、通称A校舎のとある教室に身を隠していた。
『で、そちらは問題ないのか?』
「今のところは大丈夫だ」
ここは本来、学園祭中立ち入り禁止区域なので一般生徒の気配はない。
当然、風紀委員か生徒会委員が警備はあったが、静かな校舎内は足音を聞きとってうまくかわすことができた。
学園祭ではこのA校舎ともう一つ、理科室などの普段使われない教室が集まった特別教練棟、D校舎が立ち入り禁止になっている。
『まったく……六車がもう少し行動を控えてくれればこんな通信で作戦を伝えるようなことはしなくてすんだのだがな』
「そう言えば健太とは連絡がついたのか?」
『今からだ。あいつにはこのまま揺動にまわってもらおう』
「そうか……」
健太の奴は大丈夫だろうか、
あの分だと最初から全力で暴れまわっているに違いない。
スタミナ切れとかで捕まらなければいいのだが
『では、そろそろ切るが……なるべくこちらには連絡をするなよ』
「……? なんでだ?」
『むやみやたらに通信を使えば、さっきとは違うこの回線まで相手に傍受される可能性が上がる』
「……なるほど」
『何かあったらこちらから連絡する。お前は絶対絶命のピンチに陥るまで連絡してくるな』
「絶対絶命って……具体的にどんな状況だよ」
『そうだな……たとえば、満員電車でガチホモに囲まれたときとかだ』
「確かに絶体絶命だ!!」
俺の後ろの貞操がな。
ていうか、そんな状況あり得ないだろ。
『まぁ、それぐらいの気持ちを持てと言うことだ』
「ああ、わかった」
『では、切るぞ』
――ブツ――
狭山は俺の返事も聞かず通信を切断した。
「……ったく」
いつものことながら自分勝手な奴だ。
「仕方ないか」
今回については完全に俺が狭山と健太を巻き込む形になってしまった。
文句の一つも言わず当然のように手を貸してくれた友人に感謝すべきだろう。
まぁ、狭山はこの状況を楽しんでる節があるが
「……よし、そろそろ行くか」
俺は机の陰から立ち上がる。
(……せめて、さっさとこの騒動を終わらせなきゃな)
俺があいつらのためにできることと言えばこれぐらいだろう。
たとえ絶対絶命のピンチに陥ったとしても、一人で乗り切ってやる。
と、心に堅い誓いを立てながら教室のドアを開いて

――ガラガラ――

「みつけたぞぉおお!! 新井ぃ!」
「………………」
――PIPIPIPI……ガチャ――
「こちら学園レッド。道端でラスボス(風見山)とエンカウントした。指示を仰ぐ」
迷うことなく狭山との通信を開いた。
『………………ほう、それは糞ゲーだな。攻略をあきらめることをお勧めする』
「はは……いったいどうやってクリアするんだって話だよな……って言ってる場合かぁ!」
俺は慣性の法則を全力で振り切る勢いで走り出した。
「逃がすかぁ!!」
当然のごとく風見山は追ってる。
「待てぇ!!」
どうでもいいが、待て!と言われて待つ奴がこの世のどこにいるのだろうか
「無駄な抵抗はやめろぉ! 今ならまだゆるしてやる!!」
「じゃあ、まずその木刀をしまえよぉ!」
「何をいう! これをしまったら貴様を殴れんだろう!」
「この人、全くゆるす気ねえよ!!」
5mほど空けて後ろから飛んでくる風見山の大音声がすでに刃に近い。
俺の精神がズバズバと切りつけられる。
「狭山! 頼む、助けてくれ」
廊下でどこかのDさんも思わず二度見して面喰いそうなカーチェイスを繰り広げながら、必死で狭山に懇願する俺。
『とは言ってもな……ふむ、5分ほど稼げるか?』
「5分?」
『うむ、これからしばらく通信を切る。その間耐えきることができたなら、副会長はこちらで何とかしよう』
「なんでもいい! 早くしてくれ!」
『ふっ、了解した』
こうして狭山との通信を切ったのはいいのだが
5分か……正直、微妙なラインだ。
数年前に引退した俺と違い、向こうは毎日鍛錬を欠かさない。
いまはまだ互角の競争をしているが、体力勝負となればすぐに捕まってしまうだろう。
「私から逃げ切れるとでも思っているのか!」
(くっ……まだスピードを上げてきやがる)
相変わらずの化け物スペックだ。
(何か……何かないか……!?)
このままではすぐに追いつかれてしまう。
俺は打開策を耳出すため無我夢中で思考をふるい、あたりに使えない物がないか死に物狂いで見まわした。
「……ッ! あれだ!」
かすかに見えた希望の光明にすがりつくように俺は足の回転数を上げる。
「うらぁッ!」
そして、俺は壁に設置されていたとあるスイッチを殴りつけるようにして押し、起動させた。
――ジリリリリ――
「防火シャッター!?」
けたましい音を響かせながらシャッターがおり始める。
「くっ! 小賢しいぞ新井!」
風見山の声に焦りと驚愕が混入する。
これでうまくいけば道を分断し風見山を撒くことができるが、
「……ちッ!」
(……まにあうか?)
シャッターの位置が思ったよりも遠かった。
(後、3m……)
シャッターはすでに俺の腰のあたりまで降りてきている。
このままでは俺自身も間に合わない。
「らぁああ!!」

――ガシャーン――

「………………」
まさに滑り込みセーフというやつだ。
俺はスライディングで、何とかシャッターの下を潜りこむことに成功した。
『くそ! 新井ぃ!』
シャッターの向こうからは悔しそうな風見山の声が聞こえてくる。
「ふぁはっはっは! 新井とは誰のことだ? 俺は学園レッド!! また会うことがあれば覚えておくといい」
と、余裕ずらをかましながらも本心はたきのような冷や汗をかいていた。
(はっはっはぁ! 俺だってやればできるんだよ!)
ピンチを抜け出した優越感に浸る俺。
しかし、この分だと狭山頼んだことは全くの無駄に……

――ズガンッ!!――

「………………」

――ズガシャァン!!  ズガァン!!――

「………………」

――ズガッシ!! ズガスッ!! ズガシャァン!!――

「………………」

――ズドッパアァ!!――

「………………」

俺の目の前で防火シャッターが吹き飛び……
「あぁらぁいぃぃいい!!」
その向こうから夜叉が現れた。
「…………オーマイゴット」
夜叉はゆらりとした動きで木刀を振り上げ……
「覚悟しろぉお!!」
「いぃぃやぁぁぁあああ!!」
再び始まるリアル鬼ごっこ。



それから狭山から連絡があるまでの数分間、俺がマスクの下を涙と鼻水で濡らしていたのを誰も責めることができないだろう。



第十一話  ~了~


<<<<< 第十話 第十二話 >>>>>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

健太の意外な人気に驚いてます。

愛されるバカを意識して書いていたので

健太の活躍シーンを入れてくれというコメントが多々あり作者としては嬉しい限りですね(*´σー`)エヘヘ

今回の話は一応予定してた感じなのですが、若干健太が活躍する感じになったかも知れません。

そして、ようやく出てきたおんニャの子……

話の流れの都合上こんな感じになってしまいました(´・ω・`)

次からはどんどんおんニャの子がでてくる予定です。

乞うご期待!!



あ……やっぱり期待しないで……(;一_一)

category: 学園を制し者

CM: 5 TB: 0   

キャラ設定 遠堂 真弥 

遠堂修正


名前:遠堂 真弥(とうどう まや)


年齢:15歳、高校一年生

一人称:私

サイズ:79 53 75

身長:156㎝

誕生日3月4日

血液型:A型

あだ名、呼ばれ方:真弥、遠堂

趣味:読書、乱読家(純文学からラノベ、歴史小説までなんでもよむ)、 料理、お菓子作り

好きな食べ物:野菜中心の料理

嫌いな食べ物:油、味の濃いもの(作るのは大丈夫)

好きなもの:本、静かな空間

嫌いなもの:目立つこと

悩み:朱里以外に友達が少ないこと、自分の臆病な性格


その他:
極度の恥ずかしがり屋(対人恐怖症ではない)
どちらかというと、努力派で勉強も宿題はもちろん、予習、復習を欠かさない。
気絶癖があり自分の許容範囲を超えると倒れる。貧血気味。
主人公とは入学式の日が初対面。
その時に助けてもらったことがある。

category: 学園を制し者

CM: 3 TB: 0   

学園を制し者 第十話 

ついに大台に乗ったようです

はい、『学園を制し者』もついに第十話を迎えました!!

私がやる気をなくさず続けてこれたのはコメント毎回コメントくださる皆様や

私の力量に余りある絵を描いていただいているユウスケ様のおかげです。



今回も感想、拍手、ご叱責、アドバイスなどいただけるとすごくうれしいです
ブロ友さま、通りがかりの方、気軽にコメください<(_ _)>


自作小説 トップページ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「さぁて、諸君!! いよいよ我が『学園征服部』の初の侵略活動が始まる!! 待っていろよ生徒会、そして愚民ども! 貴様らを恐怖のどん底に突き落としてやる!! ふはっはっ! ふぁっはっはっはっ!!」
「…………ふぁ……朝っぱらからテンションがたかいな」
俺は部室に響く狭山の、すでに聞きなれた高笑いを聞き流しながらあくびを一発。
ていうか、恐怖のどん底に突き落としてどうするんだよ……
「む……新井! 今回は普段の『依頼』とは違うのだぞ! もっと気をしめろ!」
「つってもなぁ……」
そんなことを言われても眠いものは眠い。
現在、8時45分。
文化祭開始まであと15分に迫ってきたところである。
普段ならここまで眠くはないのだが、昨日の洗濯の疲れがぬけないようだ。
俺はたぶん俺と同じ状況の隣で仁王立ちしている健太に話しかける。
「なぁ、健太さすがにねむ……」

――Z Z Z Z Z Z Z Z――

……こいつ……立ったまま寝てやがる
ご丁寧に瞼部分には目がマジックで描かれていた。
それでごまかせると思ったのか? わが友よ……
「むぅ! 六車は寝ているのか!」
「ああ」
狭山は不服そうに呻いたが、数秒後にはその顔を江戸時代の悪代官のようものに変える。
「ふっ、まぁちょうどいい……こいつには実験だいになってもらおう!」
「実験?」
「うむ、つい先ほど完成したのだ」
そういうと、狭山はおもむろに懐に手を突っ込み
「パッパカパッパッパーン! パパーン!! にゅーヒーローマスクぅぅ!!(ドラ○もん風)」
お馴染みの音楽とともに、同じ形で色違いのヒーローマスクとそれぞれの色に対応したマフラーのセットを3つ取り出した。
「…………なぁ、前にも言ったかも知れんが……お前の制服はいったいどうなってるんだ?」
どうやったら人の頭よりも大きいマスクを懐に三つもいれておけるのだろうか
ブレザーの裏に四次元ポケットでも縫いつけてあるんじゃないか?
「企業秘密だ!」
「いや、まぁ……怖いから知りたくないけど……」
それを知ってしまうと、この世界自体が壊れてしまう気がする。
触らぬ神になんとやらと言うやつだ
「にしても……」
俺は狭山の取り出した赤、黄色、黒のマスクとマフラーを眺める。
それは、ぱっと見た見た目から昔の物とは全く変わっていた。
ヘルメットを改造したのか、フルフェイスタイプのそのマスクの形状はヒーローと言うよりもロボットに近いかもしれない。
前はお面タイプの本当に付けるだけのものだったし、何より前はマフラーがなかった。
「変わったのは見た目だけじゃないぞ! 便利な新機能たぁくさんついている!」
そういうと、狭山は黄色のマスクを健太にかぶせた。
「これでよし」

――Z Z Z Z Z Z Z Z――

マスクを装着されてもまったくおきる気配のない健太。
「では、まずこれをみてみろ」
狭山に小型TVのような物を渡される。
俺がそれを受け取ると、あらかじめ録画でもしてあったのか動画が再生され始めて

『ボブとシンディのTVショッピーング!!』

………………なんか始まったぞ

俺のテンションを根こそぎ奪うような、はつらつとしたBGMが流れ
番組テロップがと明らかにあやしい外人が二人出てきた。

『ハーイ、シンディ、元気カーイ?』
『オゥ……ボブ、サイキンははなんだかユウウツだわ』
『アハーハン? どうしてダーイ?』
『ウーン……シゲキがたりないのから?』
『オオ! そんなシンディに今日はいいショウヒンを持ってきた!! これだ!』
ボブとやらが取り出したのは……今、健太がかぶっている黄色のヒーローマスクとマフラーだ。
『ワット!!! なんてクールでビゥーティホーなマスクなの!?』
あからさまなテンションで驚くシンディー。
カラオケでつかわれるPVの役者でもまだましな演技をしそうだ。
『ノンノンノン! このマスクがすごいのはみためだけじゃないゼ!!』
そう言うとボブは黄色のマフラーを手に取った。
『ナントこのマフラーに設置されたスイッチをおすと……』
――ボフンッ!――
刹那、健太のマスクの中で何かがはぜる音がした。
「ぎやぁぁぁああああ!!」
『このように『狭山特性! 濃縮4倍カメムシフレーバー君』がサクレツするんだゼ!!』
『オー! ワンダホー!!』
「ワンタホー……じゃねぇ!! なんだその麺つゆみたいなネーミングのバイオ兵器!!」
「ぐぇ! ゲホっ! くせぇええ!!」
マスクのなかのこもったうめき声を上げながら部室の床をのたうちまわる健太。
『本来は取り押さえられた時相手に向けて発射する物ダガ……このようになかで爆発させることもできるのサー。ちなみに普通に使用してても六回に一回はなかでバクハツするからキをつけロー』
『ワァオ! それはとてもシゲキテキね!!』
「刺激的すぎるわ!」
どんなロシアンルーレットだよ。
『オドロくのは、はやいゼ!!』
『ワァイ?』
『タトエばせっかく商品が届いたのにサイズがあわナーイ!! なんてこともよくあるダロ?』
『タシかにソウね! でも、しかたないんじゃナイ? TVだとジツブツを見れないから……そんなときはヘンピンするしか……』
『ハッハァ! アキラメルことないサー! そんなときはこのスイッチ!!』
ボブはまたもやマフラーに仕込まれたスイッチを押す。
「ぐぉぉおおお!! しまる! しまるぅぅうう!!」
と、健太が緊箍を締め付けられる孫悟空のように苦しみ出した。
『このようにサイズヘンコウがカノウだ!!』
「いやいやいや! 締め付け方がサイズ変更の域をあきらかに超えてますよねぇ!?」
『ソンナことはないサー!!』
「ボブが答えた!?」
なんだこれ? TV電話にでもなってるのか?
『まだまだ、キノウはあるんだが……』
『オゥ……ボブ! ザンネンだけど。もう、こんな時間ダワ!! そろそろオワカレの時間よ!!』
『あ、ああ…ソウダナ……』
『どうしたの? ボブ? そんなにソワソワして……?』
『うん……シンディ真剣に聞いてくれ』
『な、なによ? そんな目で』
お互いの目を見つめあうボブとシンディ。
逡巡の間があり、意を決したようにボブが話始めた。
『前から言っていだろ? この放送が終わったら返事を聞かせてくれるって』
『そ、そんな……まだ放送は終わってないわ……』
『そんなことはもうどうでもいい!! 俺は今返事が聞きたいんだ!!』
シンディーの肩に手を回すボブ。
『だ……ダメ! まだカメラがまわってる。恥ずかしいわ……』
『恥ずかしくなんてない!! なんなら今もう一度言ってやる!』
ボブはシンディの肩を掴みなおす。
そして、目をしっかりと見つめながら、ゆっくりを口を開き
『俺と付き合ってくれないか?』
ボブは男らしくも優しく、包み込むような声で告白した。

そんなボブにシンディは、ただ優しくほほ笑み……

『オトトイきやがれこの顔面性犯罪者ガ!!』
『………………』
『ハーイ! 今日はここまで! スィーユーアゲイーン! バイバイ!』

――ブツン――

後に残されたのは、真っ黒に映ったボブの未来だけだった……

「シンディィィイイイ!!!」
「いやー、名作だったな」
「どこがだ!! ここまで後味の悪いTVショッピングをみたのは生まれて初めてだぞ」
絶対OKする雰囲気だっただろ! ボブも核心してかっこつけてたのに……
『ダメ! 割れちゃう! 割れちゃうよぉぉおお』
「む? そうか これを作るのにかなりの時間がかかったのだがな」
「相変わらず無駄なことばかりに労力をさく奴だな……」
『イデデデデ!! 何これいつまで続くの!?』
「何を言う!! 俺がやってることは決して無駄なことではない! すべては必要なことなのだ」
「ボブが傷つくことも含めてか?」
『あ……ちょっと新しい快感に目覚めそう……』
「だが、これで基本的なマスクの使いかたは理解しただろ?」
「いや……まぁ、そうかもしれんが……最初からお前が口で説明してくれた方が色々と丸く収まった気がする」
『…………って! さっさと助けろよぉぉおお!』
「おっと、忘れていた」
狭山は黄色のマフラーのスイッチを押した。
すると、健太のマスクがすっぽりと外れる。
「ぷはぁっ! 痛いだろうがぁ!!」
健太はまるで、何年も息をしてなかったかのように大きく息を吸い込む、吐くを繰り返す。
「居眠りをしていたのでこの俺自らが優しく起こしてやろうとおもってな」
「どこがやさしくだぁ! 死にかけたわ!!」
「よかったではないか! 今、生きてるのだろう?」
「ああ……ってよくねぇよ! 何、生還おめでとうみたいな感じで拍手してんの!? あんただよね? これ作ったの!」
「よくわかったな。さすがの推理力! それでこそ俺の選んだ『天才児』だ!」
こんなバカげたおもちゃを作るのは全国どこを探してもこいつだけだろうが……
狭山のあからさまなご機嫌取り、普通の人なら怒りの沸点が振り切れそうであろう。
「そ、そうか? へへっ……てれるぜ!」
…………まぁ、こいつはだまされるんだがな。
ある意味、人生を最も幸せに生きれる奴かもしれん。
「さて、使いかたはわかっても、一番重要な機能の説明がまだだったな」
「重要な機能?」
「通信機能だ。高性能トランシーパーを改造し取り付けてある。独自の周波数を利用しているから、敵にばれんようにな」
そう言って狭山は内側を見せるためにマスクを裏返した。
どうやら耳の部分の片方がヘッドホンになっているようだ。
「マスクの説明はこれでいいだろう。次に作戦だが……」
狭山はブレザーの袖から学園の地図を取り出し学園祭で使われるグランド中央に置かれる巨大モニター&ステージのところを指す。
「まずはここステージにお前たちが生徒会の前にさっそうと登場! どうせだったら派手に目立つところがいいからな!!」
「おお!」
雰囲気におされたのか健太が歓喜の声を上げる。
「そして、生徒会と風紀委員を挑発して素早く逃げる」
「ふむふむ」
「逃げる、逃げる、ひたすら逃げつづける」
「それで?」
「俺が楽できる」
「「楽にできるじゃねぇよ!!」」
俺と健太の声が見事にはもった。
「ふっはっは! 冗談だよ、冗談。最初のうちは俺も一緒に逃げる。初めからいないと怪しまれるからな」
「………………」
本当に冗談で言っていたのだろうか?
(こいつ……前に追手を健太におしつけてたからなぁ……)
「だが、そのあとお前たち二人で逃げてくれ、俺は準備に取り掛かる。地味だがお前たちの役割は重要だ。期待しているぞ! 派手に暴れまわって、俺の存在を消してくれ」
「お、おう! まかしとけ!!」
少し緊張してきたのか、健太の声はうわずっている。
俺も緊張していないと言えばうそになるが、その前に一つ気になることがあった。
(……なんか、かなり大雑把な作戦だな)
狭山にしては珍しい、いつもはもっと綿密に作戦を立て慎重にきしているような気がするのが……
「さて、そろそろ時間だ。各々マスクとマフラーを装着しろ」
黒のマスクをかぶりながら狭山は俺達に命令する。
(……こいつのことだらもしかしたら俺達にも言っていない特別な秘策でもあるのかもしれないな)
そんなことを考えながら俺は残った赤のマスクを手に取った。
「準備はできたか? さぁ!! 行くぞ!!」
狭山は勢いよく部室のドアを開く

――『学園征服部につぐ!! 貴様らのいる文化部棟は完全に包囲されている! 大人しく投降しろぉ!!』――

が、風見山の凄みの聞いた声に押し戻されてしまった。
俺達はすでに籠の中の虫だった。
「「「……………………」」」
しばらくの沈黙のあと
「……なじぇ?」
真っ先に口を開いたのは健太だ。
「俺達、出る芽は先に摘んでおくってことか?」
健太は更に続ける。
「……いや、それはない」
狭山は一度マスクを外した。俺と健太も狭山にならってマスクを外す。
「お前の姉の性格からして、俺達問題を起こす前の俺達をとらえようとはしないだろう」
俺も狭山と同感だ。
みー姉はたとえ危険因子だとしても罪を犯す前からとらえるようなことはしないと思う。
だとしたら……
「なんで風見山がここに……?」
「しっ! まだ何んか言ってるぞ」
健太に言われて俺と狭山は耳をすました。


――『今回はおふざけではすまされんぞ!! まったく……生徒会長を【誘拐】するなど言語道断!!』――

……………………ハ?…………ユウカイ?
「………………」
「おい、待て! どこへ行く」
狭山は外に出て行こうとしたおれの肩を掴んで引き止めた。
「あぁ? 決まってんだろ。 風見山に事情を聴きに行く」
(みー姉が誘拐? なんだよそれ……)
いろんな感情が交ざり混沌とした心中に苛立ちながら俺は狭山を振りほどこうとする。
「今は待て」
しかし、狭山は手を離さなかった。
「んでだよ?」
俺の目をまっすぐ見つめる狭山からは動揺を感じない。
それは俺をさらに苛立たせた。
「今出て行くのは作戦に支障をきたす。もう少しここにいろ」
「んなこと言ってる場合かぁ!!」
「ちょっ! しん、おちつけって!」
思わず狭山につかみかろうとした俺を健太が割って入った。
別に狭山が悪いわけがないことなど100も承知だが、どうすることもない感情を他人にぶつけてしまう。
「たとえ本当にお前の姉が誘拐されていたとして、では、なぜ風見山はここにきた? 警察に連絡するのが先決ではないか?」
「それはっ!……そうだが……」
こうして簡単に論破されてしまうほど俺の中は混乱していた。
「落ち着いて、よく聞け。まだ情報が足りなすぎる」
狭山はそう言って更に風見山の声に耳を傾けた。

――『生徒会にこんな『生徒会長は誘拐した! 返してほしくば俺達を全員捕まえてみろ』なんてふざけたカードをよこしよおって! なめるのもいい加減にしろぉ!!』――

「はぁ!? なんだよそれ!」
「……わからん」
どうやら、狭山にも身に覚えの無いようだ。
ということは、俺達の知らないところで勝手に『学園征服部』の名前が使われている?
(いったい誰が……)
「まずはあるだけの情報を整理しよう」
狭山はペンと紙を取り出し箇条書きに今の状況を書きだしていった。
「生徒会長が誘拐されたのは、今から1時間前以内、それまでは俺が学校に登校してきたところから彼女の行動を監視していたからな。そして、流れからさっするにこの犯行は我々を陥れようとしている何者か、十中八九、学園関係者が行っているものだろう」
素早く情報の整理と推測を立てて行く狭山。
「そして、いまだに警察に連絡されていないのは、問題が世間にばれるのを恐れているヅラ園長もとい、学園長の指示であろう」
確かに、ありそうな状況だ。
本当の誘拐ならまだしも、学園内で発生しかもそれが生徒によるものだったとしたらなんとしても隠しとうそうとするだろう。
狭山のおかげで俺の頭の中もだいぶと落ち着いてきた。
「しかし、まだ一番重要なところがわからんな……」
「てぇと?」
「俺達を陥れようとしているの誰か? そして目的はなんだ?」
「俺達を恨む者の仕業とか?」
「確かにその線が一番濃いであろうが、ではいったい誰の仕業だ?」
「「………………」」
俺達『学園征服部』を恨む者の仕業?
いや、簡単に思いつかない。
確かに俺達『学園征服部』はいろんなことをやってきたが
今までは『生徒会の敵対するような依頼を受け、それを達成する』というような作業しかやってこなかった。
つまり、生徒会と風紀委員以外に恨まれるようなことをした覚えがないのだ。
第一に、活動の数もかなり少なかったし、学園でも『学園征服部』の存在を知ってるものが少ない。
狭山は知名度が上がらないことにすごく不服そうだったけど……まぁ、今は関係ない。
他に思いつくあてとしたら、学園長あたりにはうらまれてるかもしれないが、さすがに今回のようなぶっ飛んだ報復はしないであろう。
いつも目上の人ばかりに頭を下げてご機嫌を伺っている学園長にそんな行動が起こせるとも思えない。

――『早くしろぉ!! さもなくばこちらから突入させてもらうぞ!』――

「おっと、時間のようだ。まずは逃げることを先決しよう」
風見山の凄みが増してるのもいざ知らず、狭山は口笛でも吹きそうな軽い調子で難しいことを言う。
「逃げるったってどっから?」
(部室棟の周りは包囲されてるみたいだし……)
「ふっ……」
狭山は俺の疑問ににやりとした笑みで答えローテーブルをどけて更にその下の床板を一枚はがすのだった。
「緊急時の逃げ道を俺が確保していないとでも?」



学園内の裏には『裏山』と呼ばれる場所があった。
別段、不思議な伝説があったり、お化けがでたりはしないのだが学園の生徒や教師は立ち寄らない、いわば、穴場と呼ばれるような場所である。
「こんな所に続いてたとは……」
俺は地面の穴からから這い上がる時にくっついてきた木の葉を払った。
「他にも三か所ほど別の場所に出るルートがあるが……今回はここが最適だろう」
俺よりも先に出てきていた狭山は、かぶりなおしたマスクの内側、耳の横のあたりに手を突っ込み中で何かしらの作業をしている。
「こんなもんいつの間に作ったんだよ?」
最後に穴から上がってきた健太が狭山に尋ねる。
「む? ふっはっはっは! 聞きたいか!」
狭山は一旦マスクから手を離し手を腰にあてた。
「同盟を組んでいるクラブや同好会で協力して約3カ月を費やし作りあげたのだ!」
いや、そんなドヤ顔されても…………
「うへぇ……みんなひまなんだなぁ……」
黄色いマスクの下では健太のあきれ顔が張り付いていることだろう。
「まぁそう言うな、そのおかげで俺達は助かったのだからな」
そう言いながら再びマスクに手をやる狭山。
「んで? これからどうするんだ?」
「しばし待て。今、田中君に連絡を取っている」
ああ……そう言えば田中君もいたんだな。
いつも三人なのですっかりと失念していた。
「…………むぅ?」
「ん? どうした?」
俺と健太は呻き声を上げた狭山疑問の目線をおくる。
しかし、その答えは俺達にもすぐにわかることとなった。
『……ジッ……ジジ……ジジジ……』
マスクに取り付けられた通信用のヘッドホンから何やら電子的なノイズがながれはじめたのだ。
『……あ…あ……ジジ……きこ……ジッ……むのう……くん』
「なんだ? これ?」
「無線に何ものかが割り込もうとしているようだ」
狭山の言うとおり謎のノイズは誰かがしゃべっている用に聞こえる。
『……ジッ……こえるか?……ジジ……むのう……しょくん』
その声はだんだんとハッキリしたものに変わって行き
『聞こえる……かね? 学園を騒がすことしか能のない愚かな……諸君』
いきなり罵倒された。
男の声だ。
「貴様は誰だ?」
狭山が声の主に尋ねる。
『おっと、これは失礼。ご挨拶がまだだったね……僕の名前は『島崎 龍太』風紀委員長だよ。くっく……僕ぐらい有名になると知らない者はいないだろうがね』
「風紀委員長!?…………って誰だ?」
マスクの上に?をうかべる健太。
どうやら、本気でわからないようだ
わからんなら思わせぶりに驚くな。
『なっ!……き、貴様! 僕を知らないというのか』
予想外の返答に島崎が狼狽する。
「なぁ、しん……しってるか? この浦島太郎ってやつ」
「ああ……一応な……」
『違う! 島崎 龍太だ!』
島崎 龍太(しまざき りょうた)
確か『新井コーポレーション』のライバル社である『TONY』と言う会社の社長である『島崎 隆平』の一人息子でこの学園の2年だ。
親がこの学園の理事の一人であるのをいいことに、学園長を顎でつかい、テスト点数改ざんを行ったり、生徒からわいろを受け取り不祥事をもみ消したりと
正直、この島崎にはあまりいい噂をきかない。
「ふーん……お前が知ってるってことは結構有名なんだな……浦島君」
『何度言えばわかる! 僕の名前は島崎だ!』
無線の向こうで島崎が息を荒立てているのがわかる。
『……すぅ……はぁ……』
島崎は一旦息を整えた。
『く…くっくっくっく。まぁ、いい、所詮は単細胞生物。僕の崇高な名前を覚えろと言う方が無理な話か……』
「して、その風紀委員長が我々『学園征服部』なにかようかな?」
狭山が島崎に問いかける。
『少し話がしたくてね……君たちの脳みそのように風穴だらけの通信にわりこませてもらったよ』
島崎はビルの最上階から見下したように俺達を挑発する。
『味噌汁の残りかすほどしかない脳みそでもわかるよう単刀直入にいってやるからよくきけ』


『生徒会長、『新井 美羽』は預かった。返してほしくば僕のいるところまでたどりついてみろ』


こうして、俺達の学園祭はみー姉の救出へと目的を変えた。


第十話 ~了~



<<<<< 第九話      第十一話>>>>>>   



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

物語としてはちょうど8話で『序』が終了して9話から『破』が始まる感じです。

さて、これから物語をどれだけ破壊できるかな(━_━)ゝウーム





毎回のような鬱コメントで申し訳ないのですが

うまく……かけてるだろうか
ギャグはダダ滑りのような気がする。

などどこの投稿の瞬間だけはどうしても不安に陥る私です……

category: 学園を制し者

CM: 5 TB: 0   
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。