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某人の趣味丸出し日記

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尾裂狐と俺と陰陽師  第参話 

安定の遅刻ですね……。
まぁ、もういつものことなのでいいとしましょう。←

さてさて、さっそく本編行きます。

感想、アドバイス、誤字報告などの反応をいただけるとすごくうれしいです!

(コメント返信は次で行います!)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うう……さみぃ……」
四月も後半といえど夜風が体にしみる。黒の学ランを突き抜けるような冷たい風を感じ俺は学校指定の地味な鞄を肩にかけ直す。
「綺麗だな……」
ふと見上げた夜の空を闊歩する半分の仮面をかぶった月は冷たく俺を見下ろし、あたりをさびしく照らしていた。
けして田舎と言うわけではないのだが、都会とは言えないこの町では街灯が少ない。俺があるいているあぜ道のように所々真っ暗な場所がある。
しかし、子供からここに住みそのまま家業を継いだりする町民にはそんなことは慣れっこで暗闇でもある程度目が利く。
それに街灯がなくとも夜空にちりばめられた星や月は意外とあたりを照らしてくれるものだった。
源じいの話し相手もといアルバイトを終えた俺は本来家がある方向とは反対側の駅の方へとあぜ道を歩いていた。理由は簡単コンビニへ向かっているのだ。
この町で唯一のコンビニ、午後9時には閉まってしまうので急いでいかなければならない。今日は俺のお気に入りの月刊ミリタリー雑誌の発売日なのだ。
駅に向かうほど田んぼばかりで田舎っぽくなっていくというこの町の作りはよく考えれば少し不思議な気もするがどうなのだろうか。
きっと、町の方に隣町へとつながる大きな道路があるためそっちの交通機関の方が主流だからなのだろうが、まぁ実際のところそんなことはどうでもいい。
とにかく今はコンビニへ向かわなければならない。
インターネットが普及した今いちいちコンビニまで出かけて買いに行かなくとも取り寄せなどはいくらでもできるのだが。
俺は何となくこの月一の散歩が好きだった。季節によっては町を町を取り囲む小山の紅葉が見れたり、その小山が雪化粧をしていたり、夏は田んぼで蛙たちが大合唱を楽しんでいたりする。
月一この日が来るごとに新しい発見があるのだ。
(……ん?)
そして、発見は今日もあった。
それはコンビニまであと数十メートル、小山のわき道を歩いているときだった。
「……なんだこれ?」
小山の間にに獣道がある。幅1mほどの小さな道で脇から草木整備されていない草木が生い茂り狭い道をさらに圧迫している。大人が一人通れるかどうか微妙な道だ。
よく見ると石でできた階段があり獣道という表現は正しくはないのだろう。
しかし……
(先月までこんなものはなかった気がするが……)
俺が気がついていなかっただけなのだろうか。
まぁ普通に考えてそれしかあり得ないが、まさか突如現れた異界に続く道ではあるまい。
「………………」
ふと、興味がわいた。
この道はいったいどこへつながっているのだろうか。石でできた階段があるからにはこの先には間違えなく人工物があるのだと思う。
しかし、十数年この町に住みそんなに大きくないこの町のことなら大体知っている俺でもこの小山にそんな人工物があると言う話は聞いたことがない。
(……行ってみるか)
コンビニ閉店まであと30分ほどある。この先を確認して戻ってきてからコンビニへ向かっても十分な時間だ。
もし間に合わないのだったら、それはそれで途中で引き返してまた別の日にでもここに来ればいい。
そう思った俺は小山の小道へと入っていくことにした。
小道は思ったよりも進みやすくスイスイと先へ進めた。まるで何かの力に引っ張られるように奥へ奥へと進む俺。
「……ふぅ……」
数分ぐらい登っていただろうか。少し汗ばみ学ランでも脱ごうかと考え始めた時だった。
「……お?」
突如道が開けた。階段はまだ続いているが道は左右5mぐらいに開けしっかりと整備されていた。
「……すげぇ」
しかし、すでに俺の頭はそんなことを考えておらず目の前の光景に目と心を奪われてしまっていた。。
そびえたつ巨大で真っ赤な鳥居、そして奥に続く桜道。舞い散る夜桜の花弁はまるで一枚一枚が妖精であるかのように自ら光り踊りだす。
一瞬、絶景という言葉が思い浮かんだが少し違う。なんというか怪しい魅力がある光景だった。
ミリタリー雑誌のことなどすっかり忘れその魅力に魅了されてしまった俺はおぼつかない足取りで先へと進む。
そして、鳥居をくぐり階段を上りきる。その先にはさらに圧倒される光景があった。
『桜の海』とボキャブラリーの少ない俺ではこれ位しか表現する言葉が思いつかないのだがどうか許してほしい。
しかし、そう言っても過言ではない。むしろそれでは表現しきれないほどの光景だった。
奥に小さな神社(かむやしろ)があるのが見える。階段の延長線上に石でできた道が神社まで続いていた。
「こんなところにこんなもんがあったのか……」
神社の境内がしっかりと整備されているところをみると誰かが管理しているのだろう。
「……ん?」
その道の途中にちょうど階段から神社のちょうど中間地点の辺り。
「こいつは……」
一匹の狐が力なく横たわっていた。
(……なんでこんなところに?)
この山に住む狐なのだろうか。
真っ白で綺麗な毛並みを持った狐はこの幻想的な空間にしくふさわしい非常に絵になる。
俺はその狐に近づこうとして……。
「……なんじゃ? なぜここに人がおる」
「だ、誰だ!」
突如若い女の声が聞こえてきた。俺は思わず身構える。
しかしあたりを見回しても誰もいない。桜が美しく散っているだけだ。
つまり、ここにいるのは俺と……。
「人間よ……今すぐに帰るがよい。ここは危険じゃ……お主も滅せられ……てしまうぞ?」
「ま、まさかお前が……?」
体から血の気が引いていく、狐は確かに俺の目を見て口を動かしていた。
「迷い込んだのか……」
狐は同情するような目でつぶやいた。
しかし、俺にそんなことに気がつく余裕はない、喋ろうにも声が出ない。恐怖で委縮してしまった体は動く様子はなく完全にビビってしまっていた。
自分より遥か上位の天敵に出会ってしまったような感覚。簡単に言うとカエルが蛇に睨まれた状態だった。
狐は構わず続ける。
「『奴ら』はいずれ……ここにワシを殺しにやってくる。が……今ならまだ間に合うさっさと山を……降りるのじゃ」
「や、奴ら?」
ようやく絞り出した声は震えて情けないく裏返る。
「……そうすれば今宵のことはお主の……夢となる。今後お主は普通の……生活を送れる」
狐の声はだんだんと弱々しくなっていく。
「ど、どういう意味だよ!」
「……わかる……必要はない。今は……ともかく急いで……山を降りる……のじゃ……」
「お、おい!」
狐はそれっきり喋らなくなった。目を閉じピクリとも動かない。
俺は数分立ち尽くしていた。いや、もっと時間がたっていたのかも知れない。
「……はっはっ……」
あまりの桜景色に俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。
そうだ、そうに違いない。だから狐が喋るなんてあり得ないまぼろしなんて見てしまったのだろう。こういうのを白昼夢とでも言うのだろうか。
俺は息をつき心を落ち着かせる。今更ながらに汗をビッショリとかいてしまっていたことに気がついた。かなり寒い。
携帯の時計で時間を確認するとすでにコンビニが閉まってしまっている時間だった。
「………………」
俺は横たわっていた狐を抱きかかえる。ほのかに温かみがあり死んではいないようだ。
先ほどまでは恐怖の対象だった狐をなんなく抱きかかえたのは、自分に対する強がりだと思う。
(……さて、どうしたもんかな)
この場合どこに連絡すればいいんだろう。警察? ……は何か違う気がするし市役所はすでに受付時間外だ。
それ以前にまずこの狐は一体どこから来たのだろう。野生なのだろうか、だとしたらこのままここに置いていくのが普通なのかも知れない。
しかし、不思議とそうする気にはなれなかった。
「……まぁ、とりあえず。連れて帰るか」
とりあえずこの狐を温めてご飯をやらなければ死ぬだろうということだけは予想がついた。
細かいことは家に帰ってからゆっくりと考えなおせばいい。俺はそんな気楽な気持ちでいた。
しかし、今起こってしまっているいる状態というのはそんな簡単なことではなかった。
俺は鞄を背負い直し狐を連れて戻ろうとした時だった。
「待て!」
振り返った先には5人の男が立ちふさがっていた。
「あ、あんたたち……」
全く気がつかなかった。
見た目は20代から40代のおじさんに見える人まで年齢層はバラバラ。
異様なのはその五人の服装だった。まるで神社の神主が着るような白と黒を基調とした着物、黒の袴、そして鳥帽子。
真ん中に立っていた若い男はさらに異様だった。
一人だけ鳥帽子をかぶっておらず金髪をワックスか何かでツンツンに固め、左耳には派手な赤色のピアスをしている。服と中身が見事にアンバランスな男だ。
ここの神主なんだろうか……。
「よう」
金髪の男が俺に話しかけてくる。
「お前、なんでここにいる? どうやってここに入った?」
「どうやって……って普通にその先から入ってきたよ」
俺は男たちの後ろを指差す。すると明らかに金髪以外の男たちの顔つきが険しいものになった。
『どういうことだ! 人払いの結界はきちんと発動しているはずだぞ……』
『すでに取りつかれてるんじゃないのか?』
『じゃあ、もうこの人間は『喰われた』のか?』
『くそッ!』
金髪以外の男たちがわけのわからないことを話したかと思うと、男たちは俺をまるで親の仇をみるような目で睨みつけ始めた。
「な、なんなんだよ……いったい……」
この場所は立ち入り禁止の場所だったのだろうか。しかし、立ち入り禁止などという看板は見た記憶がない。
「お前、その狐が何かわかってんのか?」
「いや、しらないけど……?」
『しらばっくれんじゃねぇ!! 女狐が!』
金髪の男の質問正直に答える。五人の中で一番若い、大学生くらいのが俺にいきり立った。
「女狐って? 何のことだよ?」
こいつらが腹を立てている理由がいまいちよくわからない。
(俺がここに入ってしまったから怒っているんじゃないのか?)
俺は手に抱えた狐を見下ろす。
「まぁ、落ち着けっての。まだ喰われって決まったわけじゃねぇよ。そろそろ人払いの結界も弱ってた頃だし本当に迷い込んだだけかもしれねぇだろ? あの狐だってもう人を食うほどの余裕もなかったはずだぞ?」
『て、哲也(てつや)さん……』
金髪の男が若い男をたしなめた。どうやら、彼の名前は哲也(てつや)と言うようだ。
「んで、少年。今までのまどろっこしい質問はなしだ」
金髪は俺に向き直った。
「単刀直入に言おう。その狐をこちらに渡してくれないか?」
「は?」
「それとお前の記憶の一部を封印させてもらう」
「………………」
いったい、何が言いたいんだこいつは……。
新手の厨二病コミュニティーのオフ会レクリエーションにでも巻き込まれてしまったのだろうか。
神主の設定でこの山を徘徊しようみたいな。
(さすがにそれはないか……)
こんな辺境の町にそんな痛々しい集まりはないだろうし、都会からここまで来たとも考えにくい。
それに何となくそんな雰囲気ではなかった。明らかに『お遊び』な空気ではない。
(……じゃあ、こいつらは何者なんだ?)
『哲也さん……そんなことをする必要はありませんよ! この人間はもう喰われてます! 狐の演技に違いありません。さっさと殺し……』
「黙ってろ」
金髪の有無を言わせない一言。若い男は金髪の威圧感にやられて続きの言葉が出なくなってしまっていた。
『……すいません』
しばらくたってから若い男は少し不貞腐れたように謝った。
「じゃあ、一緒に来てくれるか? 」
「ちょ! ちょっと待てよ! さっきから意味がわからねぇ!」
金髪のセリフに後ずさってしまう俺。
「わかる必要はない、と本来はそういうのだが……巻き込んでしまったのは謝る、悪かったな……。最終的に記憶は封印してしまうが、お前が協力してくれるためならある程度の質問にも答えよう。万が一記憶の封印が解ける場合があるから全てを話せるわけではないがな」
そう言いながら金髪はタバコを一本取り出した。その一本を口にくわえてライターで火をつける。
どうやら俺は質問を許されたらしい。
「記憶の封印ってなんだよ?」
「……ふぅ……そのままの意味だ。今日の夜にあったことは全て忘れてもらう」
「どうやって?」
「話したところでお前には理解できない」
「……お前たちはいったい何者なんだ?」
「それは言えない」
「じゃあ、この狐は? どうしてこの狐を欲しがる?」
「その狐はうちの畑を荒らした悪狐でな……少し懲らしめてやらないといけない」
「………………」
明らかな嘘、それか要領を得ない回答ばかりだ。どうやら初めから何も教えてくれる気はないらしい。こいつらは信用できない。
「もういいか?」
金髪は煙を吐き捨てるように言った。
「いいわけねぇだろ!」
俺は逃げる決心を固めた。とにかく町の方まで行けばなんとかなる。
俺は頭を巡らせる。ここから逃げるにはどうしたらいい? 森に逃げ込めばなんとかなるか……。
「やめとけ」
「……ッ!」
「これは『お願い』じゃない。お前が抵抗するなら、少し痛い目にあってもらうだけだ」
金髪のタイミングのいい一言に俺の脳内はフリーズさせられた。俺の考えは読まれてしまっているようだ。
『哲也さん……一応逃げられないように人間に感知する結界を張っておきます。それぐらいはいいでしょう?』
「……ああ」
金髪に了解を取った30代ぐらいの男は懐から何か取り出した。
 (あれは……お札?)
『……ぬん!』
「なッ!」
30代の男が気を込めるとお札が白く光りだす。
(て、手品か……?)
そういえばこないだテレビでmr、マリなんとかがこんなマジックをしていた気がする。
『な……なんだこいつ……結界に反応しない?』
なんて暢気なことを考えていると突然30代ぐらいの男が騒ぎ出した。
『どうした?』
『こいつ……霊力がまるでない』
『どういうことだ? じゃ、じゃあやっぱりもう喰われていたのか……?』
『わからん……』
などと話し合っている。
『ちッ! 今度こそ言い逃れはできねぇぞ!』
若い男が今度こそと俺に掴みかからん勢いで俺を睨みつける。
「言い逃れ? さっきから『喰われる』だのなんだのって……いったい何なんだよ!」
『うるせぇ!』
「おい馬鹿! やめろッ!!」
金髪の制止を聞かず若い男が懐からお札を取り出した。
直後、お札が茶色く光りだす。
(……まずいッ!)
本能的にそう感じた。全身から鳥肌と脂汗が噴き出し、体の細胞の一つ一つが『逃げろ!』と警告音を鳴らしている。
しかし、当の体は言うことを聞かず動かそうにも動けない、金縛りにあってしまっていた。
『死ねぇ!』
そう言うと若い男はお札を地面に投げつけた、刹那。
「なッ! ……んなんだ……これは……ッ!」
若い男の真下の地面が石路ごとが盛り上がり3mほどの津波となって俺に襲いかかってきた。
なにが起こったかわからない。世界がスロー再生され巨大な土石流の壁が迫ってくる。しかし、それでも俺は動くことができなかった。
「う、うあぁあああああ!!」
津波に飲み込まれる瞬間恐怖の中で俺が唯一できたのはポケットの中のお守りを握りしめ目を閉じることだけ。
そうして俺は土の津波に飲みこまれ…………飲みこまれ…………。
(…………あれ?)
何時までたっても俺が津波に飲みこまれることはなかった。
俺はゆっくりと目を開く。
「……???」
声も出なかった。目を開いた俺が見たものは『白』。
先ほどまでの土石流どころか神主の五人も艶やかな桜も月も神社も何もない、だだ白の空間。
次から次えと……うわけがわからない。
(今日は厄日だな……)
変な神社に迷い込んだり、狐が喋る白昼夢をみたり、挙句の果てにはわけのわからない集団にわけもわからず襲われて、しかも地面が盛り上がって……。
「今度はなんだ? まさかここはあの世とかじゃないだろうな……」
こういう場合は全てが夢だったと、今も夢の中にいるのだと考えるのが普通なのだろうが。
立て続けに起こりづつけているあまりに『リアルすぎた非日常』に俺の頭はマヒしてそんなことさえ思いつかなかった。
「もうどうにでもなぁれ……」
などとそんな言葉で全てが片付いてしまえばどんなに楽だろう。
『……ろき……りなさい』
どこからか声が聞こえてくる。懐かしく包み込むような安心感がある声だ。
『……弘樹……走りなさい』
「母さん?」
と、思ったころには俺は走り出していた。
どこに向かってるかはわからない。ただ前へと走り出した。
「……え?」
気がついた俺は家の前にいた。
何事もなかったかの様に自宅であるアパートの前に立っていた。ただアルバイトから帰ってきたときのいつもの光景。周りには質素な住宅街が広がっている。
ただいつもと違うのは……

「………………」

俺の腕にはしっかりと狐が抱かれていた。


<<<< 第弐話


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


やっとそれっぽくなってきました。

一応、和風ファンタジーのつもりなのですが……。

何となくお笑い要素を入れたくなってしまう(;一_一)

ここまで読んでくださった方がもしいらっしゃれば、

頑張って書きますのでこれからも読んでいただけたりすると嬉しいです!!

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category: 尾裂狐と俺と陰陽師

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尾裂狐と俺と陰陽師 序の弐 

遅刻してしまいましたぁああああ 三三m(_ _)m(ジャンピング土下座)
週末は少し予定が入ってしまいまして更新ができませんでした……。
言い訳ですねはい
まぁ、この小説を読んでいる人なんてかなり少数だから……
いや、この考えはよくないか
とりあえずすいませんでした!!

まだ序盤ですが、一応バトル物となる予定です。
もしよろしければ読んでやって感想などいただけると嬉しいです!! 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

大野骨董品店(おおのこっとうひんてん)、町はずれにある古びた骨董品屋。今にも崩れてしまいそうな外観の二階建ての一軒家である。
壁は茶色く濁りところどころひびが入っていて、正面に掛けられた看板は錆つき赤いペンキで書かれた『大野骨董品店』の文字は雨風にさらされ茶色に変色し少し禿げてしまっていた。
店主である源じいが30歳のころにこの店を始めたらしいので、かれこれ47年ほどの歴史を誇る。もうそろそろ半世紀の年齢になろうとせん佇まいだ。
しかしながら中に入るとその内装は意外と小奇麗であった。
狭いながらも整理された商品。大小さまざまな坪はピカピカと輝き自分を買ってくれと自己主張をしており、並べられた日本人形にも特有の不気味さはなくその表情は柔らかい。
その他の骨董品にも手入れは行き届き、なんというか全体的にい明るくあたたかいのだ。
まぁ、結局外見のせいかこの店に客が入ってることなんてほとんどなく、骨董品の手入れも俺が学校に行っている間に源じいが全てやってしまうので、この店のバイトである俺こと安部(あべ) 弘樹(ひろき)の業務と言えば……。
「……王手」
「ああ! ちょッ! 待った! 待っただ!」
「えー、まだですか?」
こうして店の奥で店主である大野(おおの) 源(げん)、通商、源じいの将棋の相手をすることである。
「婿殿! ちょっとは手加減せんか!」
「いやいや、手加減しらたいつも源じい怒るじゃないですか」
御年(おんとし)77歳のくせにかすれた大声張り上げて本当に元気なじいさんだ。
背筋もピンと伸びているし、分厚い老眼鏡の下の目はぎらぎらと輝いて生気を放っている。このじいさんは100歳過ぎてもピンピンしてそうだ。
「うるさい! 俺は婿殿の雇い主だぞ本気を出しながら俺に勝たせんか!!」
「無茶苦茶言わないでください……」
そんなこんなでいつものように将棋は俺が優勢で試合が運んでいるのだが。
こんなことで経営が成り立つのかといえば……一応は成り立っているようだ。でければ俺はここにアルバイトとして雇われることはない。
たまに、それこそ1、2ヶ月に一回、高級そうな車に乗った『いかにも』な雰囲気を漂わせた客がやくる。
その客の手には大概、どてかいアタッシュケースがにぎられており源じいは客を奥の部屋に招き入れる。
数分立って出てきたかと思うと、すでに客の手にアタッシュケースはなく坪やらの商品を持って帰るのだ。
怖いのでアタッシュケースの中身を聞いたことはない。
「にしたっておかしいだろ。俺だって弱くはない町内のジジイどもの中では最強といってもいいぐらいだぞ」
「……そうなんですか」
と、言われたところで俺は町内の将棋のレベルなど知らないのでどういう反応をしていいものか困るのだが。
「婿殿はこういう戦略ゲームになると『無駄』に強いな」
「無駄って言うな無駄って……」
確かに俺は戦略系のゲームは得意だった。小さい頃、よく親父に教えてもらってチェスだの将棋だの囲碁だのをしていた記憶がある。
自宅には碁盤、将棋盤、チェスボードなどがあり、今でもよく一人で詰将棋をしたりする。実はTVゲームなんかををするよりそっちの方が好きだった。
「金次郎とどちらが強いんじゃ?」
「将棋は137戦71勝ぐらいですかね。今のところ勝ち越してます」
「ほう、やるではないか」
「いや、単にあいつは教科書に忠実なんですよ。その分手が読みやすいだけです」
「それでもあの金次郎を負かすなんて大したものじゃよ」
「………………」
まぁ、そう言われればそうなのかもしてない。今までたいして意識していなかったが。
俺が唯一あいつに張り合えるとことと言えばそれぐらいしかないからな……情けない話。
奴は昔からなんでもできたからなぁ……。近くにいるとよく自分の無力さが思い知らされたもんだ。
「………………」
「……ふむ、まぁ、気にすることはない」
「え?」
「金次郎はいろいろと特別だ。それにあやつと婿殿を比べるのは間違えだよ」
「な、何かですか?」
「どうせ、また自分は他人に劣っておるとか考えていたのだろう?」
「そんなことは……」
「ごまかさんでいい」
源じいはが駒を打つ音が俺の言葉を詰まらせる。源じいは老眼鏡の奥からぎらぎらとした目で俺を見据えた。
「結局、人は自分の目に見える世界でしか生きられないんだ。金次郎には金次郎の見える世界があり、婿殿には婿殿の見える世界がある。その世界が広いか狭いかで人間の価値が決まるわけじゃない」
「………………」
「お前がお前の世界を壊されそうになった時、お前の世界の住人を傷つけられそうになった時、それを守れればお前は立派なヒーローだ。人間の価値なんぞそんなもんだよ」
この人にはなんというか有無を言わさない威厳がある。現に俺も言葉が詰まってしまっていた。
「おっと、これ以上は説教臭くなってしまう。悪いな、年をとるとこうなるのがけない。ほれ、次はお前の番だぞ」
悪い悪いと湯のみでお茶をすする源じい。
「あ……」
ぼんやりと源じいの話を聞いてしまっていた俺はあわてて次の手を考える。
「えっと……」
(やばいぞ、全く考えてなかった……)
軽いパニック状態に陥ってしまった俺は自分が優位に立っているの忘れて、鈍った頭を必死に回転させ始める。源じいの手は妙手でそれは俺をさらに混乱させた。
「くっくっくっ……どうした婿殿よ」
源じいは楽しそうに笑う。そんな時だった。
「ただいま!」
俺にとっては救世主ともいえるべきはつらつとした声が、店の入り口とは逆の裏口の方から飛んでくる。この声の主はたぶん優奈だ。
よかった、どうやら彼女のおかげで一呼吸置くことができそうだ。
リズムのいい足音からして優奈は自室のある二階には向かわずに直接店の方に出てきているのだろう。
「ちっ! 邪魔が入ったか」
源じいはつまらなそうに湯のみのお茶を飲み干した。その数秒後、優奈が奥の部屋から顔を出す。
「おう、おかえ……」
「やっぱりいた! 弘樹ッ!!」
と、俺の挨拶を遮ったこの無礼な少女は大野(おおの) 優奈(ゆな)、金次郎と俺のもう一人の幼馴染だ。
パッチリとした瞳が特徴的で、髪型は左右の髪で二本づつ合計4本の三つ網を作り髪全体をポニーテールでまとめていた。
優奈はこの大野骨董品店に源じいと二人で住んでいる。
彼女の両親は彼女が物心つくころにはすでに他界していたからだ。俺も優奈の両親の顔は写真でしか見た子どがない。
源じいの男手一つで育てられてきた優奈は、顔は結構可愛いのに発言や言動がボーイッシュで、悪く言えば女の子らしくなく良くいえば親しみやすい性格をしている。
セーラー服の紺のスカートを動きやすいようにと短く着こなし下にスパッツを着用しているのは彼女の活発さをよく表しているだろう。
運動神経のいい優奈はいろいろな部活を掛け持ちしており、俺が知っているだけでテニス部、料理手芸部、ソフトボール部、バレー部とたくさんある。
そのため優奈がこんな早い時間に帰ってくるのは珍しいことで、俺はその訳を聞きたかったところなのだが……。
「ど、どうしたんだ?」
優奈は俺の肩を掴んで前後にぐわんぐわん揺らしていた。脳みそがシェイクされる。
「どうしたんだ? じゃないよ! どうして今日、僕が昼休み迎えに行った時にいなかったのさ!」
「は? どうしてって……」
そういえば金次郎が何か言っていたな、優奈が探しているとか何とか……。
「なんだよ、何か用事でもあったのか?」
俺は優奈に尋ねる。俺としては約束などした記憶がなかったからだ。
「昨日メールしたでしょ?『料理部でマフィンを作るるんで、その味見をしてほしいから昼休み予定を空けておいて』って! 」
「は? いやそんなメールは着てなかったはず……」
俺は携帯を確認しようとポケットをまさぐる。
(……ん? あれ?)
しかし、俺のポケットから出てきたのは一つの古びたお守りのみだった。これは昔母さんが俺にくれていつも身につけているものだ。
そして、そのお守り以外俺のポケットに入っているものはない。俺の携帯はいったいどこへ……。
「ああ! そういや昨日充電が切れてそのまま充電機につなぎっぱなしだ……」
「なッ!」
優奈の一瞬表情が固まり、次の瞬間にはがっくしと力なく肩を落とした。
携帯をほとんどといっていいほど使わない俺はこうやって家に忘れてしまうことが結構あった。
それでも普段ならメールなんて来ないのでたいして影響はないが今回は少しタイミングが悪かったようだ。
「おうおうそれはなんというか、ご愁傷さまだな孫娘よ。あんなに朝早くから出掛けて行ったのにな」
「お、おじいちゃんは黙ってて!」
「くっくっくっ!」
なぜか顔を赤く染めた優奈を見て源じいはいやらしく笑っていた。
しかし、なんというか悪いことをしてしまった。普段からもう少し携帯を利用すべきだろうか。
いや、まぁ、利用したくても特にメールしたりする相手もいないんだけどね……。
「まぁ、何はともあれ悪かったな」
俺は優奈に素直に謝った。
「もういいよ……はい、これ」
「ん? もしかしてそれが……」
「うん、結構うまく焼けたから」
優奈からピンク色の包みを受け取る。その包みは頭はかわいらしい赤のリボンで縛られていた。
手のひらサイズのそれはほのかに甘い香りを漂わせている。
「そうか、ありがとう。じゃあ家で食べ……」
俺はもらったマフィンをかばんに直しておこうとして……。
「バッカモーン!!」
源じいがいきなり某魚介類一家の大黒柱のように俺を怒鳴りつけた。
「な、なんですかいきなり」
「婿殿は少しは そんな事だからクラスの女の子の中では陰で面白くない奴とか、影が薄いとか言われるんだぞ」
「え!? ちょっと待って! 初耳なんだけどそれ! てか、なんで源じいがそんなこと知ってるの!?」
「そんなことはどうでもいい」
「いやいや、俺にとっては結構重要なことですよ! 今後の俺の高校生活において!」
「なら少しは頭を使え! この頭は将棋をするためだけにあるんじゃないだろ?」
「って!」
源じいは人差指で俺の頭を小突いた。 
「こういうときはなその場で食べてあげて、そのばでおいしいねって言ってあげるのが男ってもんだ」
「そ、そうなのか……?」
「まったく、婿殿は女心ってもんをわかってない」
「………………」
確かに俺は女心なんてものはよくわからないので言い返すことができない。
「優奈もその方がいいんだろ?」
「うん。まぁ、今食べてもらって直接感想を言ってもらった方がうれしいね」
源じいの問いかけにうなずく優奈。目の前で優菜の瞳は期待するように輝いていた。
「そうか……」
うん、まぁよく考えれば今食べて感想を言った方が作った側としてもうれしいかもしれない。
そんなところに頭が回らないから俺はモテないのだろう。うん、そうだ! そうに違いない。
決して顔がさえてないだとか、頭もたいして良くないないだとか、身長も……これ以上はやめておこう。
「じゃあいただきます」
現実逃避もそこそこに俺は包みを開く。中には独特のカップの型にチョコマフィンが入っていた。
ココアでも使っているのだろうか、茶色いマフィンからチョコチップが頭を出しておりなんとも甘味なにおいを漂わせている。
まぁ、優奈は昔から大野家の料理や掃除、洗濯などを担当してきた分、家事スキルがが高い。なので味の心配はしていなかった。
俺は型を少し剥いでマフィンを一口食べる。
「……うん、うまい」
予想通り、優奈の作ったマフィンはうまかった。
見た目より甘さ控えめで生地がしっとりとしているチョコチップにはビターチョコを使っているのだろうか、俺の好みに合わせて作ってくれたんだろう。
「ほんと? よかったよ!」
どこか安心したように息をつく優奈。
俺はマフィンで乾いた口を湯のみのお茶でうるおしてから言った。
「ありがとうな」
「いえいえ、こっちが味見してほしかっただけだからね」
そう言って優奈は俺からいらなくなったピンクの包みを受け取り綺麗に折りたたんだ。こういうところは女の子だ。
俺はマフィンをもう一口頬張りながら将棋の駒を進めた。
あと2~3手で源じいは詰むだろう。そんな状況に嫌気がさしたのか、それとも考える時間が欲しかったのか、源じいは新たに話題を切り出した。
「そんなことより孫娘よ。あの話はもうしたのか?」
「え……」
「あの話?」
源じいのセリフに首をかしげる俺。
「なんだ……その様子だとまだ話していなかったのか?」
「う、うるさいなぁ! 今日話そうと思ってたんだよ!」
「……?」
いったい何の話だろう。なぜか優奈が少しそわそわしているようにも見える。
少しためらうような間をおいてから優奈は話し始めた。
「弘樹は、先月隣の町に遊園地ができたの知ってる?」
「ああ、なんかチラシが入ってたな」
確か、観光地がないこの一帯に名物を作ろうと県と企業が協力して建設していたかなりでかいものだったはずだ。世界最大級の観覧車が売りなのだとか。二年ほど前から建設が始まりつい先月の完成披露宴はニュースでも取り上げられていた。
確か、インパクトパークって名前だったような……。
「それでさ……僕、その遊園地の優待券もらったんだけど……それが最大5人まで入場できるんだよ……」
「へー、それはずいぶんとレアな物を手に入れたな」
インパクトパークは完成はしているがまだ一般開放はされておらず。今、入れるのは優待券を持った一部富裕層や抽選で選ばれたの幸運な人間だけ、一般公開は夏の始まりぐらいになるらしい。
実際に手に入れたのは俺だがなと源じいは次の手を打ちながらぼやいていた。
「うん……でさ……も、もしよかったら今度僕とその遊園地に……」
「おう! いいぞ!」
「え?」
「遊園地いくんだろ? 是非とも俺も連れてってくれ!」
「いいの!?」
「いいも何も……」
逆にこちらからお願いしたいぐらいだ。こう見えても俺はジェットコースターとかアトラクションが結構好きだったりする。
完成したばかりの遊園地のが無料、しかもほぼ待ち時間なしで体験できるなんてこんな機会めったにないだろう。
一般公開が始まってしまえば待ち時間だけで時間を取られてあまり遊園地を堪能でないだろうからな。
「でも久しぶりだな三人で遊園地なんて……」
「……え? 三人?」
「ああ、金次郎も行くんだろ? そういえば久しぶりだな三人で遊園地なんて行くの」
「あ、えっと……その……」
「……? どうしたんだ?」
もごもごと口ごもってしまう優奈。いつもはっきりと意見を言う優奈にするとなかなか珍しい光景だ。
「金次郎は……あれだよ! あいつ本読むので忙しいし……そうだよ! そろそろ模試があったでしょ? 勉強とかして断られるんるんじゃないかな?」
「うーん……誘えば来ると思うけど」
「いいや、来ないね! 絶対!」
「そ、そうか……?」
優奈のすごい剣幕に気押される俺。
確かに金次郎は騒がしいところは嫌いだし、模試とか近かったら遊びの誘いも断られることもあるが。
(まぁ、誘えば嫌とは言わないだろうし、無理に連れていくのもな……)
「じゃあ、二人で行くか。たまにはそういうのも悪くないな」 
「そ、そうだね! じゃあ、今週の週末なんかどうかな? 僕その日は部活も何もないんだ!」
「週末か……ああ、俺も特に予定はなかった」
まぁ、俺の休日の予定といえば、趣味のミリタリー系の雑誌を買いに行くか。優奈か金次郎、それか両方が遊びに来る、または遊びに行くぐらいしかないが。
「じゃあ決まりだね! ……やった」
妙にテンションが高い優奈。そんなに遊園地へ行きたかったのだろうか、俺に背中を向けて小さくにガッツポーズまでしている。
しかし、遊園地か……本当に久しぶりだ。最後に行ったのはいつだったかな。確か中学校ぐらいの時に姉さんと俺、金次郎、優奈で行ったっきりだったような気がする。
「……二人で……遊園地」
「孫娘よ……気持ちはわかるが一人でにやにやするのはさすがに気持ち悪いぞ……」
「にゃッ! にやにやなんかしてにゃい!」
「落ち着け……」
源じいは飽きれたため息をついている。
「……?」
思い出に浸っていたせいか、源じいと優奈が何か話していたようだがよく聞こえなかった。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもないよ! 僕、夕飯の買い出しに行ってくるね!」
「買い物って……これから行くのか?」
「うん、夕飯の材料の買い置きがなかったからね。買ってこなきゃ」
「なんで帰りに買ってこなかったんだよ?」
「そ、それは……」
「それは婿殿に早くマフィンを食べてほしかったから……」
「おじいちゃん!!」
「……はいはい、年寄りは黙るわい」
源じいは次の手を打った。
(え? 王をそこに動かしたら……)
俺は先ほど源じいから奪った金を王の前に置いた。
「じゃあ、行ってくるね!」
そそくさと店の入口の方から出て行ってしまった優奈。おかしな奴。
「……あやつもそろそろろ行動と起こさんといかん。いくら婿殿が金次郎に隠れて目立たんといっても、いずれ誰かは婿殿の魅力に気づくだう……」
「は? 何の話ですか?」
「と言っても、当人の婿殿がこれではな……」
「……?」
「なんでもない。さて、続きをしよう」
源じいはごまかすように次の手を打とうとするが。
「いや、もう詰めましたよ?」
「なぬ! 卑怯だぞ! 王手といっとらんぞ婿殿!」
「言いましたよ! 源じいが聞いてなかったんじゃないですか!」
「ぐぬぬ……! もう一戦! もう一戦だ!」
源じいは悔しそうに歯をかみしめていた。まぁ、いつものアルバイトの光景だった。



<<<< 第壱話   第参話 >>>>



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はい、まぁ例のごとくラブコメが大好きな某hです。

まだ序盤で日常ばかりでぐだってしまいそうですが今後もがんばって書いていきます。

あわよくば12月のMF文庫の締め切りに間に合えばいいなぁ……と思ってるんですが。

少し厳しいかもです。

別の通常更新でも書こうと思っているのですが、今年の年末はコミケに参加することになりまして(お客で)

まぁ、いろいろと予定がたまっている12月です。


彼女ができる気配は全くないがな!! 

category: 尾裂狐と俺と陰陽師

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尾裂狐と俺と陰陽師  序の壱 

ニコ生見てたりしてたりしたらこんな時間!!ビクゥッ∑(OωO )

ということで急いでうpさせていただきました。

感想なんかいただけるとすごくうれしいです!!



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皆さんは【尾裂狐(おさき)】っと言うものをご存じだろうか?
キツネの姿をした妖怪(あやかし)で尾が九本存在する。九尾の妖狐といったほうが一般的かも知れない。
厳密にいえば、尾裂狐(おさき)というのは尾を数本持つキツネの総称であり九尾のキツネ=尾先っという認識は間違っているのかもしれないが今はいいとしよう。
九尾、白面で金の毛並みと九本の尾、そして圧倒的な力を持つ大妖。
万単位の年月を生きた古狐が化生したものだともいわれ、赤子のような声で鳴き人を喰らう。
絶世の美女に化けるのも有名で、日本だけではなく世界各地で記録が残っている。中国で言う妲己(だっき)、日本で言えば玉藻前(たまものまえ)は知ってる人なら知っているかも知れない。
伝承や創作でも何かと悪しき霊的存在、憑き物として扱われることが多いが『事実は、すべての尾裂狐がそうと言うわけではない』っというのは、俺のバイトで先である骨董品屋のじいさんの受け売りだ。
このじいさんがやたらと伝説だの妖怪だのに詳しくて、俺がいま語っているうんちくはすべてそのじいさんから聞いた話だ。
まぁ、でも、俺はこの尾裂狐という存在は所詮おとぎ話の中の存在であり小説や漫画、じいさんの話の中でしか存在しないものだと思っていた……。

「………………」
「――ずずずずッ! うまい!」

しかし、現実はどうだろう。
目の前で、俺の晩飯である即席麺の赤いキツネうどんを景気のいい音ですする少女は確かに尾が二本と頭から狐の耳が生えていた。
見た目中学生くらいの発育途中な体つき、貸してやった俺の大きめのパーカーがぶかぶかでワンピースのように彼女の体を隠している。
流れるような神々しさを放つ金というよりは白に近い髪、黄金に輝く瞳、そしてまるで漫画やアニメで描かれる美しくもかわいらしい容姿は手にもたれた赤いカップ麺と顔に付いたうどんのネギによって台無しにされてしまっていた。
色気より食い気という言葉は、実は彼女のために作られた言葉ではなかろうか。
「……ぬ?」
彼女が俺の視線に気がついたようだ。
「どうしたのじゃ弘樹(ひろき)? そんなに見つめて……もしかしてわしの『カップうどん』が欲しいのか? ふむ、少しだけなら分けてやってもいいぞ」
「いや、それ俺の晩飯だから、『お前の』カップうどんじゃないからな?」
という俺の抗議は彼女にはすでに聞こえておらず、自称九尾の少女はてかてかと光り輝く油揚げにご執心のようだ。
くれる気ねぇじゃねぇかという俺のツッコミは何の意味もなさないので口には出さない。
「はぐはぐはぐッ!」
黄金色の目をらんらんと輝かせ油揚げにむしゃぶりつく少女。
「うまいのぉ……カップ麺とやらは初めて食べるのじゃがお湯を入れるだけでこんなにうまいものができるとは……。人間の進化も捨てたものではないの」
少女は耳と尻尾をパタパタとご機嫌に揺らす。
「さいですか……」
俺の憂鬱なため息はうどんの湯気とともに六畳間の俺の部屋に消えていった。
そろそろうどんを食べ終わろうとせん彼女を眺めながら、どうしてこうなったのだろうかと俺はそんなことを思い出していた。




校舎の屋上は、今日は暖かかった。
屋上に設置された青いベンチに腰をかけながら空を見上げる。空は青く澄み、綿菓子のような雲は自由に泳ぎ回っていた。
一通り空を眺めてから俺は視線を下す、山の中腹あたりに建てられたこの校舎の屋上からは自分の住む町が一望することができる。
この高校に入学して一年と少し、この人の寄り付かない穴場を見つけてちょうど一年ぐらいがたっただろうか、この景色も見慣れたものだ。
「………………」
俺はここでこうしてぼんやりしてるのが大好きだった。まわりは静かで遠くからはかすかに思い思いの昼休みを楽しむ生徒たちの声がする。
ベンチが設置されてるのだから別に禁止されているわけではないのだろうが、この屋上には不思議と人が集まらない。というか全く来ない。
俺がここで新しい人に出会ったのは俺が最初にここに訪れた時の一回のみだ。
「……ん?」
俺はふと足にもぞもぞとした違和感を感じ視線をさらに下に向ける。すると俺の足元で黒い毛の塊がうごめいていた。
「……にゃあ」
「おお、みょうたらか」
俺は俺の足にすり寄ってきていた猫をベンチの上に乗せてやる。すると猫は俺の膝に飛び乗り毛づくろいを始めた。
こいつの名前はみょうたらこの屋上の数少ない住人の一匹、この屋上に住み着く黒猫だ。
いったいなぜ校舎屋上に猫がいるのか、どこから迷い込んだのか、それはわからない。ただみょうたらはずいぶんと前からこの屋上にいるようで俺がここを見つけた時にはすでにここいた。
ここに人が集まらないのはこの猫にとってもよい方向に働き、教師やほかの生徒にはばれていないようだ。
「にゃあ」
一通り毛づくろいを終えたみょうたらが何かを期待するように俺を見上げる。俺はこの猫が言わんとしていることをわかっていた。
「もうちょっと待ってろ。もすくぐ来るだろうから。今日の当番は俺じゃないんだよ」
「……にゃぁご……」
俺の言っていることを理解したのだろうか、お前はようなしだとでも言わんばかりにみょうたらは俺の膝の上でまるまって居眠りを始めた。
この猫は時たまこうやってまるで人の言葉がわかるかのような行動をとる。まったく、不思議な猫だ。
「………………」
みょうらたを見ていたら俺も眠たくなってきた。まだ、寒さが残る季節ではあるが太陽は朝方の布団のように暖かかった。
(……さて、どうしたもんかな)
昼休みは短い、今寝てしまえば確実に次の授業までにおきることができないだろう。それは避けないといけないのだが……。
(……次は美術だったか? まぁ、一時間ぐらいサボっても大丈夫かな)
最近の若者は精神が軟弱なのだ。
よし、寝よう!っと俺がそんな情けない決心を固めて目を閉じた。

「………………」

それから数分、風が演奏する木々のざわめきを聞きながら俺がみょうたらと一緒にうとうとと船をこぎ始めた時だった。
「……おきて」
突如、俺と太陽を遮る影が現れた。急に太陽の暖かさを失った俺は布団を取り上げられたように身震いする。
「うぅ……葵(あおい)か?」
顔を確認するまでもなく俺は彼女の名前を呼んだ。この屋上に来る人物は限られているからだ。
かすんだ目をこすり、視界をはっきりさせると時代錯誤で地味なセーラー服を着た女子生徒が立っていた。
彼女の名前は土御門(つちみかど) 葵(あおい)俺とクラスは違うが俺と同じ二年生だ。
邪魔だからという理由だけで、ミディアムショートに切られた髪型。その割に肩までかかるぐらい長いもみあげを、何やら高級そうな赤いリボンの髪飾りでまとめている。
体の線が細く、身長は女子にしては平均ぐらいなのだろうか、そこらへんの基準はよくわからんが。
しかし、特筆すべきは彼女の持つ特殊な雰囲気だろう。威圧感とは少し違うのかもしれないが彼女には誰も寄せ付けない、いや、近づいてはいけないようなそんな空気を放っている。
彼女自身もあまり他人にかかわろうとせず、整ったその綺麗な顔は異常ほどに表情変化が少ない。一見何を考えているのかわからず、つかみどころのない少女だ。
しかし、一年も彼女との付き合いがあればもう慣れてしまった。それに彼女は少ないながらもしっかりと表情を持っており、最近ではその微妙な変化もわかるようになってきている。
たとえば今、葵はどこか卑下するような目で俺を見下していた。…………ってあれ? どして?
「………………」
「ど、どうしたんだ?」
何も言わず、視線だけで俺を非難する彼女に真意を訪ねる。なんというかすごく居心地が悪い。
たっぷりと10秒ほど間をあけてから、彼女はゆっくりと口を開いた。
「……午後の授業……サボるの?」
「ッ! そ、そ、そんなわけないだろ? な、なんで?」
「……今、寝てた」
「え? あ、いや、そんなつもりは……」
葵には意外と真面目な一面がある。こうやって俺が授業をサボろうとしたり、ずぼらをしようとするとすぐに目から冷凍ビームを放つのだ。俺はこの目が苦手である。
以前、俺があまり成績がよろしくないという話をしたときなんて昼休みと放課後の時間を使って屋上で無理やり勉強をさせられたことがあった。
まぁ、結果的に彼女の教え方は非常に分かりやすく、そのおかげで成績は幾分か伸びたわけだが。
授業をさぼったりなんかしたらまた強制勉強会に参加されられるかも知れない。そんなわけで、俺は必至で体裁を取り繕う。
別にサボろうとした証拠があるわけじゃないんだ、なんとかごまかせるかもしれない。
「これはだな、ちょっとうとうとしてただけであって……」

「………………」

「チャイムがなったらきちんと教室に戻るつもりだったし……」

「………………」

「……あ……うん……なんというかその……」

「………………」

「すいませんでした」
頼むから、そんな冷たい目で俺を見ないでくれ。彼女には全くかなう気がしなかった。
よく考えれば、俺も葵が来ることがわかっていたのになぜサボって居眠りしようなどと考えたのだろうか。
「なぁご……」
俺を見上げるみょうたらは情けないとでも言いたいのだろうか。うるせぇよ畜生。
猫とにらみ合いををしていた俺だが、先にみょうたらの方が俺から興味が失せたようだ。みょうたらは俺の隣に座った葵の膝の上に飛び移る。
葵はビニール袋を取り出していた。中には大量の煮干が入っているようだった。今日は彼女がみょうたらの食事当番なのだ。
「なんだ、結局お前は飯か……現金な奴だなぁ……」
「……にぁあ」
なんとでも言えと言いたいようにみょうたらは葵の手から小ぶりな魚の煮干をくわえるとむしゃぶり始めた。
猫に相手にされない人間。なんかすごく屈辱だ。しかし、ここでこれ以上むきになるのも馬鹿らしい。
どうすることもできないモヤモヤ感をため息で吐き出してから、俺はしばらく葵とみょうたらを静観していた。
みょうたらが煮干をたべきるごとに、一本、一本手渡しで餌をやる葵、なんというかすごく楽しそうだ。
いや、まぁ例のごとくほぼ無表情ではあるのだが。しかしよく見ると、目と口元がほんの少しだけ緩んでいる。
そういえば、彼女と初めて会った日も彼女はこんな表情でみょうたらに餌をあげていた気がする。
(よく考えれば、もう一年も前の話なのか……)
あの時、俺はまだ葵のことをよく知らず、なぜそんなにおもしろくなさそうなのかと思っていた。
「………………」
「……そろそろ」
「ん?」
ふと、鈴がみょうたらを膝から下す。

「どうしたんだ?」
「……予鈴が鳴る」
彼女は屋上に設置された時計を指差す。確かに、あと少しで予鈴が鳴るだろう。
「じゃあ、もどるか……」
葵は無言でうなずき立ちあがった。
葵に続いて俺も重い腰を上げる、本音を言うと授業終了までここでとどまっていたいがそれは葵が許してくれないだろう。
「じゃあな」

「にゃぁ……」
みょうたらは少しさびしそうにそしてどこかつまらなそうに鳴いていた。



「おう、お帰り」
俺がクラスの席に戻ると、俺の前の席に座るイケメン眼鏡が俺を出迎えてくれた。
「金次郎(きんじろう)か……」
あまり交友の広くない俺を出迎えてくれる奴など決まり切っており、こいつはその数少ない友人の一人、仁部(にべ)金次郎(きんじろう)だ。
俺の小学生の時からの竹馬の友である。
「どうでもいいが金次郎、出迎えの時ぐらい本から目を離したらどうだ?」
「ちょっとまて、今いいところなんだ」
そう言って、金次郎はさらにページをめくった。そんな金次郎を横目に俺は自分の席に座る。
ふと、俺はいくつかの視線がこちらに向いているのに気がついた。しかし、これは俺に向けられたものではないと俺は知っている。
この視線は金次郎に向けられた物、正確には金次郎に向けられた女子からのあこがれの視線だ。
逆に俺には『邪魔なんだよ』という殺気が向けられている……なんだよこの差は……。
いや、まあ単純にスペックの違いなんだろうけどね。
全国模試で常に上から10本の指には入り、運動神経抜群、おまけに、まさにアイドル顔負けというべき容姿なのだから世界は何かが間違っている。
しかし、金次郎はこのように非の打ちどころがない奴ではあるのだが、こいつにも一つだけ欠点がある。それは他人に対してあまり興味がないということだ。
俺のような昔からなじみのある奴とは普通に接してくれるのだが、全く興味がない奴に対しては反応すらしない。そのせいで泣いた女の子も数知れずいるようだ。
「ふぅ……すまなかったな」
金次郎は本にしおりをはさんでたたむと机に置いた。中指で眼鏡のずれを直す姿は無駄にさわやかで殺意がわく。
なんというか、こいつからは常にイケメンオーラが出ていた。彼が本を読むさまは言うまでもなくイケメンで爆発してほしいし、運動をしている時もほとんど彼の独壇場で爆発してほしい、こないだなんてテストでオール満点を取りさらに女子からの注目度が上がっていた、ほんとに爆発して欲しい。
……はい、ひがみですがなにか?
「で、今日は何の本を読んでたんだ?」
俺はこれ以上俺の醜い心が露呈(ろてい)しないようにするため金次郎に話題を振ってみることにした。
「『で』っていうのはよくわからんが。犯罪心理学の本だ」
金次郎は高級感があふれるハードカバーの本を俺に手渡す。
本を受け取りずっしりとした感触を確かめた。本の側面には『犯罪心理学の全て』と題がうたれており、ページをパラパラとめくってみるとびっしりと圧縮された文字が俺の視界を埋め尽くしていた。
「なんというか……またすごい本をよんでるな。いつものことだが……」
「……? 面白いぞ? 興味があれば貸してやろうか?」
「いや、遠慮しとく」
こんな本を読み始めたら、のびたくんよりも早く眠りにつける自信がある。俺は本をさっさと金次郎に返した。
「そうか……」
この本の共感者でも欲しかったのだろうか、金次郎は少しだけ残念そうにしている。
それならもっとほかの奴とも関わればいいのに、そうすれば一人ぐらいはお前が読むような本の共感者が…………現れるとは思えないが。
高校生で犯罪心理学の本読んでる奴なんかそうそう居ないだろ……。
「そういえば、優奈(ゆな)がお前のこと探してたぞ」
金次郎は本を机の中に直すと次の美術の教科書を出しながらそんなことを言った。
「優奈が?」
優奈とは俺のもう一人の幼馴染の名前だ、クラスは違うが同じ学園に通っている。
「ああ、昼休みに来てな。なにか約束でもしてたのか?」
「いや……そんな記憶はないが……」
そういえば今日はまだ優奈に会っていない気がする。いつもなら朝うちのクラスに来て俺と金次郎と談笑しているのだが今日はいなかった。
「メールでも打っておいた方がいいんじゃないか?」
「いや、いい。どうせ今日バイトだし後であうだろ」
それこそ、急ぎの用なら向こうからメールなり電話なりしてくるだろうしな。
「バイトって源じいさんのところか」
「ああ」
「ご苦労だな」
「それほどのもんじゃないよ。どうせあっこはほとんど客来ないし、源じいの話し相手になってやるのが主な仕事だからな」
「そうなのか……」
「お前はバイトとしないのか?」
「まぁな、本を買う金が欲しいが……それで本が読む時間がなくなれば本末転倒だ。それに中央図書館に行けば大体の本は揃ってる」
「……本のことばっかだな」
「俺は本の虫だからな」
「自分で言うか……」
「まぁ、ある程度自分のことは理解してるつもりだ」
金次郎は肩をすくめた。
「そんなことより、お前は準備しなくていいのか?」
「はぁ?」
「いや、次の時間美術だぞ。移動教室だろ」
「あ!」
教室の時計を見ると後3分ほどで本鈴が鳴ろうとせん時間だった。教室にはすでに誰もおらず、俺と金次郎が取り残されていた。
「待っててやるからさっさと準備しろ」
「お、おう!」

結局、俺たちはギリギリ本鈴が鳴り終わるまでに美術室に到着することができた。

美術の時間は退屈で、やっぱり屋上で昼寝していた方が有意義な気がした。



第弐話 >>>>


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


少し中と半端になってしまいましたが序章part1となります。

今後、もう少しだけキャラクターが出てきてそのあと本編に入っていく感じになりますね。

前回の学園を制し者に比べてかなり落ち着いた感じにしてみたつもりなのですがどうだったでしょうか?

私的には何となく投げやりが感じになってしまった気がするので後々修正を入れようと思っているのですが。


category: 尾裂狐と俺と陰陽師

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